防錆や金属の皮膜処理について調べていると化成処理という言葉を目にします。めっきと同じような処理のため「何が違うの?」「どんな特徴があるの?」といった疑問が生まれてくるかもしれません。
今回は、化成処理とはどのような処理なのか、種類、目的などについて、詳しく解説していきます。
化成処理は、金属をはじめとする加工物を溶液に浸透させて皮膜を作る表面処理のひとつです。表面に処理剤を用いて化学反応を起こさせることで、元の素材とは違った性質を与えることができます。耐食性に加えて外観の向上も見られるほか、下地として処理をすることで塗装との密着性を上げる目的としても活用されます。
同じような処理方法のめっきと同列で扱われることもありますが、化成処理は化学薬品を使用したり、電気化学を応用したり、科学的方法を用いて素材に皮膜を生成するため、めっきとは別の処理として考えられることも少なくありません。
化成処理にはいくつか種類がありますが、その中でも代表的な4種類をご紹介します。
リン酸塩処理はパーカー処理やパルホス処理とも呼ばれ、鉄をはじめとする金属系の加工物をリン酸塩系の処理液に浸漬させることで表面を化学反応させる化成処理です。使用される処理液は、リン酸亜鉛、リン酸鉄、リン酸マンガン、リン酸カルシウム等の種類があり、それぞれに異なる特徴を持っています。
処理方法によって種類は異なりますが、いずれも表面に凹凸のある皮膜が生成される特徴があります。錆をはじめとする腐食を抑える表面保護効果に加え、塗料との親和性を高めることもできるため、塗装の下地処理としても多く活用されます。
最も多く用いられているリン酸亜鉛処理は、さまざまな素材に対応できますが、処理液によっては鉄鋼製品以外には使用できないものもあるため注意が必要です。
⇒リン酸塩処理とは?種類と処理工程を解説
クロメート処理には黄銅、亜鉛、アルミニウムなどが主に使用されます。加工物を六価クロム、もしくは三価クロムを用いた含む溶液に浸漬させ、表面に酸化皮膜を生成する化成処理です。クロメート処理によって得られる酸化被膜は自己修復性を持っており、他の皮膜に比べて高い耐食性を示します。さらに、塗装の代替としても使える着色クロメートや、塗装の前処理として活用できる塗装下地クロメートなど、幅広い活用法が見込めるとして注目を集めています。
クロメート処理は素材に直接処理を施すだけでなく、亜鉛めっきが施された加工物の後処理として行われることも少なくありません。これは亜鉛が変色しやすく指紋などがつきやすい性質を持っているからです。亜鉛めっきは特に、湿気のある環境では白色斑点などを生じやすい欠点を持っています。合わせてクロメート処理を施すことで、光沢性と耐食性を付加できるため、電気亜鉛めっきでは不可欠な技術となっています。
この他、アルミやマグネシウムの処理に採用される場合は塗装との密着性向上を、無電解ニッケルめっきの後処理に採用する場合は耐食性と変色防止を目的とするなど、素材に応じてさまざまな用途で活用されています。
ジンケート処理は主にアルミニウムやマグネシウムなどの合金に対し、前処理として採用される化成処理です。近年、自動車をはじめとするさまざまな製品に対し、軽量化を目的としてアルミニウムが採用されています。このアルミニウム合金にめっき処理を施す際、前処理としてジンケート処理が不可欠です。
アルミニウム合金の表面に、耐摩耗性や装飾性の向上を目的にめっき処理が行われます。しかし、アルミニウム合金は大気中の酸素によって緻密で強固な酸化被膜を形成する特性があります。この酸化被膜はめっきの密着性を阻害してしまうため、ジンケート処理を2回行うダブルジンケート処理によって密着不良を回避しています。
黒染め処理は、アルカリ水溶液に鉄鋼系の加工品を浸漬させることで、表面に耐食性のある黒色の酸化皮膜を生成させる化成処理です。他の化成処理に比べて耐食性の効果は低めですが、皮膜の厚さが約1~2μmと薄く、コストが低いメリットがあります。
実際には黒く染めている訳ではなく、鉄の表面が酸化して四酸化三鉄の皮膜で覆われることで黒く変色していますが、見栄えが良い上に防錆効果もあるため、黒く染める用途として採用されることも少なくありません。
黒染め処理によって生成される皮膜はめっきや塗装に比べると非常に薄いですが、剥離の心配がなく、経年変化においても寸法精度がほとんど変わりません。また、見た目の美しさや耐熱性の高さ、価格の安さなど、多くのメリットを持ち合わせています。さらに、錆びている製品に対しても、酸洗い処理などによって錆を落とした後で黒染め処理をすることができ、汎用性が高い点も魅力のひとつです。
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