2024-09-18
更新
染谷 ひとみ
Mitsuri Media管理人
精密板金加工工場のインサイドセールスとして加工と寸法の提案をしてきた経験を経て、製造業の知見と楽しさを提供している。 幼少期からモノの構造を理解するのが好き。JAPAN MENSA会員。
黒染め加工は化成処理の一種で、別名「フェロマイト処理」、「SOB処理」、「アルカリ処理」などとも呼ばれています。鋼材の表面に黒錆を設けることで赤錆を防止したり、外観を良くしたりするなどの目的で採用されている加工です。黒染め加工は、化学反応を利用した表面処理のため、めっきや塗装のように剥離することもありません。
参考:【メッキ処理とは?】目的・仕組み・種類・特徴について徹底解説!
参考:メッキ加工方法について!【専門家が語る】メッキされるまでの工程が丸わかり!
※画像は黒染め処理前(左)と黒染め処理後(右)
引用元:株式会社伸和熱処理
黒染め加工とは、鉄鋼材を苛性ソーダを含んだアルカリ溶液に浸して、140~150℃の温度で処理し、表面を黒錆で覆うことを指します。この黒錆は、四酸化三鉄(Fe3O4)であり、安定した不働態酸化皮膜を形成しているため、鉄鋼材をある程度の腐食から保護します。また、黒染め加工は赤錆の防止に限らず、さまざまな効果も期待できます。
詳細な特徴や効果は下記の通りです。
黒染め加工の特徴や効果
黒染め加工は表面が深みのある黒色になり、光沢もでます。高級感のある外観になるため、工業製品に限らず、インテリア向けの製品にも多く採用されています。
黒染め加工を施した鉄鋼材は四酸化三鉄(Fe3O4)の不動態酸化皮膜で覆われた状態になり、錆が発生しにくくなります。めっきや塗装と違い、化学反応を利用しているので、剥離することがありません。しかし、黒染め処理の工程にある防錆油がきれると、腐食の進行が早くなる点には注意が必要です。
皮膜は1~2µm程度と非常に薄いので、寸法精度が求められる製品に適しています。めっきや塗装と違い、表面の性質を変化させた加工なので、寸法の変化を少なく抑えられます。製作工程における加熱の温度もあまり高くないため、被加工材の変形が少ないのも特徴です。
黒染め加工を施した鉄鋼材は耐摩耗性が向上するほか、防錆油の効果により潤滑性の向上も期待できます。
黒染め加工はめっきや塗装に比べて価格が安い傾向にあります。
黒染め加工は、炭素鋼などの鉄系の素材に向いています。ただし、鋳物・熱処理・焼入れ・ワイヤーカットした鉄鋼材に関しては、仕上がりが茶色がかった色合いになる場合があります。
黒染め加工は、材料が変質、または変形するほどまで加熱しないため、材料の強度や性質への変化が少ないメリットがあります。上記に加えて、皮膜も1~2µm程度と薄いので、寸法精度が要求される部品などに適しています。
また、めっきや塗装よりも比較的加工の費用が安い傾向にあるので、製作コストを抑えたい方にもおすすめです。
黒染め加工は、加工業者によって薬品の調合が異なるので若干の色の違いがありますが、黒以外の着色はできません。
また、耐食性を備えてはいるものの、黒染め加工した材料の表面は多孔質な皮膜であるため、防錆油を塗布していないと腐食の進行が早くなってしまいます。
図:黒染め加工の工程
50~60℃の脱脂剤に2~5分ほど浸漬します。油が多く付着したものは、ウエスで軽く拭き上げましょう。長時間浸漬すると色ムラが発生するため、長くても10分程度に留めます。
1分程度、水をオーバーフローさせてすすぎます。錆や汚れがある場合は、脱脂後に酸洗いを行います。
沸騰状態(140℃程度)の黒染液で15~20分煮沸します。鋳物などの超鋼に関しては40~45分ほど煮沸します。
素早くすすぎ水に移し、製品を冷却します。このとき、表面の水分が蒸発して酸素に触れてしまうと、黒錆が赤錆に変化してしまうので、素早くすすぎ水に移さなければなりません。
水をオーバーフローさせながら、キレイな水ですすぎます。黒染剤を含んだ水ですすいでしまうと、早期錆を起こす恐れがあるので注意が必要です。
水置換性もしくは水溶性防錆剤に浸漬させた後、充分に乾燥させます。乾燥時間が充分に取れない場合は、防錆剤の浸漬後に防錆油を含んだ布で軽く拭き上げます。
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