チタンとステンレスの違い|比較と見分け方

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チタンとステンレスは、ともに強度と耐食性に優れる一方で、難削材であるといった共通する特徴がいくつかあります。どちらも用途が幅広く、アクセサリーや食器などの身近なものにもチタンやステンレスが採用されているほどです。

しかしどちらも耐食性に優れているとはいうものの、万能に錆びを防げるわけではありません。環境によってはチタン、もしくはステンレスの方が優れている場合もあります。

そこで本記事では、チタンとステンレスの物理的性質や耐食性の違いなどを比較・解説します。両者の見分け方についても併せて記述しているので、チタンとステンレスの判別にお困りの方もぜひ参考にしてみてください。

参考:【チタンの特徴と用途とデメリット】チタンは他の金属とどう違うのか

参考:【チタン加工】チタンの加工上の特性や加工方法を徹底解説!!

チタンとステンレスの物性比較(硬さ、強度、熱伝導率、比重)

<チタンとステンレスの物理的性質>

材料

溶融点

(℃)

密度

(g/cm3)

電気抵抗

(μΩ⋅m)

20℃

熱伝導率

(W/m⋅K)

20℃

比熱

(KJ/kg⋅K)

体積比熱

(W/cm3⋅K)

線膨張係数

(/K×10-6)

20℃

工業用

純チタン

(CP-Ti)

1,668

4.51

0.55

17

0.519

2.3

8.4

α-βチタン合金

(Ti-6Al-4V)

1,650

4.43

1.71

7.5

0.610

2.7

8.8

βチタン合金

(Ti-15-3-3-3)

1,668

4.76

1.4

8.08

0.500

2.4

8.5

ステンレス

(SUS304)

1,400

~1,420

7.90

0.72

16

0.502

4.0

17.0

引用元:一般社団法人日本チタン協会

<チタンとステンレスの機械的性質>

材料

引張強さ

(規格値)

(MPa)

比強度

(計算値)

0.2%耐力

(MPa)

伸び

(規格値)

(%)

ビッカース硬さ

(代表値)

(HV)

ヤング率

(代表値)

(GPa)

工業用

純チタン

(CP2種)

340~510

75~113

215≦

23≦

160

106.3

α-βチタン合金

(Ti-6Al-4V)

895≦

202≦

825≦

10≦

320

110

βチタン合金

(Ti-15-3-3-3)

745~945

157~199

690~835

12≦

270

78.4

ステンレス

(SUS304)

520≦

66≦

205≦

40≦

180

199.9

引用元:一般社団法人日本チタン協会

チタンには大きく分けて、純チタンとチタン合金の2種類があります。純チタンは純度の高いチタンで、チタン合金よりも安価で加工しやすいのが特徴です。チタン合金は、アルミニウムやニッケルといったさまざまな合金元素を含有することで、強度や耐食性などを向上させています。

チタンはステンレスと比べて密度(比重)が60%程度と小さく軽量、線膨張係数がステンレスの50%程度で熱収縮しにくい、体積比熱もステンレスの50~60%で昇温しやすいなどの特徴があります。

耐力については、純チタンとステンレスでほとんど違いはありません。一方で、ヤング率に関してはステンレスの約半分の値を示します。

どちらも優れた耐食性と強度をもちますが、チタンは金属アレルギーが起こりにくい、軽量であるといった特徴から、腕時計などのアクセサリーやアウトドア向けのクッカーにも採用されています。一方で、ステンレスはチタンより重たいものの、美観性に優れ、価格も安いことから、上記の製品ではよく比較される材料です。

チタンの用途はそのほかにも、自動車・航空機・医療機器などが代表的です。ステンレスは、機械部品・キッチン周り・家電製品などにも多く採用されています。

参考:軽い金属3選!【金属加工でよく使われる】特徴も解説!

参考:チタン合金を詳しく解説【専門家が語る】種類や特徴について!

チタンとステンレスの錆びにくさ

<チタンとステンレスの耐食性比較>

腐食媒

組成(%)

温度(℃)

耐食性

チタン

18-8

ステンレス鋼

塩酸

10

24

×

30

24

×

×

10

80

×

ND

30

80

×

ND

硫酸

10

24

ND

50

24

×

×

10

100

×

ND

50

100

×

ND

硝酸

10

24

50

24

10

100

50

100

王水

HCl・HNO3

3:1

24

×

100

ND

弗化水素

5

30

×

×

燐酸

10(通気)

24

100

×

50(通気)

24

100

×

塩化第二鉄

10

24

×

30

24

×

10

100

ND

30

100

ND

塩化第二銅

10

24

×

30

24

×

10

100

ND

30

100

ND

塩化ナトリウム

10

24

40

24

10

100

◎*

〇*

40

100

◎*

〇*

アンモニア

10

24

30

24

10

80

30

80

苛性ソーダ

10

24

50

24

10

100

50

100

硫化水素

乾燥ガス

24

湿潤ガス

24

塩素

乾燥ガス

24

×

ND

100

ND

湿潤ガス

24

ND

90

ND

蓚酸

10

24

20

52

×

ND

50

24

ND

50

100

ND

×

*は孔食その他の局部腐食を起こす場合があります。

記号の説明 ◎:<0.127、〇:<0.127~0.508、△:0.508~1.27、×:>1.27mm/year

【注意】上記はあくまで参考値であり、個々の値を保証するものではありません。

引用元:一般社団法人日本チタン協会

チタンとステンレスはどちらも不働態皮膜を形成するため、耐食性は良好です。しかし、塩化物イオンのある環境下においては、ステンレスよりもチタンのほうが耐食性に優れています。これは、ステンレスが塩化物イオンによって、不働態皮膜が破壊されてしまうのに対し、チタンは塩化物イオンに対しても不働態皮膜が安定しているためです。

また、チタンは耐食性について万能というわけではなく、塩酸や硫酸などの非酸化性の酸には腐食しやすい傾向にあります。一方で硝酸のような酸化性の酸の場合は、チタン・ステンレスともに不働態皮膜が安定するため、両者ともに錆びを防止できます。

参考:錆びにくい金属について解説【錆びない金属はありません】

チタンとステンレスの見分け方

ステンレスは、基本的にオーステナイト系は磁性を持たず、フェライト系やマルテンサイト系などの他の種類は磁性を持ちます。一方でチタンは、純チタン・チタン合金ともに非磁性の材料です。そのため、オーステナイト系以外のステンレスとチタンを見分ける場合であれば、磁石が付くかどうかで判断ができます。ただし、オーステナイト系ステンレス鋼は、加工を施すと磁性を持つことがあります。よって、ステンレスとチタンの材質を見分けるときは、磁石に付いたものがステンレスのものだと判断してもよいでしょう。

磁石で判別できない場合は、重さで判断してみるのもひとつの方法です。チタンの比重はおよそ4.5であるのに対し、ステンレスは7.9の値となります。同じ体積の物であれば、1.5倍以上も重量に違いがあるため、似たようなサイズのものを比較する場合は判別がしやすいです。

また、外観についてもステンレスのほうが光沢があり、チタンのほうが黒ずんで見えます。ただし、表面処理を施していると見分けは付きにくくなります。

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