染谷 ひとみ
Mitsuri Media管理人
精密板金加工工場のインサイドセールスとして加工と寸法の提案をしてきた経験を経て、製造業の知見と楽しさを提供している。 幼少期からモノの構造を理解するのが好き。JAPAN MENSA会員。
チタンとステンレスは、ともに強度と耐食性に優れる一方で、難削材であるといった共通する特徴がいくつかあります。どちらも用途が幅広く、アクセサリーや食器などの身近なものにもチタンやステンレスが採用されているほどです。
しかしどちらも耐食性に優れているとはいうものの、万能に錆びを防げるわけではありません。環境によってはチタン、もしくはステンレスの方が優れている場合もあります。
そこで本記事では、チタンとステンレスの物理的性質や耐食性の違いなどを比較・解説します。両者の見分け方についても併せて記述しているので、チタンとステンレスの判別にお困りの方もぜひ参考にしてみてください。
参考:【チタンの特徴と用途とデメリット】チタンは他の金属とどう違うのか
参考:【チタン加工】チタンの加工上の特性や加工方法を徹底解説!!
<チタンとステンレスの物理的性質>
引用元:一般社団法人日本チタン協会
チタンには大きく分けて、純チタンとチタン合金の2種類があります。純チタンは純度の高いチタンで、チタン合金よりも安価で加工しやすいのが特徴です。チタン合金は、アルミニウムやニッケルといったさまざまな合金元素を含有することで、強度や耐食性などを向上させています。
チタンはステンレスと比べて密度(比重)が60%程度と小さく軽量、線膨張係数がステンレスの50%程度で熱収縮しにくい、体積比熱もステンレスの50~60%で昇温しやすいなどの特徴があります。
耐力については、純チタンとステンレスでほとんど違いはありません。一方で、ヤング率に関してはステンレスの約半分の値を示します。
どちらも優れた耐食性と強度をもちますが、チタンは金属アレルギーが起こりにくい、軽量であるといった特徴から、腕時計などのアクセサリーやアウトドア向けのクッカーにも採用されています。一方で、ステンレスはチタンより重たいものの、美観性に優れ、価格も安いことから、上記の製品ではよく比較される材料です。
チタンの用途はそのほかにも、自動車・航空機・医療機器などが代表的です。ステンレスは、機械部品・キッチン周り・家電製品などにも多く採用されています。
参考記事:軽い金属3選!【金属加工でよく使われる】特徴も解説!
<チタンとステンレスの耐食性比較>
*は孔食その他の局部腐食を起こす場合があります。
記号の説明 ◎:<0.127、〇:<0.127~0.508、△:0.508~1.27、×:>1.27mm/year
【注意】上記はあくまで参考値であり、個々の値を保証するものではありません。
引用元:一般社団法人日本チタン協会
チタンとステンレスはどちらも不働態皮膜を形成するため、耐食性は良好です。しかし、塩化物イオンのある環境下においては、ステンレスよりもチタンのほうが耐食性に優れています。これは、ステンレスが塩化物イオンによって、不働態皮膜が破壊されてしまうのに対し、チタンは塩化物イオンに対しても不働態皮膜が安定しているためです。
また、チタンは耐食性について万能というわけではなく、塩酸や硫酸などの非酸化性の酸には腐食しやすい傾向にあります。一方で硝酸のような酸化性の酸の場合は、チタン・ステンレスともに不働態皮膜が安定するため、両者ともに錆びを防止できます。
ステンレスは、基本的にオーステナイト系は磁性を持たず、フェライト系やマルテンサイト系などの他の種類は磁性を持ちます。一方でチタンは、純チタン・チタン合金ともに非磁性の材料です。そのため、オーステナイト系以外のステンレスとチタンを見分ける場合であれば、磁石が付くかどうかで判断ができます。ただし、オーステナイト系ステンレス鋼は、加工を施すと磁性を持つことがあります。よって、ステンレスとチタンの材質を見分けるときは、磁石に付いたものがステンレスのものだと判断してもよいでしょう。
磁石で判別できない場合は、重さで判断してみるのもひとつの方法です。チタンの比重はおよそ4.5であるのに対し、ステンレスは7.9の値となります。同じ体積の物であれば、1.5倍以上も重量に違いがあるため、似たようなサイズのものを比較する場合は判別がしやすいです。
また、外観についてもステンレスのほうが光沢があり、チタンのほうが黒ずんで見えます。ただし、表面処理を施していると見分けは付きにくくなります。
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