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IE手法【時間研究】タイムスタディを徹底解説

現場改善 | 2021年06月09日

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IE(インダストリアルエンジニアリング)手法は、人・モノ・設備の動きを、工程・作業・動作まで細かく分析し、生産管理を最適化するために活用されています。

そのなかでも代表的な手法である時間研究は、定量的に時間を測定して問題点を分析します。

参考:IE活動・IE手法まとめ!概要や代表的手法

時間研究(タイムスタディ)とは?意味と目的

時間研究(タイムスタディ)の意味

時間研究とは、「タイムスタディ」や「時間分析」とも呼ばれている分析方法で、要素作業単位のワークユニット(仕事の単位)の時間を実際に測定したり、データにあてはめて算出したりして分析を行います。

  • <ワークユニット(工程・作業・動作)の分類表>

工程

単位作業A

要素作業a

動作1

動作2

要素作業b

動作3

動作4

単位作業B

要素作業c

動作5

動作6

要素作業d

動作7

動作8

要素作業は、【手をのばす・モノをつかむ】といった動作から構成されるものです。例を挙げると【材料をとる】などの行動が要素作業になります。

また、要素作業が複数組み合わさると、【材料運搬・穴あけ】などといった単位作業のワークユニットになります。

単位作業が複数組み合わさると、【組み立て・ギア加工】などの作業系列の完成である工程のワークユニットになります。

また、時間研究は代表的な手法として【ストップウォッチ法・PTS法】の2種類があります。これらの詳細について見てみましょう。

ストップウォッチ法とは

ストップウォッチ法とは、実際の現場にてストップウォッチを使って要素作業を測定する手法です。

測定した時間は、作業者の技量を踏まえて補正する「レイティング」などを行うことで、標準時間が求められます。

ストップウォッチ法は、現場の雰囲気や状況を肌で感じながら調査できるほか、その場で計測を行うので、素早く分析できるメリットがあります。一方、細かい動きが追いにくい、記録のタイミングをはかるのが難しいといったデメリットがあります。

ストップウォッチ法は、さらに細かく分けると【連続観測法・反復観測法】の2種類に分けられます。

  • ●連続観測法

連続観測法は、作業開始と同時にストップウォッチを作動させ、途中で止めることなく測定を行う手法です。要素作業が完了するごとに時間を確認して記録します。

ストップウォッチ法を活用する際は、一般的に連続観測法が採用されています。

  • ●反復観測法

反復観測法は、要素作業の開始と同時にストップウォッチを作動させ、要素作業が終了するのと同時にストップウォッチを停止して記録する手法です。

また、現場ではなく、作業内容を動画撮影したものから時間を測定し、分析を行う手法の「VTR法」もあります。

VTR法は、自分のペースで作業を観察・測定できるので、分析しやすいメリットがあります。また、動画を複数人でチェックして問題点を議論できるのもポイントです。しかしVTR法は、動画撮影やデータ管理する手間がかかる、現場の空気感が伝わりにくいといったデメリットがあります。

PTS法とは

PTS法とは、要素作業をさらに細かく分けた、動作単位の時間を組み合わせて分析を行う手法です。

PTS法は標準時間を算出する際に、レイティングをする必要がなく、誰が分析しても安定した数値を得られるメリットがあります。また、動作の性質と条件に応じて、決められた時間値を当てはめる手法のため、客観的かつ公平に分析が行えます。

一方でPTS法のデメリットは、分析に時間を要するので長時間を要する作業には不向きです。そのほかにも、機械や装置によりコントロールされている作業に対しては利用できません。

PTS法の代表的な手法には【WF法・MTM法】の2種類があります。

  • ●WF(ワーク・ファクター)法

WF(ワーク・ファクター)法は、動作する身体部位などの4つの要因・変数に対して、数値をあてはめて標準時間を得る手法です。

動作時間を決める要素は、以下の4つが定められています。

・使用する身体の部位

・動作距離

・取り扱う重量または抵抗

・動作の困難性(人為的調節)

WF法の例としては、「工具を取るために腕を○○インチ動かす」という動作に対して、WFの動作時間表から数値をあてはめて標準時間を算出します。

  • ●MTM(Methods Time Measurement)法

MTM(Methods Time Measurement)法は、WF法と近い考え方ですが、動作を部位別ではなく、10の基本動作で分類しています。

・手を伸ばす(R:Reach)

・運ぶ(M:Move)

・クランク運動(C:Crank Motion)

・回す(T:Turn)

・押す(AP:Apply Pressure)

・つかむ(G:Grasp)

・定置する(P:Position)

・ひきはなす(D:Disengage)

・放す(RL:Release)

これらの動作の種類と距離により、動作時間を算出します。

時間研究(タイムスタディ)の目的

時間研究の目的については下記の通りです。

・非生産的要素の顕在化:要素作業にかかる時間を測定・分析することで、今まで見えていなかった非生産的要素を顕在化する。

・改善すべき対象の分析:作業の標準時間を設定し、実際の所要時間を測定することで、改善すべき対象を判別する。

・標準時間の設定:標準時間が決まることで、工程が正しく実行されているかを判別できる。

・方法研究との組み合わせによる分析:非生産的要素を定量的に把握したものを、方法研究を使って削減する。

ここでの「非生産的要素」とは、作業における3つの種類のうち、「付随作業」と「ムダ」を表すものです。

作業は3つの種類に分類される

IE手法を取り入れるにあたり、作業は【価値作業・付随作業・ムダ】の3種類に分けて考える必要があります。

作業の種類

詳細

価値作業

付加価値(利益)を生む作業

・材料の加工

・部品の組み立て

付随作業

直接の付加価値を生まないが

必要不可欠な作業

・梱包を解く

・部品を取り出す

ムダ

付加価値を生まない

必要のないもの

・手待ち時間

・繰り返し材料や部品を取りに行く

価値作業は、利益に直結する作業のため、なるべく増やしたい作業です。

付随作業は、付加価値を生むために必要な作業であるものの、可能であれば削減したい作業です。

ムダに関しては、付加価値を生まないもののため、なるべく早めに削減すべき対象です。

時間研究では、分析対象となる要素作業が、これらの3種類のうちどれにあたるのかを判別する必要があります。付随作業とムダに関しては、IEの代表的な手法である「方法研究」を活用して削減していきます。

これらの【価値作業・付随作業・ムダ】の3種類の時間がどれくらいの割合になっているかの調査は、作業測定の代表的な手法である「稼働分析」を用います。

参考:IE手法【動作分析・作業分析編】製造業の現場改善

参考:IE手法【工程分析編】製造業の現場改善

参考:IE手法【稼働分析】稼働率・労働時間削減へ

時間研究の進め方・実施方法

ここでは、ストップウォッチ法を用いた時間研究の進め方を解説します。

ストップウォッチ法は、現場にてストップウォッチを使い、時間を計測をします。作業を動画撮影して計測するVTR法も、基本的な流れは同じです。

1.対象の作業を要素作業ごとに分ける

時間研究では、はじめに分析する対象の作業を要素作業ごとに分割します。分割した要素作業は記録用紙にリスト化して、それぞれの時間を計測できるように準備しましょう。

このとき、分割する単位を動作まで小さくしてしまうと、測定が難しくなるので注意が必要です。

2.各要素作業の時間を実際に測定・記録する

あらかじめ用意した記録用紙に、作業測定した時間を記録していきます。規則的な繰り返し作業の場合は複数回の観測を行い、平均値を算出します。

3.測定結果のまとめ

最後に測定結果をまとめます。

複数回測定したデータの平均値を出す場合、明らかに異常なデータは除外して計算しましょう。のちに手順や時間を標準化する際に異常なデータがあると、適切な設定ができなくなります。

正確なデータが取れたら、作業手順や作業時間の標準化を行うためのデータとして活用できます。

作業手順については、熟練した作業者のムダのない手順をベースに考え、ムダやムラがある点は改善を行いましょう。

作業時間の標準化については、【時間研究の標準時間とは】の項目で解説します。

時間研究の実施にあたって発生する問題点

  • ●リスト化された作業手順と異なる作業を行う

時間研究に取り掛かったものの、実際に現場に行って測定してみると、リスト化してある要素作業と実際の作業とで内容が異なる場合があります。

これは作業者が、部品や機器の調子に不具合があった場合などに対して、対応しようとして起こり得る問題です。また、作業者の違いによっても手順が異なる場合もあります。

  • ●雑な要素作業の区分により、改善が検討できない

要素作業の分割を行った際、あまりにも大雑把な分割をしてしまうと、具体的な改善ポイントが明確にならないケースがあります。

例えば、「A.ボルトをセットする」「B.ナットを締める」の2つの動作を測定した際に、どちらも同じ要素として測定してしまい、AとBとでどちらを改善すべきかが分からない場合があります。

  • ●計測そのものが難しい、または時間がかかる

計測方法に慣れていないと細かい動きを追い切れず、どのタイミングで記録すればよいのか混乱してしまうものです。

また、時間研究を進めたとしても、手法によっては計測に時間がかかりすぎて、なかなか分析までたどり着けないケースもあります。

問題点の対策ポイント

  • ●作業手順について話し合う機会を設ける

作業者間で話し合いの機会を設けて、各々の手順を共有し、作業者間による違いを無くしましょう。また、話し合いを行うことで最適な手順のアイデアが浮かぶ場合もあり、作業手順がより確立されたものになります。

  • ●どの手法が適しているかを検討する

ストップウォッチ法・VTR法のどちらが適しているかを検討してから、計測を行いましょう。

ストップウォッチ法とVTR法では、それぞれ異なるメリットとデメリットがあります。これらの手法の特徴を理解したうえで、各々の現場に合った計測方法を試してみてください。

時間研究の標準時間とは

標準時間とは、標準的な熟練度をもつ作業者が、標準の環境下かつ作業手順を踏んだときの時間と、水分補給や用足しなどの余裕時間を加えた時間のことを指します。

余裕時間とは、朝礼・休憩・水分補給・機械調整・用足しなどで発生する遅延時間のことです。

標準時間は、標準時間内に作業を行えるかの習熟度の確認として使えるほか、生産計画・進捗管理の基準などにも活用できます。

標準時間の要件

標準時間は以下の要件が求められます。

・公平であること:工場・部門ごとの差がないか

・適正であること:理論に基づいた時間設定ができているか

標準時間は現場の作業時間の基準となるもののため、関係する作業者や管理者が納得できる、公平な設定である必要があります。ムリやムダが多い時間設定だと、標準時間とはなりません。また、標準時間が理論に基づいた設定であるかも重要です。

標準時間の設定

標準時間の設定は、ストップウォッチ法・PTS法などの手法を用いて算出します。

1.はじめに時間研究にて得た時間データの平均、または代表値を決定します。

2.測定時間の代表値を決定したら、次に標準時間として使用するための正味時間を計算します。

正味時間の計算式は下記の通りです。

正味時間の計算式

正味時間=測定時間×レイティング係数

時間研究で得た観測時間値は、そのまま標準時間にはならないので補正を行う必要があります。一般的に正味時間の計算は「レイティング」と呼ばれています。

観測時間値が、なぜ標準時間に使えないかの理由については、測定した作業者の技量などにより、作業時間に違いが出てくるためです。

正味時間を計算するには、測定したときの作業者とほかの作業者を比較して【熟練・努力・作業条件・安定度】の4つの観点から「レイティング係数」を何段階かに分けて決め、観測時間値に乗算します。

3.次に正味時間から、さらに補正をかけて標準時間を算出します。

標準時間の計算式

標準時間=正味時間×(1+余裕率)

標準時間は正味時間だけでなく、水分補給や用足しなどの時間も考慮して算出する必要があります。

余裕率とは、作業に必要な余裕時間の割合のことです。余裕時間は、休憩・水分補給・用足し・機械調整などにかかる時間です。

余裕時間は【作業余裕・職場余裕・個人余裕・疲労余裕】の4種類に分類されています。

・作業余裕:工具の取り替え・掃除・機械調整など(余裕率3~5%)

・職場余裕:朝礼・連絡・整頓など(余裕率3~5%)

・個人余裕:水分補給・用足しなど(余裕率2~5%)

・疲労余裕:雑談・休憩など(余裕率:軽作業10%・中作業20%・重作業30%)

時間研究がうまくいかないとき

時間研究がうまくいかないときは、事前準備で対策をしてから実行してみてください。また、うまく計測や記録をするには回数をこなして慣れることも大切です。

時間研究を行ったあとは、情報整理もその日のうちに行いましょう。計測後に情報整理すると、現場のイメージが残っている状態なので、よりよい改善策のアイデアが浮かびやすくなります。

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この記事を書いた人
Mitsuri編集部
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Mitsuriは、お客様に寄り添い、製造プロセスに関わる課題をトータルに解決する「お客様の最適な生産活動を達成するコーディネーター」です。記事内容に関するお問い合わせはこちらへ。

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