鉄より錆びにくく、耐食性が高いことから多くの現場で使用されているステンレス。ステンレスの加工を行う際には、その素材がどれだけの温度に耐えられるかどうかを知ることが大切です。
ステンレスにも種類があり、それぞれ耐熱温度が異なります。ステンレスの種類に応じて向き不向きがあるため、事前に耐熱温度を知っておくと失敗のない素材選びをすることにつながります。
今回は、各種ステンレスの耐熱温度と、それに関連したステンレスの特徴についてご紹介します。
ステンレスとは、英語表記の「stainless steel」をそのまま日本語として転用したものです。直訳すると錆びない鉄鋼となりますが、実際には錆びにくい鉄鋼という理解が正しくなります。
SUHと略される耐熱鋼と違い、ステンレス(SUS)はあくまで常温の環境下における耐食性を高めることを目的として作られています。そのため、ステンレスは特別な耐熱性を持ち合わせているわけではありません。
とはいえステンレスの一般的な耐熱温度は700℃~800℃。とりわけ900℃以上の環境で使用されることはありません。最低でも500℃前後は保障されていますので、一般的な利用範囲内でしたら安心です。
ここでは各種ステンレスの耐熱温度をご紹介します。
金属の耐熱性は様々な面から考察されるものですが、この記事における「耐熱温度」とは、高温下(700℃~800℃)における金属の引っ張り強さとします。
オーステナイト系とは、比較的加工がしやすく、耐食性にも優れたバランスの取れたステンレスです。通常の鉄鋼に加え、耐食性を持たせるクロムと金属組成を安定させるためのニッケルを含んでいます。
幅広い耐食性を持っていることから、雨風にさらされる製品の素材として利用されることが多いです。具体的には、バネ、ベルトコンベア、プラント、工業炉などです。
耐熱温度ですが、600℃あたりまではフェライト系とマルテンサイト系の中間程度の強度ですが、600℃以上では他のステンレスと比較して最も耐久性があります。
フェライト系とは、ニッケルを含んでいないことが特徴のステンレスです。ニッケルが含まれていないことから金属の表面を保護する膜が形成されず、耐食性や強度は他のステンレスに劣るものの、その分廉価で制作することができます。
それでもステンレスとしての最低限の耐食性は備えているため、キッチン用品をはじめとして幅広い用途で利用されています。具体的には、家電部品、ボルト・ナット、食品機器、自転車リムなどです。
強い磁性を持っていることが特徴で、磁石にくっつくかどうかで素材を判別することがあります。
こちらの耐熱性についてですが、300℃~400℃付近での耐熱性が比較的高めなものの、500℃以上で急激な低下が起こります。
マルテンサイト系とは、後から再度焼入れをすることで強度を増すことができる特徴を持つ種類です。ステンレスの中では炭素の含有量が多く、クロムが少なめの構成です。
そのため他のステンレスに比べ強度を意識した組成となっており、耐食性よりも強度を重視したい製品で多く利用されます。具体的には、刃物、バルブ、ブレーキ、ベアリング、タービンブレードなどです。
耐熱温度については、500℃までは他のステンレスに比べ高強度ですが、それ以上の温度になると耐熱性は急激に低下します。
析出硬化系とは、焼戻しの処理を施すことでより硬度を増したステンレスの種類です。通常のステンレスで用いる炭化物の代わりに、金属間化合物を使用していることが特徴で、他のステンレスに比べ製造に必要な工程が多くなるため価格が高くなってしまいます。
ただし、その分性能が高く、高級な製品の素材として利用されることが多いです。具体的には、シャフト、タービン、スプリング、計器部品などに利用されます。
常温帯(主に550℃以下)を想定して作られた素材のため、他のステンレスと比べ耐熱温度は低めになっています。具体的には、500℃までは高い強度を示すものの、それ以上になると急激に低下します。
Mitsuriでは、日本全国に250社以上の協力企業がございます。そのため、ご要望に合わせて適切な工場をご紹介することができます。ステンレスの耐熱温度でお困りの際は、ぜひMitsuriにご相談ください。
ここでは、改めてステンレスがどのような金属かを説明すると共に、耐熱性以外のステンレスの特徴についてご紹介します。
日本工業規格(JIS)では、鉄に10.5%以上のクロムを添加しており、かつ炭素の含有量が1.2%以下の鉄鋼をステンレス鋼と定義しています。クロムを添加する目的は、錆に強くすることです。
クロムを添加することで不動態皮膜という金属を保護する薄い膜が表面上に現れます。この膜があることで、金属を錆から守ってくれます。ただし、錆に強いといっても特定の状況下では膜がはがれることがありますので、完全に錆びないわけではありません。
不動態皮膜は傷ついても、クロムと周囲の酸素が結合して、ある程度は修復されます。完全ではないとはいえ、錆に対する強さと再生力がステンレスの一番の強みです。
また、ステンレスは他の金属に比べ熱伝導率が低いという特徴があります。ステンレス協会のホームページによると、同じ条件下で熱伝導率を比較した際に、銀は4.12 (W/m・℃)×10-2、銅は3.71 (W/m・℃)×10-2、アルミニウムは1.95 (W/m・℃)×10-2、ステンレスは0.26~0.16 (W/m・℃)×10-2の数値を出したとのことです。
この熱伝導率の低さと耐食性が組み合わさることにより、ステンレスの使用用途に幅が生まれます。
熱伝導率の比較
ステンレス…0.26~0.16 (W/m・℃)×10-2
銀…4.12 (W/m・℃)×10-2
銅…3.71 (W/m・℃)×10-2
アルミニウム…1.95 (W/m・℃)×10-2
たとえば、フライパンの焼き面を鉄、取っ手の部分をステンレスにすることにより、熱が焼き面に熱が伝わりやすくしつつも、取っ手まで熱が伝わりにくいように工夫することができるのです。
それだけではありません。ステンレスは、加工がしやすく、安く生産できるため、多くの製品に使用しやすいメリットがあります。具体的には、土木工事で使用される基礎組み、包丁や鍋などのキッチン用品、冷蔵庫や洗濯機などの家電類、バネ等の工業用品などがあげられます。
リサイクルしやすいこともステンレスのメリットです。ステンレスをリサイクルする際にはスクラップとして回収されるのですが、そのスクラップは錆びにくく、種類の判断が簡単で、スクラップ素材としての価値が高く、リサイクルの手順がシンプルです。
そのため、再利用がしやすいという点を考慮するとステンレスは比較的環境にやさしい素材だと言えます。ステンレスは、業者による買取も行っています。
ボルトやナット、ゲームセンターのメダル、浴槽やかご、流し台など、ステンレスでできている製品であれば業者に引き取ってもらうこともおすすめです。
他にも、表面仕上げの方法が豊富なこともステンレスの大きな特徴です。ステンレスは多くの表面仕上げの方法があり、用途や顧客の希望に応じて柔軟に表面仕上げをすることができます。具体的には、光沢を出すか出さないか、仕上がりの目が粗くするのか、細かくするのか、反射率を高くするのか、低くするのかといった調節が可能です。
参考:【ステンレス加工】ステンレスの加工方法や加工実績につい徹底解説!!
今回は、耐熱温度を中心としたステンレスの特徴についてご紹介しました。ステンレスは耐熱性に優れているだけでなく、耐食性、リサイクルのしやすさなど多くの利点を持っています。
ただしそれぞれの製品に応じて向いている素材は異なるため、ステンレス製の加工製品を利用する場合には用途に合わせて素材を使い分けることが大切です。
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ステンレスでお困りの際は、ぜひMitsuriにご相談ください。
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