【製造業のサプライチェーンマネージメントとは?】SCMの仕組み、メリット・デメリット、ERPとの違い

サプライチェーンとは、製品が原料の段階から完成品となって消費者に渡るまでの連鎖的に繋がる供給プロセスの流れのことです。サプライチェーンマネージメントは、このサプライチェーンに伴う原料や製品、金、情報などの流れを企業間の壁を超えて統合的に管理することで、サプライチェーンを効率化する手法です。

サプライチェーンマネージメントは、特に大企業にて多く導入されており、生産・流通の速度向上やコスト削減などに活用されてきました。しかし、コロナ禍における世界各地の工場の停止によって、その大企業のサプライチェーンが寸断される事態が起きており、サプライチェーンを強靭化するためにサプライチェーンマネージメントの見直しが始まっています。

この記事では、現在注目を集めるサプライチェーンマネージメントについて解説するとともに、そのメリット・デメリットやERP(企業資源計画)との違いについてもご紹介していきます。

サプライチェーンとは?

サプライチェーンとは、製品の原材料・部品の「調達」から、「生産」、「流通」、「販売」、「消費」までの全体の流れのことです。その全体の流れの中には様々なリソースの流れが存在しますが、特に重要なリソースの流れは、生産側から消費側への「物」の流れと消費側から生産側への「金・情報」の流れです(上図参照)。

そして、各プロセス間の物・金・情報の流れは、以下のような企業の間や企業と消費者の間の受発注や入出荷といった取引から生み出されます。

●サプライヤー…原材料を輸入して供給する商社や鉄鋼や樹脂などを生産して供給する材料の製造業者・卸売業者のことです。完成品メーカーにとっては、部品を供給する部品メーカーもサプライヤーに該当します。

●メーカー…サプライヤーから原材料・部品を調達して製品を製造する業者のことです。製品は、在庫として保管・管理され、出荷されて、物流業者によって卸売業者や小売業者へ配送されます。

●物流業者…メーカーによって生産された製品を卸売業者や小売業者へ配送する業者のことです。製品の保管や包装なども担うことがあります。

●卸売業者…メーカーから製品を仕入れ、小売業者に卸す業者のことです。製品の保管や配送、本来小売業者が行う販売管理なども担うことがあります。

●小売業者…メーカーや卸売業者から製品を仕入れ、消費者に販売する業者のことです。販売情報や顧客情報などを元にした販売管理も行います。

小売業者で収集された情報は、仕入れ量の増減という形で卸売業者やメーカーに流れていきます。その情報を元に、メーカーは、原材料・部品を調達して生産を行うとともに、在庫管理を行います。サプライヤーも同じように、メーカーからの受注を元に、原材料の輸入や部品の生産、在庫管理などを行います。

参考:製造業の生産管理を徹底解説

サプライチェーンマネージメントとは?SCMの仕組み

サプライチェーンマネージメント(Supply Chain Management: SCM)とは、利益の最大化と売上高の増大を目的に、複数の企業が関わり合うサプライチェーンを統合的に管理して、最適化する経営管理手法のことです。調達から、生産、流通、販売までのサプライチェーンに関係する企業全体で情報を共有し、受発注や入出荷などの業務、生産や在庫などの管理に活用して、在庫の最適化や受発注業務の迅速化、キャッシュフローの向上、リードタイムの短縮、コスト削減などを実現します。

具体的には、以下の手順でSCMを導入します。

1. SCMの適用範囲を決定

2. 参加企業の選定

3. SCMのリーダー企業を選出

4. SCMのシステム構築

5. 情報共有とリスク共有

しかし、SCMを実行するとしても、現実問題として他企業までSCMの範囲に含めることは難しいでしょう。そこで、まずは、自社内とその取引先など、狭い範囲でのSCMの適用を考えます。

メーカーであれば、まず自社内の調達・生産・出荷に関する情報を収集して分析し、需要予測を作成して、原材料・部品、仕掛品および完成品といった全ての在庫の最適化を図ります。このとき、需要予測の精度向上のため、可能な限り取引先やエンドユーザーの情報を収集します。さらに、取引先のSCMの取組状況についても調査し、自社で展開するSCMと連結可能かどうか、連結するかどうかも検討します。

また、SCMは、業務間や部門間、企業間の情報共有が重要となるため、情報通信技術(ICT)と相性が良く、ICTを上手く活用することで高い効果を得ることが可能です。例えば、構築したSCMシステムにて、在庫量の履歴を保有し、その増減などを分析できるようにしておけば、需要予測の精度向上に役立ちます。

さらに、モノのインターネット(IoT)を利用すれば、リアルタイムなSCMの運用が可能です。例えば、メーカーにて、RFIDタグとセンシングデバイスを活用すれば、在庫を非接触かつ自動的に管理できるようになります。それにより、在庫状況の見える化や入出荷検品の効率化、作業負担の軽減などの実現が可能です。

参考:国内製造業におけるDX導入とは?4つの課題と成功事例も紹介

参考:製造業の生産性を見える化で改善するための重要視点

サプライチェーンマネージメント(SCM)のメリットと効果

SCMの最終的な目的は利益の最大化と売上高の増大ですが、その手段として実現するのが在庫管理の最適化とリードタイムの削減です。ここでは、在庫管理の最適化とリードタイムの削減について説明します。

在庫管理の最適化

SCMの実行によって在庫管理を最適化することで、在庫不足による機会損失や過剰在庫による収益悪化を防ぐことが可能です。

そもそも、在庫の最適化とは、原材料・部品、仕掛品および完成品などの在庫量を必要最小限にするということです。しかし、SCMでは、在庫を最適化するだけではなく、新製品の立ち上げや市場の変化などがあっても、常に在庫を最適量に維持できる在庫管理システムの構築を目指します。

必要な物を、必要な時に、必要な量だけ供給することで在庫を削減する「ジャストインタイム生産システム」は、SCMによる在庫管理手法の一つの到達点と言えるでしょう。

在庫管理の重要性は、在庫不足の場合や過剰在庫の場合を考えると分かります。在庫不足の場合は、欠品が生じますが、それは売上高の減少に繋がります。一方、過剰在庫の場合は、在庫の保管・管理費用の増大を招くとともに、在庫を廃棄せざるを得ない状況に陥ることもあります。それは利益が減少することを意味し、さらに過剰在庫が恒常化すると資金繰り(キャッシュフロー)が悪化します。

参考:ジャストインタイム3原則とは?デメリットやかんばん方式との違いを解説

リードタイムの削減

SCMの導入は、リードタイムの短縮に繋がります。なお、リードタイムとは、製造業では、受注から、生産、出荷までの所要時間のことです。

SCMでは、原材料・部品、仕掛品および完成品といった在庫の最適化を図ります。それは、必要な時に必要な量の原材料・部品を用意することであるため、リードタイムの大部分を占める待ち時間の削減に繋がります。

また、SCMにおいて、在庫の最適化をさらに進めるためには、リードタイムの短縮が必要です。それは、リードタイムが短いほど、受注から出荷までの時間が短くなるため、仕掛品や完成品の在庫削減に繋がるからです。つまり、在庫の最適化が進むほど、リードタイムは短縮し、リードタイムが短縮するほど、在庫の最適化も進むことを意味します。

そして、リードタイムの短縮は、工数削減に直結するため、利益が増加します。加えて、短納期生産が可能になるという効果もあるため、競争力の向上も期待できます。

参考:製造業の生産リードタイム基礎知識

コスト削減・売り上げの最大化

SCMにとって、在庫管理の最適化とリードタイムの削減は、SCMの目的を実現するための重要な手段です。上述したように、これらを実現することで、コスト削減が進んで利益が増加し、売り上げの増大も見込めます。手元資金も増加するため、経営の自由度が増すとともに、経営が安定します。

サプライチェーンマネージメント(SCM)のデメリットと課題

一方、SCMの導入には、多大な投資と労力、人員が必要です。

SCMを自社内という狭い範囲に適用するだけでも、受発注・入出荷・在庫などの情報収集や情報を一元化するシステムの構築、システム運用のための人員確保などが必要となります。

SCMの導入にあたっては、情報を分析して現状の在庫量を見える化し、需要予測を作成して、目標の在庫量を設定する必要がありますが、正確な需要予測を立てることは非常に困難です。また、理想的な在庫管理を実現するためには、在庫の発生要因を分析して、目標の在庫量で事業運営ができるように対策を立てる必要があります。

実現可能である場合でも、費用対効果を考慮する必要があり、費用対効果が見合わなければ、導入費用の削減や導入の保留、導入の中止も検討しなくてはなりません。

SCMの適用範囲を社外にまで拡大する場合には、さらに多くの課題があります。まず、企業間の円滑な情報の遣り取りには、参加企業全てにサプライチェーンのシステム構築が必要です。しかし、その投資を取引先に求めることになるため、グループ企業などの結び付きが強い企業同士でないと一貫したSCMの導入は難しいでしょう。

サプライチェーンマネージメント(SCM)とERPの違い

SCMと混同しやすい経営管理手法に企業資源計画(Enterprise Resources Planning: ERP)があります。

ERPとは、企業の事業運営にて基本的な資材・設備・資金・人材・情報といった経営資源を統合的に管理して、最適に分配する経営管理手法のことです。経営資源を一元管理することで、どの部門にどの程度の資源が分配されているかを見える化し、経営戦略立案の参考にするとともに、策定された経営戦略に従って資源を分配します。

このERPの実現に用いられるのが、いわゆる「統合基幹業務システム」と呼ばれるソフトウェアパッケージです。統合基幹業務システムは、在庫管理システムや会計システム、生産管理システムなどのように業務毎に独立していたシステムとは異なり、全業務のデータを統合データベースで一元的に管理することが可能です(上図参照)。

以上がERPですが、具体的には、SCMと以下の点が違います。

・SCMはサプライチェーンに関連する物・金・情報が主な管理対象であるのに対し、ERPは経営資源の全てを管理対象とします。

・SCMはサプライチェーンを最適化の対象としますが、ERPは間接部門の業務なども含む全ての業務を最適化の対象とします。

・SCMの適用範囲はサプライチェーンに関連する企業というように企業内に限定されていませんが、ERPの適用範囲は自社内に限ります。

メルマガ購読

Intuit Mailchimp

カテゴリ一覧