染谷 ひとみ
Mitsuri Media管理人
精密板金加工工場のインサイドセールスとして加工と寸法の提案をしてきた経験を経て、製造業の知見と楽しさを提供している。 幼少期からモノの構造を理解するのが好き。JAPAN MENSA会員。
「鉄溶接の特徴って何?」
「鉄を溶接したい、でもどんな方法があるの?」
「鉄溶接の事をもっと知りたい」
この記事はこのような疑問をお持ちの方に向けた記事となっています。
溶接とは、その名の通り鉄、またはその他の金属を溶かして接合させる事です。
参考記事
溶接に関して詳しく解説している記事はこちらです。⇒第1回 溶接加工とは?代表的な種類とメリット・デメリットを解説
鉄製品の溶接を外注化している、もしくは外注化を検討している企業様にもご参考にしていただけたらと思います。
溶接時の鉄は、1,538度~2,800度(鉄の融点)まで温度が上昇します。融点まで達した鉄は溶け、2つの隣接する母材が混ざり冷却されて一体化します。
金属は高温になると膨張し、冷却されると縮小する特性があります。溶接は局所的にこの膨張収縮が起こるため加熱された個所とされない個所で変形量が異なってしまい、結果的に歪み(ひずみ)という現象が発生します。
鉄の特徴としては、アルミ、ステンレスに比べて溶接時の歪み(ひずみ)が少なく、溶接しやすい材質です。
少ないと言っても鉄の溶接時は歪み(ひずみ)の発生は避けられないので、どのように歪み(ひずみ)を抑えて溶接するか、修正するかが溶接時のポイントとなってきます。
また、前述の通り歪み(ひずみ)は鉄だけではなく、アルミ、ステンレスでも同じように発生します。
参考記事
歪み(ひずみ)を詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。⇒溶接歪みの原因について解説!修正方やそもそも歪みを出さない溶接法についてもご紹介!
鉄を溶接する方法はいくつかありますが、溶接が必要な鉄製品の用途や、溶接する箇所によって変わってきます。
溶接は大きく分けて3つに分類されます。
今回は融接の中でも代表的な被覆アーク溶接、半自動溶接、TIG溶接にフォーカスして解説していきます。
アーク溶接棒に付着しているフラックス(被覆材)は、大気や酸素から溶融地を守る働きがあります。仕組みとして、被覆アーク溶接時にフラックス(被覆材)が高温のアークによって分解、ガスとなりアークと溶融地を大気、酸素から保護します。したがって被覆アーク溶接は風に強く、屋外作業に向いている溶接方法です。ガスを使用せず、溶接機自体も比較的安価で複数台同時に稼働でき、作業効率も良い事から特に作業時間に制約がある(工期)屋外の建築現場では被覆アーク溶接を用いる事が多いです。
また、被覆アーク溶接の特徴としてスラグが出ます。
参考記事溶接時のスラグについて、詳しく知りたい方は、こちらの記事をどうぞ。⇒溶接時のスラグはなぜでるのかを解説!スラグ巻き込みの原因と対処法についてもご紹介!
半自動溶接は、フラックスワイヤーを使用しない場合、シールドガスでアーク周辺を保護します。通常、シールドガスの流量は20~30l/minで調整して溶接を行いますが、溶接部周辺の風速が1.2m/sec程度でも気孔が発生する恐れがあるので風に弱く、屋内作業に向いている溶接方法です。
風の抵抗を受ける屋外での作業では、シールドガスを使用しないセルフシールド溶接があります。セルフシールド溶接の場合、シールドガスではなくフラックス(被覆材)入りのワイヤーを使用します。
TIG溶接は、半自動溶接同様シールドガスを使用しているため、風に弱く屋内での作業に向いている溶接方法です。被覆アーク溶接や半自動溶接に比べて、音をあまり出さずに溶接が出来ること、見た目がキレイということもあり、小型製品の目に見える部分や、パイプの繋ぎ目などで使用されることが多いです。
TIG溶接は、母材とタングステンの距離感やプールが出来てから溶接棒を入れるタイミング、さらには母材が高温になる事を計算した電流の調整などといった3つの中で最も技術習得に時間が必要で、作業者によってはピンホールが出来てしまったり、見た目も違ってきます。
参考記事今回紹介した3つ以外の溶接方法を知りたいという方はこちらの記事を参考にしてください。⇒溶接方法はこの記事だけでOK!3分でわかる金属加工で代表的溶接方法!
鉄の溶接は、溶接する箇所、用途によって使い分ける必要がある事をおわかりいたただけたと思います。
溶接を外注化するにあたって、「この鉄製品はこういう用途に使用したい」「見た目はこだわらないがガッチリ溶接して欲しい」といった案を提示することで、作業者にどう溶接すればいいのかが伝わり、作業効率もアップします。
鉄溶接を知る事でスムーズに取引が出来、納期短縮にも繋がります。
では次に、鉄を溶接したらどのような仕上がりになるのか、鉄溶接の事例と共に紹介していきます。
引用元:Bldy.マガジン
火花が飛び散る範囲が広いので厚手の革手袋、作業着が必須です。高所での作業も可能ですがそのためには安定した足場が必要になります。
引用元:株式会社KRS
厚物(鉄)を被覆アーク溶接で溶接した例です。(画像はスラグを取り除いたもの)
引用元:株式会社NIMURA
風の影響を受けにくい屋内での作業風景です。半自動溶接は溶接棒を取り替える作業がなく、ワイヤーが自動で送り出されるので溶接速度が速く、量産性に優れています。
引用元:WELDTOOL
写真に見える丸い粒のようなものはスパッタと呼ばれるものです。被覆アーク溶接にあるスラグよりも簡単に取り除くことが出来ます。スラグはハンマーなどで叩く必要がありますが、スパッタは残材などで擦ると取れます。
半自動溶接は自動化させることも出来ます。
参考記事溶接の自動化を詳しく知りたい方はこちらの記事を参考にしていただけたらと思います。⇒第6回 溶接の自動化とは?自動溶接・ロボット溶接
引用元:株式会社 三矢
TIG溶接でパイプ形状のつなぎ目を溶接しています。密な溶接や細かな溶接も可能という事がTIG溶接のメリットと言えます。
引用元:サイクルパイン
TIG溶接は見た目がキレイに仕上がるため、目に見える部分に適している溶接です。画像の通り、自転車の鉄製フレームにもTIG溶接は使われる場合があります。
TIG溶接は鉄の溶接に限らず、アルミやステンレスにも対応出来るのでマルチな溶接方法とも言えるでしょう。
今回は数ある鉄の溶接の中でも被覆アーク溶接、半自動溶接、TIG溶接の3つをピックアップしてご紹介させていただきました。
「この鉄製品はTIG溶接にしよう!」
「屋外で溶接したいから被覆アーク溶接かな?」
などイメージしやすくなったと思います。
溶接はとても手間のかかる作業であり、経験と技術も必要な工程です。
「どこに溶接を依頼したらいいのかわからない…」
「最短納期で溶接をして欲しい…」
こんなお悩みをお持ちの方はぜひMitsuriにご相談ください!
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