2025-01-15
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今回から、あらゆる工業分野の基礎加工技術として欠かせない溶接加工について解説する、「ゼロからわかる!溶接加工!」シリーズを連載します。
一口に「溶接加工」と言っても、その範囲は非常に広く、扱う人や材料によって対象とする技術や範囲が異なるため、簡潔に解説することはできません。
例えば溶接加工の種類ひとつ取っても、加熱方法で分類するのか、扱う装置で分類するのか、物理学的に分類するのか、扱う材料をもとに金属工学(冶金学)的に分類するのか、法令によって分類するのか、など多数の分類方法があり、かついずれも溶接加工の現場から生まれた観念ではないため、実態に即しているとは言い難いのが現状です。
そこで本シリーズでは、溶接加工に関する知識が全くない方でも、読み進めていくことで溶接加工について理解できるようになることを目標にしています。
シリーズ第1回目の本記事では、溶接加工の基礎中の基礎、「溶接加工とは何か?」を理解するために、加工法の定義や種類、メリットデメリットなどを解説します。
主に、金属と金属をつなぐときなどに用いられる溶接加工。
その定義は日本溶接協会によると、“材料(被溶接材料)に応じて、接合部が連続性を持つように、熱又は圧力もしくはその両者を加え、さらに、必要があれば適当な溶加材(溶接材料)を加えて、部材を接合する方法”とあります。
そのままではまだ分かりづらいため、さらにそれぞれの単語を掘り下げていきましょう。
接合とは、何かと何かを繋ぎ合わせることを言います。溶接以外の接合方法として、接着やねじ固定などが挙げられます。
日本溶接協会の定義にもある通り、溶接には「材料に応じて」さまざまな加工法があり、その種類はすべて合わせると60種類以上にも及びます。この「溶接しようとする材料」のことを、被溶接材料(=母材)と呼びます。
溶接加工と言えば、溶接マスクをつけて、ばちばちと火花を散らしながら作業するイメージが強いかもしれませんが、これはあくまでも溶接加工のうちの一部です。
例えばはんだ付けのような接合法も分類によっては溶接に含まれ、はんだ付けにおけるはんだのように、「被溶接材料を繋ぎ合わせる材料」のことを、溶加材や溶接材料と呼びます。
全部で60種類以上に及ぶ溶接加工ですが、加工方法によって分類すると大きく3種類に分けることができます。
まず、被溶接材料を加熱して溶かして接合する加工法を「融接(溶融溶接)」、被溶接材料に圧力を加えて接合する加工法を「圧接(加圧溶接)」と呼びます。そのほか、被溶接材料を接合するために溶加材を用いる加工法を、「ろう接」と呼びます。
それぞれの加工法の詳細は、次の通りです。
融接は、溶接の中でもポピュラーな加工法です。一般に溶接と言った場合、多くは融接をイメージすることが多いでしょう。
具体的には、被溶接材料の溶接部を加熱して、被溶接材料同士を融合させて溶融金属を作り、冷却とともに凝固させて接合する加工法が融接です。
なお、被溶接材料同士のみで接合するケースのほか、溶加材を加えるケースもあります。また融接では、被溶接材料に機械的圧力を加えることは基本的にありません。
融接の中でも代表的な加工法としては、各種アーク溶接、レーザー溶接、などが挙げられます。なお融接加工の詳細については、本シリーズ第2回で解説します。
融接についてはこちら
圧接は、被溶接材料の接合部に、機械的圧力を加えて接合する加工法です。
機械的圧力とは、文字通り機械によって加える圧力のことで、そのため数値制御が可能というのが圧接の大きな特徴のひとつです。
圧接の中でも代表的な加工法としては、ガス圧接、摩擦圧接、抵抗溶接、拡散接合、超音波圧接、爆発圧接などが挙げられます。
なお圧接は融接とは違い、圧力だけで接合するものばかりではありません。例えば摩擦圧接では、摩擦熱によって被溶接材料を発熱させてから圧着しますし、熱間接合では、ガスの炎によって加熱圧着させます。
圧接の詳細については、本シリーズ第3回で解説します。
圧接についてはこちら
ろう接は、被溶接材料を溶かさずに、溶加材を接合面のすきまに行き渡らせて接合する加工法です。基盤作成などで用いられるはんだ付けが代表的ですが、ろう接では融点の違いから2種類のろうを使い、そのろうによって2種類の加工法があります。
融点450℃以上の硬ろうを用いるものがろう付け、融点450℃未満の軟ろうを用いるものがはんだ付けに分類されます。
金属の接合方法には、大きく分けて機械的接合法と冶金的接合法の2つがあります。溶接は金属の特性を利用することから冶金的接合法に含まれるのですが、機械的接合法との違いはどのようなものか、具体例をあげて比べてみましょう。
機械的接合法として代表的なものに、「リベット構造」という接合法があります。リベット構造とは事前に穴を開けた母材に、真っ赤に熱したリベットを通し、リベットが冷却するときの収縮力で固定・接合するというものです。
リベット構造のほか、かしめ、ボルト結合、焼きばめ、折り込みなども機械的接合に含まれます。
リベット接合についてはこちら
①用いる工具や作業が簡易
②解体することができる
③破断が生じたとしても、接合部でその進行が止まる
一方、デメリットは主に次のようなものが挙げられます。
①十分な信頼性を確保するためには、より多くの部品・加工・工具などが必要になるためコストがかさむ
②接合が増えれば増えるほど製品の重量が重くなってしまう
溶接(冶金的接合法)のメリット
機械的接合法のメリット・デメリットと比較して、溶接には次のようなメリットがあります。
①信頼性(強度)が高い
②気密性、水密性、油密性を得るのが容易である
③製品の重量が軽減できる
④基本的に材料が不要なためコストカットに繋がる
⑤材料(材質やサイズ)を問わず接合できる
⑥製作時間が短く工数削減に繋がる
⑦作業中の騒音が少ない
機械的接合法に比べて非常に多くのメリットを持つことから、現在接合技術の主流となっている溶接ですが、次のようなデメリットもあります。
①材料によっては、溶接部がもろくなる、割れるなどのリスクがある
②構造物に溶接を用いる場合、その用途や材質によってはぜい性破壊(※1)のリスクがある
③溶接部の強度が作業者の技量に左右される
④品質を保つために技量や施工管理が必要になるためコストがかかる
※1 金属のように変形できる性質を塑性というのに対し、ガラスやセラミックのように変形せずに突然壊れる性質のことをぜい性(脆性)と言い、そういった壊れ方をぜい性破壊と言う。
シリーズ第1回では、溶接加工の定義や種類、そして他の接合法と比べたメリットやデメリットといった基礎知識について解説しました。
しかし実際に溶接加工を活用するためには、これ以外にも適切な材料の選択や、加工方法や溶接機の検討などが欠かせません。
次回以降でそれらについても解説していきますので、ぜひあわせて確認してください。
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