2025-01-15
更新
本シリーズでは、溶接加工に関する知識が全くない方でも、読み進めていくことで溶接加工について理解できるようになることを目標にしています。
シリーズ第6回目の今回は、自動溶接機を用いる「自動溶接」や、それを発展させた「ロボット溶接」について解説します。
「自動溶接」とは、「操作者が常時操作しなくても連続的に溶接が進行する装置を用いて行う溶接の総称」と、JISに定義されています。
もともと溶接は長らく手作業で行われてきたもので、現在も現場では手作業によって多くの溶接が行われています。しかし昨今、ファクトリーオートメーション=FAの考えが浸透するにつれて、製造工程の自動化が推し進められるようになりました。
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FA…ファクトリーオートメーション
生産工程の自動化を図るシステムの総称
FAを導入することによる大きなメリットのひとつが、人件費の削減と安定化です。一時期は海外に生産工場を設ける企業も多かったですが、現在は世界的に人件費が高騰していることもあり、必ずしもコスト削減には繋がらなくなってきました。
また、製造業にとって課題であった品質の属人化も、自動化によって手作業によらなくなることで、大部分を解消することができます。
溶接の自動化、ひいては製造工程全体の自動化は、工業が次のステージへ移行するために必要なステップなのです。
自動溶接やロボット溶接について理解するためには、それ以前の主流であった手溶接や半自動溶接といった各溶接法に関する理解が欠かせません。
それぞれが生まれた歴史的な背景も踏まえて、メリットやデメリットなどの特徴を理解しておきましょう。
まずは、溶接法の中でも最もポピュラーだった、手溶接についてです。
単に手溶接と言った場合、一般に被覆アーク溶接のことを指します。被覆アーク溶接とは、被覆剤(フラックス)を塗布した被覆アーク溶接棒(手溶接棒)を用い、溶接棒と母材に電流を流してアークを発生させて、その熱によって溶接する溶接法のことです。
アーク溶接についてはこちら
溶接という工法全体の歴史は古く、紀元前3000年ごろの史料にはすでにその形跡がありました。しかしその時点では有力者の装飾品などに加工の跡がある程度で、現在のような溶接法が確立され本格的に工業用として取り入れられるようになったのは、20世紀のはじめとかなり最近です。
【19世紀 アークの発見・溶接法の開発】
その少し前、1800年にアーク自体はイギリスの化学者であり発明家でもあったハンフリー・デービーによって発見されていたのですが、当時はそれを長時間にわたって安定的に扱えるだけの電源がありませんでした。そしてアークの発見からおよそ30年後の1831年に、発電機であるダイナモが開発されます。それからダイナモを利用して、1900年ごろまでにかけて急速に実用的なアーク溶接法が開発されていきました。
【20世紀 被覆アーク溶接の浸透】
被覆アーク溶接も、そんな中で生まれました。国内で被覆アーク溶接が取り入れられるようになったのは、1914年に三菱長崎造船所がスウェーデンから被覆アーク溶接棒を輸入したことがきっかけです。造船の際、ボイラー部品の溶接などに適用したのが始まりと言われています。それから程なくして、1920年には早くも全溶接船(421総トン)が製造されたほど、被覆アーク溶接は驚くべき速さで浸透していきました。
それから溶接は1974年に年間生産量45万トンという生産量のピークを迎え、そのうちの大部分が被覆アーク溶接であったと言われています。その後溶接ロボットなどにより自動溶接化が進展するまで、被覆アーク溶接は溶接法の主流でした。
なお現在は、被覆アーク溶接の生産量比率は20%程度まで減少しています。
ピーク時に比べ極端に生産量の減った手溶接ですが、今後も現場によっては使用され続けることが予想されます。
その理由は、手溶接には次のようなメリットがあるからです。
手溶接のメリット
①設備、装置(溶接棒)が小型で安価なので導入しやすい
②被覆剤が溶融して発生するガスやスラグ(※1)が母材を覆うことで、現場環境による影響を受けにくい(=シールド効果を得やすい)
③手作業が前提となるため、素材や構造によらず溶接が可能
※1 スラグ:溶接の際に発生する、溶融した金属から分離して浮かぶかす。鉱滓、溶滓、のろなどとも呼ぶ
メリットを見ると分かる通り、手溶接は主にコスト面などで強みを持つ一方で、次のようなデメリットを持っています。
手溶接のデメリット
①溶着効率が低く、溶接棒の交換やスラグ除去などの手間がかかる
②多量のヒューム(※2)が発生する
③溶接者の技量によって品質に差が生まれる
※2 ヒューム:溶接の際に発生した金属蒸気が凝集して、微細な粒子となったもの。吸入すると、ヒューム熱などの原因となり得る。
手溶接のデメリットのうち、溶着効率の低さを解決するために生み出されたのが半自動アーク溶接です。
手溶接では被覆アーク溶接棒を都度交換しなければいけないのですが、この交換作業を省くために溶接材に長いワイヤーを用いたものが半自動溶接です。かつては溶接と言えば被覆アーク溶接、つまり手溶接のことを指すのが一般的でしたが、現在ではこの半自動アーク溶接のことを指すほど一般的となりました。
半自動アーク溶接はガスシールドアーク溶接の一種であり、主な種類としては、CO2溶接(炭酸ガスアーク溶接)、MIG溶接、MAG溶接などが代表的な半自動アーク溶接として挙げられます。
なおそれぞれの詳細については、被覆アーク溶接と同じくシリーズ第5回「アーク溶接とは」もご覧ください。
手溶接に代わり主流となった半自動溶接ですが、次のようなメリットとデメリットを持っています。
半自動溶接のメリット
①溶接材の交換なく長時間の作業が可能で、手溶接に比べ能率が非常に高い
②溶接速度が速く、溶接後のフラックスやスパッタ除去作業もほぼ省略できる
半自動溶接のデメリット
①フラックスの代わりにシールドガスを用いるため、ノンガスワイヤーを使用する場合は別として、基本的に風のない屋内で作業する必要がある
②溶接者の技量によって品質に差が生まれる
半自動溶接は、手溶接のデメリットのひとつであった効率の低さを補うことはできましたが、溶接者の技量差によって生まれる品質の違いは防げませんでした。
そこで生まれたのが、サブマージアーク溶接を代表とする自動溶接です。
自動溶接には主に、自動溶接機による「自動溶接」と、ロボットが溶接を行う「ロボット溶接」があります。
自動溶接は、溶接を工場のラインなどで連続的に行う溶接法です。
それを発展させ、ロボットによってより高度な溶接も自動で行えるようにした溶接法がロボット溶接です。自動溶接では、溶接時の姿勢が下向き・水平・横向きに限られており、また溶接面の形状もほぼ直線に限られていました。そうした制限をクリアしたのが、ロボット溶接です。
ロボット溶接も含めた自動溶接の特徴は、一般的に以下の通りです。
自動溶接のメリット
①スパッタやヒュームの発生が少ない
②風の影響をほとんど受けない
③仕上がり品質が作業者の技量によらず、品質が均一化できる
自動溶接のデメリット
①溶接時の姿勢が、下向き、水平、横向きに限られる
②溶接面の形状が、直接かそれに近い曲線に限られる
③シーケンス制御・機構設計・安全管理など、これまでとは異なる技能が必要となる
手溶接や半自動溶接のデメリットを補うために生まれた自動溶接ですが、自動溶接を導入するうえでは、産業用ロボット制御のためのティーチング、というこれまでとは異なった作業が発生します。
ティーチングとは、産業用ロボットに一連の動きを教え込む作業のことで、大きく分けて①オンラインティーチング②オフラインティーチングという2種類の方法があります。
オンラインティーチングとは、ティーチングペンダントと呼ばれるリモコンを使って、ロボットを実際に動かしながら稼働の様子を記録して、その動作をもとに再生、確認するものです。この方法をプレイバック方式と呼ぶことから、オンラインティーチングは、ティーチング・プレイバックとも呼ばれます。
手軽かつ確実に実施しやすいことから以前は一般的な手法でしたが、ティーチング実施中は工場のライン自体をストップする必要があることから、その損失が懸念され、採用機会は減少しました。
オンラインティーチングに代わり導入が増えたのが、オフラインティーチングです。オフラインティーチングでは、オンラインティーチングで問題だった生産ラインの停止を避けるため、ロボットを使わずにティーチングを行えるようにしました。
オフラインティーチングは、大きく4種類に分けられます。
①テキスト型
②シミュレータ型
③エミュレータ型
④自動ティーチングシステム
それぞれ、3DCADデータを使用してシミュレートしたり、テキストエディタからプログラムを直接打ち込んだりといった作業が発生するため、ティーチングを行う作業者(ティーチングマン)がCADの扱いやプログラミングについてある程度理解している必要があります。
生産ラインを止めないために導入されるようになったオフラインティーチングですが、その多くは特殊な知識や技術が必要になるため、なかなか導入が進められないというケースも少なくありません。
特に溶接技術の効率化には、現場での経験によって蓄積した熟練者の知見を取り入れることが不可欠であり、しかしそうした熟練者がオフラインティーチングで求められる技能を備えていることは稀というジレンマがありました。
溶接の効率化に向けたジレンマ
熟練者の現場の知見を取り入れる必要
↕
熟練者がオフラインティーチングで必要な技術を備えていることは稀
そこで生まれたのが、ダイレクトティーチングです。ダイレクトティーチングは直接教示法とも呼ばれる方法で、ティーチングマンが直接ロボットを動かし、ロボットに動作を教えます。ロボットの先端部分を直接操作し、その操作経緯をコントローラーに記憶させることで、より直感的なティーチングを行うことが可能です。これにより、ロボットそのものに対する理解を深めずとも、それまで蓄えた知見をダイレクトにロボットに伝えることができるようになりました。
さらに近年では、AIを搭載することによるティーチングレスも同じく導入が進んでいます。例えばダイレクトティーチングで入力したプログラムに不備があった場合や、生産ライン側の動作がもともとの想定と異なっていた場合などに、細かい調整が必ず発生します。その際、AIが自身で蓄積したデータから自己判断することで、都度発生する細かいティーチングのコストを抑えることができるのです。ティーチングレスが実現すれば、ティーチングマンの育成コストも抑えることができます。
「ゼロからわかる!溶接加工!」シリーズ第6回は、溶接の自動化について、誕生の経緯や現状まで解説しましたがいかがでしたでしょうか。溶接の自動化・ロボット化を推し進めるうえでは、ティーチングマンの育成が欠かせません。
ぜひロボットの導入検討と合わせて、新たにどういった人材が必要になるのか、またそもそもどういった作業を効率化したいのかも把握しておくと良いでしょう。
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