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アーク溶接【基礎】種類と原理!電圧設定・温度分布まで詳細解説

2025-01-15

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金属加工業界最大級のマッチングプラットフォーム「Mitsuri」を手掛ける企業。
「未来の製造業をつくる」をモットーに、製造業DXを推進している。

アーク溶接は最も幅広く利用されている溶接加工であるがゆえに、どの工場に頼むのが適切なのかわからないケースがとても多いです。

アーク溶接の原理メカニズムと仕組み

アーク溶接の原理メカニズム

アーク溶接の原理メカニズムの説明図
図1:アーク溶接の原理メカニズム 

①2つの空間的に離れた電極に電圧をかけます。

②空気の絶縁が破壊されると、電極の間に電流が流れます。

③電流が流れるのに伴って、弧状の強い光(アーク)と高温の熱が発生します。

④この高温の熱を用いて行う溶接を「アーク溶接」といいます。

アーク溶接は「アーク放電」という気体中に生じる放電現象を利用した溶接方法です。「アーク放電」とは、電極に電流を流した状態で接触させ引き離すと起こるもので、非常に強い光と高熱を発するのが特徴です。例えば、身近なものでは電化製品のプラグをコンセントから引き抜いたときに発生するスパークが、アーク放電です。

アーク放電は、溶接以外にプラズマ切断や放電加工にも用いられる放電現象です。溶接で使用するアーク放電は、高いもので太陽の表面温度を超える2万度ほどにもなり、あらゆる母材を溶融させることが可能です。

放電現象を利用することから、基本的にアーク溶接の対象は電気伝導体のみです。そのためアーク溶接は電気溶接と言われることもありますが、その場合は抵抗溶接(スポット溶接)も含むのが一般的です。

アーク溶接は超高温によってあらゆる母材を溶融させることができますが、その高温によってアーク放電を生み出す電極そのものも溶融することがあります。

アーク溶接の電圧設定と温度

アーク溶接においては、母材から電極へアークを起こす必要があります。電圧の設定は、電極(溶接棒)側がプラス電圧、母材側がマイナス電圧です。

  • 出力電流:5A~1,000A
  • 出力電圧:8~40V
  • アーク温度:5,000°C~20,000°C

アーク溶接の種類

アーク溶接の種類
図2:アーク溶接の種類

アーク溶接は、電極が溶融するか否かによって2種類に大別されます。 電極が溶融して消耗する消耗電極式溶接(溶極式)と、電極は溶融せず溶加材(溶接棒)を母材へ溶かし込む非消耗電極式溶接(非溶極式)です。消耗電極式溶接と非消耗電極式溶接は、それぞれ次の種類があります。

消耗電極式溶接

  • 被覆アーク溶接
  • 炭酸ガスアーク溶接
  • マグ溶接(MAG溶接)
  • ミグ溶接(MIG溶接)
  • サブマージアーク溶接
  • セルフシールドアーク溶接
  • スタッド溶接

非消耗電極式溶接

  • ティグ溶接(TIG溶接)
  • プラズマアーク溶接

消耗電極式溶接の特徴!メリット&デメリット

(1)被覆アーク溶接

被覆アーク溶接は、被覆剤(フラックス)を塗布した溶接棒を電極にして、母材との間に発生したアークの熱を利用して溶接するものです。一般には、手溶接法と呼ばれています。

被覆アーク溶接は溶接棒を使い分けることで、様々な母材に対応できる手軽さもあり、これまで主流の溶接法として活躍してきました。

最近では、より効率のよい溶接法が利用されることも多く、利用範囲は減少傾向です。それでも現場溶接では手軽さが重宝される場面はまだ多く、活躍のシーンが完全になくなることはないと考えられます。

被覆アーク溶接
メリット ①設備、装置が小型で安価なので導入しやすい
②被覆剤が溶融して発生するガスやスラグ(*1)が母材を覆うことで、現場環境による影響を受けにくい(=シールド効果を得やすい)
③手作業が前提となるため、素材や構造によらず溶接が可能
デメリット ①溶着効率が低く、溶接棒の交換やスラグ除去などの手間がかかる
②多量のヒューム(*2)が発生する
③溶接者の技量によって品質に差が生まれる

(*1)スラグ:溶接の際に発生する、溶融した金属から分離して浮かぶかす。鉱滓、溶滓、のろなどとも呼ぶ。

(*2)ヒューム:溶接の際に発生した金属蒸気が凝集して、微細な粒子となったもの。吸入すると、ヒューム熱などの原因となり得る。

(2)炭酸ガスアーク溶接

アーク溶接する際、金属が酸化するのを防ぐためにガスをシールドとして利用するものを総称して「ガスシールドアーク溶接」と言います。その中でも、シールドガスに炭酸ガス、または炭酸ガスを中心とした混合ガスを用いるものを、炭酸ガスアーク溶接と呼びます。

炭酸ガス(CO2)アーク溶接、ミグ溶接、マグ溶接の違いは、使用するガスの違いです。

被覆炭酸ガスアーク溶接
メリット ①炭酸ガスが安価であるため経済的
②薄板溶接に向いている
③アークの状態を確認しながら作業ができる
デメリット ①厚板溶接には向いていない
②作業者が発生した一酸化炭素を吸わないよう換気に注意が必要
③スパッタが比較的発生しやすく、接合面の外観が悪くなる
④ガスを使用するため、風の影響を受けやすい

(*3)スパッタ:溶接時に飛散する微粒子。塗装や溶接などの欠陥の原因になり、品質に悪影響を与える。

参考記事:炭酸ガスアーク溶接とは?【3分でわかる】向いている金属もご紹介!

炭酸ガスアーク溶接は、たいてい半自動溶接として使われる工法です。半自動溶接とは、消耗する電極を自動的に供給する溶接トーチを利用するものです。溶接棒の代わりに、コイル状に巻いた溶接ワイヤーを、送給ローラーでトーチ先端に送ります。ワイヤーはトーチ先端のコンタクトチップで通電され、炭酸ガスの雰囲気(*4)中で母材との間にアークを発生し、その熱で母材とワイヤーを溶かして接合します。

炭酸ガスアーク溶接における「炭酸」とは二酸化炭素のことです。作業中に化学反応によって、一酸化炭素を生じます。そのため、作業者は一酸化炭素を吸い込まないように注意が必要です。

(*4)ガスの雰囲気:シールドガスなどの特定の気体そのものの状態や、その気体の条件下にある状態を指す


(3)ミグ溶接(MIG溶接)

マグ溶接とミグ溶接
図3:マグ溶接とミグ溶接

参考:ミグ溶接を徹底解説!【専門家が語る】素人でも3分で理解できます!

シールドガスとして、炭酸ガスの代わりにアルゴンやヘリウムなどの不活性ガスのみを使用するものをミグ(Metal Inert Gas)溶接と呼びます。

ミグ溶接もガスシールドアーク溶接の一種であり、工法は炭酸ガスアーク溶接と基本的に同様で、半自動溶接として使われます。

ミグ溶接(MIG溶接)/ 不活性ガスのみ
メリット ①溶接速度が速く、仕上がりが美しくなる
②非鉄金属にも使用できる
デメリット ①不活性ガスが高価でコストが高い
②不活性ガスはアークが広がりやすく、接合面の溶け込みが浅くなり溶け込み不良が発生しやすい。
 ※溶け込み不良があると、強度低下、応力集中による亀裂発生などに繋がる可能性がある
③ガスを使用するため、風の影響を受けやすい

ミグ溶接には、炭酸ガスアーク溶接に比べて仕上がりが美しくなるという特徴がありますが、日本ではアルゴンガスやヘリウムガスが高価なことから、高い精度品質を求められない場合は炭酸ガスアーク溶接が用いられることが多いです。

これに対して、アメリカやヨーロッパでは不活性ガスが比較的安価なため、よく使われる傾向にあります。


(4)マグ溶接(MAG溶接)

マグ溶接(MAG溶接)/ 不活性ガスと炭酸ガスの混合
メリット ①ミグ溶接よりも溶け込みが深くなる
②炭酸ガス溶接よりもスパッタの発生が少ない
デメリット ①炭酸ガスを使用するため、非鉄金属(アルミニウムなど)には使用できない
②ガスを使用するため、風の影響を受けやすい

参考:マグ溶接を徹底解説!【専門家が語る】素人でも3分で理解できます!

シールドガスとして、不活性ガスと炭酸ガスの混合ガスを使用するものをマグ(Metal Active Gas)溶接と呼びます。マグ溶接もまたガスシールドアーク溶接の一種であり、工法は炭酸ガスアーク溶接と同様で、通常は半自動溶接として用いられます。

不活性ガスのみを用いるミグ溶接の場合、溶接面などの仕上がりが美しくなる一方で、アークが広がりやすく溶け込みが浅くなってしまいます。アークを細く集中させる作用のある炭酸ガスを混合し、溶け込みを深くさせるのがマグ溶接です。

(5)サブマージアーク溶接

サブマージアーク溶接は、散布した粒状の被覆剤(フラックス)中にワイヤを自動送給して、ワイヤーと母材の間にアークを発生させて溶接する方法です。被覆アーク溶接における溶接棒の心線と被覆剤を分離させて、自動溶接を可能にしました。

サブマージアーク溶接
メリット ①太いワイヤーと大電流を用い、スピーディな溶接が可能
②溶け込みの深い溶接ができる
③フラックス中でアークが発生するため遮光が不要
④スパッタやヒュームの発生が少ない
⑤風の影響をほとんど受けない
⑥仕上がり品質が作業者の技量にほぼよらない
デメリット ①溶接時の姿勢が、下向き、水平、横向きに限られる
②溶接面の形状が、直接かそれに近い曲線に限られる
③フラックスの供給と回収、スラグの剥離が必要
④溶接熱が大きくなりすぎると、影響部の軟化や脆化を生じることがある

(6)セルフシールドアーク溶接

CO2溶接・MIG溶接・MAG溶接といったガスシールドアーク溶接に対して、ガスを使用しない溶接法をセルフシールドアーク溶接(=ノーガスアーク溶接、ノンガスシールドアーク溶接)と呼びます。

セルフシールドアーク溶接は、ガスシールドアーク溶接やサブマージアーク溶接とは違い、外部から被覆剤やガスを供給することなく溶接する方法です。チューブ状の溶接ワイヤーに脱酸材と被覆剤を装填してあり、アーク発生とともにアーク柱および溶融池を外気の酸素や窒素から保護して溶接します。

セルフシールドアーク溶接
メリット ①ガスボンベ不要で手軽に溶接できる
②ガスを使用しないため、風の影響を受けない
デメリット ①ガスシールドアーク溶接に比べ、スパッタやヒュームが多く出る
②仕上がりは被覆アーク溶接と同程度
③ボンベ不要な代わりに専用ワイヤーにコストがかかる

(7)スタッド溶接

今回はアーク方式のスタッド溶接について解説します(*5)。

(*5)通常、単に「スタッド溶接」と言った場合は、板の裏面に影響を及ぼさないCD方式、板厚に対して6~8倍のスタッドを接合できるショートサイクル方式、M6~M25のスタッドが接合できるアーク方式の3方式を含みます。

スタッド溶接は、溶接棒や溶接ワイヤーを使いません。スタッドと呼ばれるピンを専用のガンに取り付けて、母材に押し当てた状態で電流を流して引き上げることで、アークを発生させて溶接します。

スタッド溶接
メリット ①溶接時間が短く、母材に与える影響が少ない
②溶接品質が技量によらない
③生産性と接合強度が高い
デメリット ①溶接可能な箇所と不可能な箇所がある
②明確な検査方法がない

非消耗電極式溶接の特徴!メリットとデメリット

(1)ティグ溶接(TIG溶接)

ティグ溶接の説明図
図4:ティグ溶接

ティグ溶接(TIG溶接)は、熱に強いタングステン電極と被溶接物との間にアークを発生させ、アーク部をアルゴンやヘリウムなどの不活性ガスでシールドして溶接する方法です。TIGは、Tungsten Inert Gasの略です。

金属の中でも最も融点の高いタングステンを電極として使用することで、電極をほとんど消耗せずに溶接できます。電極が溶融しない代わりに、ごく薄板の場合を除いて、溶融部の金属を補うためにフィラーワイヤー(溶加棒)が使用されます。

ティグ溶接法はあらゆる種類の金属の溶接が行えますが、ステンレスの溶接には直流が、アルミの溶接には交流の溶接電源が使用されます。

ティグ溶接(TIG溶接)
メリット ①薄板、複雑な形状など精密な溶接が可能
②溶接後の仕上がりが美しい
③不活性ガスを用いるため、スパッタがほぼ出ない
④電極の消耗がない(少ない)ため、長時間の連続溶接が可能
デメリット ①ガスを使用するため風の影響を受けやすい
②溶接速度が遅く、大量生産などに向かない
③速度が遅いせいもあり、不活性ガスのコストがかかる
④仕上がりが作業者の熟練度による

ティグ溶接(TIG溶接)メリット①薄板、複雑な形状など精密な溶接が可能②溶接後の仕上がりが美しい③不活性ガスを用いるため、スパッタがほぼ出ない④電極の消耗がない(少ない)ため、長時間の連続溶接が可能デメリット①ガスを使用するため風の影響を受けやすい②溶接速度が遅く、大量生産などに向かない③速度が遅いせいもあり、不活性ガスのコストがかかる④仕上がりが作業者の熟練度による

(2)プラズマアーク溶接

図5:プラズマアーク溶接

プラズマアーク溶接は、イオン化した不活性ガスをプラズマガスとしてノズル孔から噴出し、アークの導電体とする溶接法です。タングステン電極を用いる点はティグ溶接と同様ですが、より幅の狭いアークが発生するため、深い溶け込みが得られます。

プラズマアーク溶接
メリット ①高エネルギーのアークで、高速かつ歪みの少ない溶接が可能
②アークの指向性が高く、アーク蛇行せず仕上がりが美しくなる
③スパッタが発生しない
④電極の消耗がない(少ない)ため長時間の連続溶接が可能
⑤薄板の溶接も可能
デメリット ①溶接トーチの操作にやや制約がある
②装置の価格が高く、消耗部品が多い、ガス使用量が多いなどランニングコストがかかる
③溶接制度が厳しい

アーク溶接の資格

アーク溶接は電気エネルギーを用いて、非常に強い光と高熱を発する溶接方法であるため、感電や爆発などといった重大な事故の原因となる危険性を秘めています。

アーク溶接を業務として遂行するためには、その専門性・危険性から、アーク溶接に関する特別な講習を受けることが推奨(*6)されています。

(*6)資格取得は"推奨"されていますが、資格なしでもアーク溶接することは可能です。


アーク溶接の業務に係る特別教育

アーク溶接特別教育講習を受講すると、修了証を得られます。他の溶接に関する資格ではペーパーテストで終わることも多いですが、アーク溶接の資格においては、講義と実技の両者を受講する必要があります。

機器の取り扱いに伴う安全リスクが存在する溶接作業のため、熟練者の徹底した指導の下で認定を得る仕組みです。受講後には簡単な実技試験もあり、職業訓練センターでも行われています。

<費用>

アーク溶接の特別教育は各都道府県の企業や公的機関などで実施しており、受講する場所によって金額が異なります。目安としては、テキスト代を含め、消費税込みで10,000円から25,000円です。

<講習内容及び日数>

アーク溶接の特別教育は合計で11時間の学科と10時間以上の実技を受講することで修了です。学科のみであれば1日半、実技も加えると3日間の日数で講習が完了します。

<一般的なアーク溶接特別教育の講習内容及び講習時間>

溶接に関する知識1h溶接装置の知識3h溶接作業の知識6h関係法令1h実技教育(各事業所にて)10h以上

アーク溶接作業者の資格は、アーク溶接の取扱に関する講習を受けた人であれば誰でも取得できます。また、アーク溶接作業者の資格には期限がないので更新の必要はなく、一度取得すれば一生有効になる資格です。

アーク溶接の資格を活かせる仕事

アーク溶接の資格は幅広い用途で利用することができ、あらゆる金属構造物を扱う仕事に役立ちます。代表的なものには、自動車や鉄道車両、船舶や航空機などの分野が挙げられます。

また、金属構造物のみならず、建設・土木業や官工事業や解体工事業などにも必要不可欠な技術です。アーク溶接の資格は、プロの溶接工への第一歩として考えられています。

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