カテゴリ

Mitsuriでの受発注の最新の傾向や統計、サービス最新情報を毎月メールにてお届けします。
WEB上での新規取引のコツや活用方法など役に立つ情報も配信しています!

 

炭酸ガスアーク溶接とは?【3分でわかる】向いている金属もご紹介!

2025-01-13

更新

この記事を監修した人

金属加工業界最大級のマッチングプラットフォーム「Mitsuri」を手掛ける企業。
「未来の製造業をつくる」をモットーに、製造業DXを推進している。

近年、被覆アーク溶接に代わり、利用が広がってきているのが炭酸ガスアーク溶接です。

今回は、炭酸ガスアーク溶接の定義から、メリット・デメリットについてもご紹介します。また、なかなか分かりにくいティグ溶接・ミグ溶接との違いと、炭酸ガスアーク溶接に向いている金属についても解説します。

炭酸ガスアーク溶接とは

炭酸ガスアーク溶接とは、アーク放電のシールドガスに二酸化炭素(CO2)を使う溶接法です。CO2溶接と呼ばれることもあります。

引用元:日本財団

アーク放電とは、溶接時にバチバチと大量に出ている火花のことです。そして、シールドガスは、溶融金属の酸化を防ぐために用いられるガスのことを指します。シールドにガスを用いるアーク溶接は「ガスシールドアーク溶接」とも呼ばれています。

炭酸ガスアーク溶接は溶接スピードが速く、溶け込みが深いことから作業効率が良い点が魅力です。また、日本では不活性ガス(Ar)よりも二酸化炭素の方が比較的安く手に入るため、最も一般的なアーク溶接法となっています。

不活性ガスを使うのに比べると、スパッタ(※1)が多く出るので見た目が少々悪くなるのがデメリットです。しかし、炭酸ガスアーク溶接にはスラグ(※2)が発生しないメリットがあり、スラグを取り除く時間を節約できる点では効率的です。

※1 スパッタ…溶接時に出る細かい金属の粒。これが多いと外観も悪くなる。

※2 スラグ…溶接時に酸素と反応してできる不純物のかたまり。溶接時のスラグはなぜでるのかを解説!スラグ巻き込みの原因と対処法についてもご紹介!

しかし近年の溶接業界では、炭酸ガスアーク溶接でもスパッタを出さない溶接技術の向上が目指されています。

炭酸ガスアーク溶接は、半自動アーク溶接に分類されています。”アーク”を省略して半自動溶接とも呼ばれていますが、溶接ワイヤーが自動的に送り込まれるのが特徴です。

また、溶接時に出る一酸化炭素に注意が必要です。アーク放電と二酸化炭素が化学反応を起こすことで、一酸化炭素が発生します。ですから、特に屋内での作業では常に換気を行うことが必須となります。

炭酸ガスアーク溶接は、薄板溶接を得意としており、逆に厚板溶接には不向きです。

炭酸ガスアーク溶接のメリット・溶接スピードが速く、溶け込みが深いので作業効率が良い・スラグが少ない・薄板溶接に向いている・日本では二酸化炭素は不活性ガスに比べて安価なので低コスト

炭酸ガスアーク溶接のデメリット・危険な一酸化炭素が発生するので常に換気が必要・スパッタが多く出やすく、外観が悪くなる傾向がある・厚板溶接には不向き

ティグ溶接・ミグ溶接との違い

ガスシールドアーク溶接法には、炭酸ガスアーク溶接の他にティグ(TIG)溶接・ミグ(MIG)溶接がありますが、どういう違いがあるのか少し難しいですよね?

引用元:東大阪市技術交流プラザ

実は、この3種類の大きな違いは「シールドガス」にあります。

各溶接方法とシールドガスの種類

・炭酸ガスアーク溶接:半自動溶接・二酸化炭素(CO2)・ミグ溶接:半自動溶接・不活性ガス(Ar)ミグ溶接を徹底解説!【専門家が語る】素人でも3分で理解できます!・ティグ溶接:GTA溶接・不活性ガス(Ar)

ティグ溶接とは【専門家が解説】特徴や加工方法について詳細をお伝えします!

炭酸ガスアーク溶接とティグ溶接・ミグ溶接は、シールドガスが二酸化炭素か不活性ガス(アルゴン)かという違いがあります。

ミグ溶接では、不活性ガスだけではなく、不活性ガスに数%だけ酸素(O2)を混ぜたエルナックスガスが使用されることもあります。また、不活性ガスにはアルゴンの他にヘリウムが用いられることもあります。

そして、ティグ溶接とミグ溶接の違いは溶接法の種類です。ミグ溶接が炭酸ガスアーク溶接と同じ半自動溶接であるのに対し、ティグ溶接は同じアーク溶接法の中でも、電気を使うGTA溶接に分類されます。

ミグ溶接・炭酸ガスアーク溶接:半自動溶接ティグ溶接:GTA溶接

このGTA溶接は、電極棒に消耗しにくいタングステンを使い、溶接棒をアーク中で溶かして溶接します。半自動溶接とは違い、溶加材を自動的に供給することはできません。

また、炭酸ガスアーク溶接・ミグ溶接とティグ溶接は、「消耗電極式溶接」と「非消耗電極式溶接」にも分けられます。

ティグ溶接が“非消耗”のタングステンを電極棒に用いるのに対し、炭酸ガスアーク溶接・ミグ溶接は“消耗”するコイル状に巻かれた溶接ワイヤーを用いるという違いがあります。

シールドガスは、溶接時に溶融金属と空気が触れることを防ぐために用いられています。そのため、シールドガスには空気を遮断しつつ、溶融金属とも反応しない性質を持つガスが選ばれています。

もし溶融金属と空気が触れてしまうと、窒素や酸素と反応することで溶接部に気孔がいくつもできてしまいます。空気触れてしまうと、酸化して溶接部の強度が弱くなり質が悪くなるため、シールドガスが必要となるのです。

加えて、どのシールドガスを選ぶのかによって、作業効率や溶接の仕上がりにも違いが出ます。溶接に用いる母材や溶接材料との相性も考慮に入れ、目指す仕上がりに適したシールドガスを選ぶことが必要となります。

炭酸ガスアーク溶接とティグ溶接・ミグ溶接違い・炭酸ガスアーク溶接は二酸化炭素を用いるが、ティグ溶接・ミグ溶接はアルゴンやヘリウムといった不活性ガスを用いる・炭酸ガスアーク溶接・ミグ溶接は半自動溶接・シールドガスによって、母体や溶接材料との相性があり仕上がりも異なる

炭酸ガスアーク溶接に向いている金属、向いていない金属

シールドガスの目的は空気を遮断することにあると触れましたが、溶接の母体や溶接材料と反応しないものを選ばなければなりません。

炭酸ガスアーク溶接の場合は、シールドガスに二酸化炭素を用います。ですから、二酸化炭素と反応してしまう金属には向いていないということになります。特に、アルミニウムといった非鉄金属には使用できません。

そして、コスト面も関係してきます。炭酸ガスアーク溶接でカバーできる分野があれば、不活性ガスに比べコスト削減になるからです。

それでは、炭酸ガスアーク溶接に向いている金属と向いていない金属についてご紹介したいと思います。

向いている金属

・鉄(軟鋼)

一般的に使用される「鉄」になります。「軟鋼(なんこう)」や「低炭素鋼(ていたんそこう)」とも呼ばれ、鋼(はがね)全体に対し、炭素が0.02~0.30%の間で微量に含まれている金属を指します。

軟鋼は、建築や水道管などに広く一般的に使われています。炭素含有量が高くなるにつれ、鋼が強く曲がりにくくなることから、低炭素鋼は「軟鋼」と呼ばれています。

・低合金鋼

鉄(炭素鋼)に1つ以上の合金元素を加えたものを、「合金鋼(ごうきんこう)」と呼びます。その中で、合金元素の割合がおよそ5%以下と低いものが「低合金鋼」です。

低合金鋼は、鉄道のレール、車の車体や飛行機の胴体、パイプ、そして橋などに利用される構造工学プレートなどに使用されています。

向いていない金属

・アルミ合金

アルミ合金は、アルミニウム特有の軽さを生かしながら銅やマンガンなどとの合金によって強度を上げた金属です。代表的なものには、ジュラルミンが挙げられます。

アルミ合金についてはこちら

アルミ合金を詳しく解説【専門家が語る】適切なアルミ番がわかります!

・ステンレス

国際規格のISO規格では、大部分が鉄の鋼全体に1.2%以下の炭素と10.5%以上のクロムまたはニッケルを含んだ金属を指します。

「さびにくい」というのがステンレスの特徴ですが、100%再生可能という意外な長所も併せ持っています。

・銅合金

様々な目的に合わせて、銅に金属を加えた合金です。青銅器時代の青銅など、古来から使われてきました。

メインが銅なので、熱伝導性や電気伝導性が高いという特徴があります。また、合金によって耐食性や耐摩耗性など銅の弱点をカバーしています。

・チタン

合金鋼並みの強度を持ちながら軽く、アルミやステンレスに優る耐食性を持つ金属です。耐熱性も高いことから航空・宇宙・海洋関係、自転車やゴルフクラブ、メガネと様々な物に使用されています。

しかし、その優れた特性の反面、製錬・加工が共に難しく、コストも高くなるというデメリットがあります。

チタンについてはこちら

【チタン】とは!?チタンは他の金属とどう違うのかメリット・デメリットをご紹介!

まとめ

炭酸ガスアーク溶接について、理解を深めていただけましたでしょうか。

利用が広がってきている技術とはいえ、材によって向き不向きもあり、導入する場合には、他溶接の方法との比較検討が必要です。

広告バナー

Mitsuriでどんな取引が行われている?
新しい機能を使ってどう新規取引につなげる
‍そんな疑問に毎月メールでお届けします

 
新着記事