ナット溶接とは|ウェルドナット(溶接ナット)の種類もご紹介!

溶接は代表的な金属加工の一つで、実に60種類以上もの加工方法が存在すると言われています。溶接加工の一種である「ナット溶接」は、その名の通り、板金にナットを取り付け、主に板金同士を接続するのに用いられている加工方法です。あまり聞き慣れない溶接加工法かもしれませんが、特に自動車分野などでは欠かせない技術であり、他にも家電製品やゴルフクラブ用品など、幅広い分野において利用されている溶接法です。

今回は、このナット溶接をテーマに、その基本的な知識に加えて、ナット溶接で用いられるナット(ウェルドナット)の種類について詳しくご説明していきます。これから、ナット溶接を利用して製品や部品の製作を検討している方や、ナット溶接について知識を深めたい方はぜひご一読ください。

参考:第1回 溶接加工とは?代表的な種類とメリット・デメリットを解説

ナット溶接は板金とナットを用いた溶接加工

ナット溶接とは、ナットを板金に溶接することで取り付ける加工方法です。

例えば、自動車のボディシェルではこの「ナット溶接」の技術が欠かせません。自動車やオートバイなどのボディは、複数の薄い金属板を合わせてできますが、これらを接続するのにナット溶接が用いられます。

金属板を接続する方法には、タップ穴と呼ばれるネジ穴を開ける方法もあります。しかし、薄板の場合、寸法によってはタップ加工ができたとしても必要最低限のネジ山を確保できなかったり、必要な固定強度を得られないなどの問題が生じるため、タップ穴加工では対応できない場合があり、特に自動車のボディなどでは加工が行うことができません。

一方、ナット溶接は、タップ穴を開ける必要なく、金属板に直接溶接するので、薄板にも加工を施すことができます。

ナット溶接は、専用の機械を用いて、短時間で金属板にナットを取り付けることができます。以下の動画では、ナット溶接の様子をご覧いただけます。

板金を接続する加工方法はさまざまで、ナット溶接や上述したタップ穴を開ける方法以外にも、スポット溶接などが代表的な例として挙げられます。しかし、スポット溶接では、板金同士を直接溶接してしまうため、一度溶接してしまうと完全に固定されてしまうため、分解できなくなります。

一方、ナット溶接では、取り付け後もナットを介して間接的に板金が接続されているため、取り外しも簡単に行うことができます。

参考:【スポット溶接】メリット・デメリットや他の溶接との違いを専門家が解説!

Mitsuriでは、ナット溶接加工に対応している多数のメーカーと提携しています。ぜひお気軽にお問い合わせください。

ナット溶接で用いるウェルドナット(溶接ナット)

ナット溶接で用いるナットのことを、溶接ナット、もしくはウェルドナットと言います。

なお、ウェルド(Weld)とは英語で溶接を意味する言葉です。これらウェルドナットには、角の数や形が異なる複数の種類があり、それぞれ異なる特徴を持ちます。取り付ける金属板のサイズや板厚に応じて、適切なナットを選定することが重要となります。

ウェルドナット(溶接ナット)の種類

ウェルドナットは、主に「六角ウェルドナット」、「四角ウェルドナット」、「T型ウェルドナット」の3種類がよく利用されています。それでは、それぞれの特徴について見ていきましょう。

①六角ウェルドナット

引用元:株式会社ミスミグループ本社

六角ウェルドナットは、六角溶接ナットとも呼ばれ、上図のように、角が6つあるナットを指します。

<六角ウェルドナットの溶接>

引用元:株式会社木附製作所

六角ウェルドナットには、上図(左上写真)に示しましたが、「パイロット」と呼ばれる、中心部の突起を有するタイプのものがあります。

パイロットは、ウェルドナットを取り付ける際の位置決めをガイドする役割があります。板金にあらかじめ開けておいた下穴(上図右上の写真を参照)に合わせることで、溶接する前に位置決めを行うことができます。

また、上図(左上写真)から分かる通り、六角ウェルドナットには、3箇所の突起部分を有するタイプが存在します。この突起は、溶接突起物と呼ばれており、この3点を板金に溶接することで、ウェルドナットの取り付けを行います。この突起があるタイプのウェルドナットは、スポット溶接やプロジェクション溶接などの溶接方法を用いる際に使用されます。この突起部分にのみ電流を流すことで、ナットのねじ山部分の熱によるひずみの発生を抑える効果があります。

また、この突起部分のないウェルドナットでは、アーク溶接などの溶接方法が利用されます。

なお、六角ウェルドナットでは、3点での溶接となるため、ナットの板金への固定強度が他のウェルドナットに劣ると言われています。

参考:プロジェクション溶接のメリット・デメリットを他の溶接手法と比較しながら解説します!

②四角ウェルドナット

引用元:株式会社ミスミグループ本社

四角ウェルドナットは、四角溶接ナットとも呼ばれ、上図のように、角が4つあるナットを指します。

<四角ウェルドナットの溶接>

引用元:大阪フォーミング株式会社

四角ウェルドナットにも、六角ウェルドナット同様、溶接時にナットの位置決めをガイドのする役目を持つパイロットがついているものがあります。また、四角ウェルドナットには、この4つの角全てに突起部分(溶接突起物)があります。もちろん、六角ウェルドナット同様、突起部分がないものもあります。

四角ウェルドナットでは、上図に示したように、全4箇所を板金に溶接することで、ウェルドナットを取り付けます。前述した通り、六角ウェルドナットでは3点での固定でしたが、四角ウェルドナットでは4点での固定となるため、より固定強度に優れています。

③T型ウェルドナット

引用元:株式会社ミスミグループ本社

T型ウェルドナットは、T型溶接ナットとも呼ばれ、フランジ(部材からはみ出すように出っ張った部分)がついているウェルドナットです。T型ウェルドナットでは、フランジ部分をアーク溶接することによって板金に固定します。

<T型ウェルドナットの溶接>

引用元:株式会社富士ス-パ-工作所

このフランジがあることで、溶接する面積が広くなります。六角ウェルドナットや四角ウェルドナットでは数カ所の点の溶接でしたが、T型ウェルドナットでは上図のように、線上に溶接することができるため、溶接後のウェルドナットの固定強度が非常に高く、振動などにも強いという特徴を有します。一方で、溶接面積が広い分、作業にはより時間を要し、作業効率性は劣ります。

また、T型ウェルドナットには下図に示しましたが、「ダボ」と呼ばれる突起部分が存在するタイプのものがあります。これは、上述したパイロットと同様、溶接する際のウェルドナットの位置決めに役に立ちます。

<ダボ付きT型ウェルドナット>

引用元:株式会社MonotaRO

以上3種類が代表的なウェルドナットとなりますが、この他にも、「フランジ付き六角ウェルドナット」や「キャップ付きウェルドナット」などが存在します。

<フランジ付き六角ウェルドナット>

引用元:株式会社新城製作所

フランジ付き六角ウェルドナットは、上図のように、フランジがつくことでより安定性に優れます。そのため、より高いねじ強度が必要な箇所などに使用されます。

<キャップ付きウェルドナット>

引用元:株式会社新城製作所

また、キャップ付きウェルドナットは、上図のようにキャップがついているウェルドナットです。ウェルドナットを溶接後に、誤って長いボルトを使用してしまった場合でも、奥にある板金やその他基盤などを傷つけるのを防ぐ目的で使用されています。

Mitsuriでは、さまざまな種類の溶接ナットの加工に対応している多数のメーカーと提携しています。ぜひお気軽にお問い合わせください。

まとめ

本記事では、ナット溶接をテーマに、その基本的な知識に加えて、ウェルドナットと呼ばれる、ナット溶接で用いられるナットの種類などについて詳しく解説いたしましたが、いかがでしたでしょうか。ウェルドナットの形状はさまざまで、それぞれ異なる特徴を有します。そのため、溶接する板金の種類や、必要な強度などを事前に十分に考慮した上で、それぞれの用途に最適な形状のウェルドナットを選定することが、非常に重要となってきます。

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