プロジェクション溶接のメリット・デメリットを他の溶接手法と比較しながら解説します!

溶接 | 2020年09月23日

引用元:有限会社 昌栄

一言に溶接といっても、種類や方法は様々です。

大きく分けると、金属を溶かして接合させる「融接」、熱と圧力を加えることで接合させる「圧接」、はんだ付けのように溶けやすい金属を使用する「ろう接」の3つがあります。そして、そのなかでも種類や方法は細かく分かれます。

今回は、熱と圧力の力で溶接する「圧接」に分類される「プロジェクション溶接」について、分かりやすく解説していきます。

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プロジェクション溶接とは

「プロジェクション」とは突起という意味です。溶接したい金属部材の一方にプロジェクション(突起)を作り、加圧しながら集中して電流を流します。金属の抵抗発熱によりプロジェクションが溶けることで部材同士を溶接します。

プロジェクション溶接には大きく分けて「エンボスプロジェクション」と「ソリッドプロジェクション」の2種類があります。それでは、この2種類について簡単に説明していきます。


エンボスプロジェクション

「エンボスプロジェクション」は、平板にプレス加工などで突起部を作り、そこに電流を集中させて溶接を行います。溶接点を何か所も作ることが出来るため、同時に多数の溶接をすることが可能です。また、溶接時には突起部を溶かすため、スポット溶接と同じようにナゲット(くぼみとくぼみの間の溶けた金属部)が出来ます。

引用元:溶接革命


ソリッドプロジェクション

「ソリッドプロジェクション」は、板の角や丸棒の交差などの初めからある突起を利用して溶接を行います。エンボスプロジェクションでは突起部の間が空洞なのに対し、ソリッドプロジェクションでは空洞がありません。また、加圧や給電する部位は溶接点から距離があります。

引用元:溶接革命


スポット溶接との違い

プロジェクション溶接は、圧接の中の「抵抗溶接」に分類される溶接方法です。抵抗溶接とは、金属部材に電極を当て加圧しつつ、数十アンペア~数万アンペアの電流を流すことで、金属の抵抗発熱(電気ポットや電気こたつなどに用いられ、金属の抵抗により強い熱が発生する)を利用して溶接する方法です。

スポット溶接とプロジェクション溶接は同じ抵抗溶接という点で、類似点が多くあります。どちらも加圧・通電により溶接を行いますが、突起部を溶接するプロジェクション溶接とは違い、スポット溶接では平面の金属に電極を当て加圧・通電を行います。



プロジェクション溶接機について

プロジェクション溶接機は、コンデンサ式とインバータ式が主流です。

コンデンサ式プロジェクション溶接機

引用元:三郷金属工業株式会社

コンデンサ式は交流式抵抗溶接機で、短時間で溶接でき、非金属にも対応できます。

コンデンサ式は、コンデンサに充電することで、大電流を放電することができます。

そのため入力電源の容量が小さくても、大電流を電極に通電させることができ、難溶材である熱伝導の良いアルミや銅などへ安定した溶接ができるのです。加えて、電源設備の容量も比較的低く抑えられるところも良い点です。

しかし、コンデンサ式は電流の立ち上がりが急速で傾斜角を制御できないため、時間制御ができず、打点速度にも制限があり、外部回路が電源波形に影響するため、自動化することは難しいです。加圧力も大きくしないと溶融した鋼が飛散するスプラッシュが発生しやすくなります。


インバータ式プロジェクション溶接機

インバータ式は、電力効率も高く溶接条件範囲が広域に取れるため、品質の高い溶接が可能です。また、溶接金属の飛散(散り)や飛散した金属がワークにつくスパッタも抑えられるため、きれいな作業環境に改善することができます。三相入力による電源で、負荷バランスもとりやすくなっています。

インバータ式プロジェクション溶接機には、直流と交流があります。

●直流インバータ式

交流式と違い直流は電流の休止時間がないため、母材に効率よく連続して電流を流し、熱を供給できます。熱効率が良いため溶接が短時間ででき、熱による歪みの影響も抑えられます。トランスが小型のタイプは、自動機に搭載することが可能です。

●交流インバータ式

交流インバータ式は、リード線の切断部のほころび防止やモーターコイルと端子を溶接するための熱かしめ(ヒュージング)に最適です。

交流インバータ式は交流なので、直流で起きやすいペルチェ効果現象が少なくなります。

ペルチェ効果とは、異なる金属を重ねて電流を流すと、金属面に熱の移動が発生する現象のことです。金属面に熱の移動が起きると、一方は発熱し、もう一方は吸熱します。

金属の溶接は、発熱する側は溶着しやすくなり、吸熱側は溶着しにくくなるのです。

直流の場合、電極の一方で発熱し他方が吸熱するため、発熱側を放熱して温度を下げ融点のバランスをとらないと、品質の高い溶接ができません。しかし、交流の場合は極性が反転するため、発熱と吸熱も反転して起こりペルチェ効果が相殺され、放熱などをしなくても品質の良い溶接ができます。

また、交流用の溶接トランスが使用できるため、わざわざ直流に変換する工数も省けます。

参考記事

スポット溶接の詳細は下記の記事にて詳しく解説しているので、ぜひご覧ください。

スポット溶接とは【専門家が解説】 他の溶接との違いをわかりやすく お伝えします!


スポット溶接では、電極の加圧力や通電する時間、電流の組み合わせなど、条件の設定は比較的自由です。しかし、プロジェクション溶接では条件設定の自由度は低くなります。例としては、電極の加圧力を極端に高くすると低い温度でプロジェクション部に圧力がかかり潰れてしまいます。すると、通電する部分が拡大し、熱が集中せずに温度が維持出来ません。また、電流が大きすぎると、温度の上がるスピードが速くなるため、溶接する部分が飛散してしまいます。これでは通電する時間を短縮しても正常な溶接が出来ません。

プロジェクション溶接は、スポット溶接と比較して条件の設定は難しいですが、その分圧力と熱を集中出来るので少ない力での溶接が可能です。また、小さな部品でも治具電極などの設備の設定をすれば溶接が可能になる精密さも持ち合わせています。



プロジェクション溶接の特徴

引用元:有限会社 こだま製作所

部材や仕上がりなどの条件によって溶接方法には向き・不向きがあります。プロジェクション溶接のメリット・デメリットについて簡単に見ていきましょう。


メリット

  • ・アーク溶接のようにスパッタ(溶接時に発生する金属の粒)や有害な紫外線が発生しない。
  • ・作業工程を自動化しやすく機械的な作業のため、アーク溶接やガス溶接のように作業者の技術の熟練度が必要ない。
  • ・短時間で効率的に溶接することが可能で、加工のコストが安価で大量に生産が出来る。
  • ・熱による変形などの影響が出ないため、仕上がりが美しい。

デメリット

  • ・溶接する部分が多くなると溶接装置が大型になる。
  • ・一度に多数のプロジェクションを溶接する際に、高さを綿密に揃え平行に設定しなければならない。
  • ・溶接機が高価
  • ・溶接材へプロジェクション加工や治具電極製作が必要になるので少量生産には向いていない。
  • ・溶接部品の位置決めに治具電極製作を用いるため、設計能力が必要。



プロジェクション溶接の製品事例

金属部材を大量に溶接する際には、スポット溶接よりプロジェクション溶接が向いています。複雑な形状でも精密な溶接が可能で加工が難しい部材にも対応が可能です。また、位置決めや治具電極製作をすれば工程を減らすことも出来るため、極めて効率の良い溶接が可能です。それでは、具体的な製品事例を見ていきましょう。


「エンボスプロジェクション」の製品事例

エンボスプロジェクションは、主にオイルフィルタやガソリンタンクのレインフォースなどで用いられます。

引用元:有限会社 こだま製作所

上の写真のような小さな部品を溶接で組み立てる際には、精密さが要求されます。溶接する位置や範囲、圧力、電流などが多すぎると歪みの発生や、外観が損なわれる原因となります。そこで、あらかじめ部品にプレス加工でプロジェクションを作ることで、溶接部を最小限に抑えます。それにより小さな部品でも歪みや変色などの熱影響が少なく、外観の美しさや強度を持った溶接が可能になります。


「ソリッドプロジェクション」の製品事例

ソリッドプロジェクションはナットやボルトの溶接のほか、スタビライザやブレーキドラムなどにもよく用いられます。

引用元:有限会社 こだま製作所

従来、上の写真のような部材は金属棒から切削加工で成型していました。しかし、量産性を上げる必要が出たため、部品を丸板とネジに分け、ソリッドプロジェクションにより2つを溶接する事で、量産性を格段に上げることに成功しました。また、初期費用はかかりますが、結果的にコストを下げることにも成功しました。



まとめ

突起部に加圧しつつ電流を流すことで効率よく精密な溶接が可能なプロジェクション溶接をご紹介しました。技術の熟練が必要ないプロジェクション溶接は、治具電極などを作ってしまえば工程を自動化出来るため誰にでも簡単に溶接することが可能です。また機械自体は高価ですが、加工には手間がかからないため加工コストは安価です。

一度に多くの溶接をする必要があるけれど、設備や設定が難しい・・・

そんな方は、ぜひMitsuriにご相談ください!

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Mitsuri編集部
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