SUS347は、ニオブを添加することで高温環境下における耐食性を向上させた、安定化ステンレス鋼と呼ばれるステンレス鋼の一つです。熱処理や溶接などによって生じる粒界腐食が発生しにくいことから、主に高温環境下で用いられています。SUS347の比重は、7.98です。
オーステナイト系ステンレス鋼の一種で、その代表鋼種であるSUS304に比べ、強度には優れますが、延性には劣ります。それに伴い、SUS304よりも加工性が低下しています。
しかし、ステンレス鋼で問題となる粒界腐食が発生しにくいことから、溶接が必要となる製品に採用されています。また、高温強度やクリープ強度にも優れており、応力腐食割れに対する耐性も高い素材です。そのため、高温かつ高負荷といった過酷な環境下で用いられることが多くなっています。
参考:【SUS(ステンレス)種類と見分け方】用途・特徴を専門家が徹底解説!
SUS347の化学成分
鋼種名 | C(%) | Si(%) | Mn(%) | P(%) | S(%) | Ni(%) | Cr(%) | Nb(%) |
SUS347 | 0.08 以下 | 1.00 以下 | 2.00 以下 | 0.045 以下 | 0.030 以下 | 9.00〜 13.00 | 17.00〜 19.00 | 10×C% 以上 |
SUS304 | 0.08 以下 | 1.00 以下 | 2.00 以下 | 0.045 以下 | 0.030 以下 | 8.00〜 10.50 | 18.00〜 20.00 | − |
SUS347の化学成分は、JIS規格(JIS G 4305:2012)によって上表のように定められています。SUS304の化学成分も比較のために併せて記載しています。
SUS347は、ニオブ(Nb)の含有率を炭素(C)の含有率の10倍以上にすることで、粒界腐食が発生しないように設計されたステンレス鋼です。
ステンレス鋼は、クロム(Cr)を含むことで高い耐食性を実現している合金です。しかし、550~900℃程度に加熱されると、その冷却過程でクロムと炭素が結合して、粒界(金属組織の境界)でクロム炭化物を析出します。粒界隣接部では、クロムが欠乏して腐食が生じやすくなります。
粒界腐食の対策としては、炭素量を減少させたり、炭素と結合しやすいチタンやニオブを添加したりすることが有効です。SUS304を基準に、炭素量を減少させたのがSUS304L、チタンを添加したのがSUS321、そしてニオブを添加したのがSUS347です。
SUS347の機械的性質
鋼種名 | 耐力 | 引張強さ | 伸び | 絞り | 硬さ | ||
HBW | HRBS又はHRBW | HV | |||||
SUS347 | 205 以上 | 520 以上 | 40 以上 | 50 以上 | 187 以下 | 90 以下 | 200 以下 |
SUS304 | 205 以上 | 520 以上 | 40 以上 | 60 以上 | 187 以下 | 90 以下 | 200 以下 |
SUS347の機械的性質は、JIS規格(JIS G 4303:2012)によって上表の値を満たすものと規定されています。比較のため、SUS304の機械的性質も併せて載せています。
SUS347の機械的性質は、SUS304と大きな違いはありません。しかし、ニオブの含有量が多いほど、引張強さや硬さが増加して、延性が低下する傾向があります。そのため、SUS304と比べて絞り率が10%低くなっています。
SUS347の用途
SUS347は、高温環境下で用いられる部品や溶接後にそのまま使用される製品などによく使われているステンレス鋼です。熱交換器や排熱管、蒸発器などが代表的な用途で、火力発電所で用いられる機器の材料として採用されていることもあります。850℃までの高温環境で使用できるとされています。
しかし、高温に長時間さらされると、鉄とニオブが結合した、硬くて脆い「Laves相」が析出します。Laves相の増大によって、疲労強度の低下や亀裂の発生・成長の原因となることがあります。
SUS347の加工性
SUS304と比較すると、SUS347は、加工性に劣り、溶接性に優れます。
SUS347では、ニオブの添加によって引張強さと硬度が増大して延性が低下しています。そのため、削りにくく、曲げにくくなりますので、切削加工も板金加工もSUS304と比べて困難になります。
一方、粒界腐食が発生しにくいため、溶接による欠陥が起きにくく、溶接部の強度も安定化しやすい材料です。