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SUS321(ステンレス鋼)組成、成分、機械的性質

2024-09-18

更新

この記事を監修した人

染谷 ひとみ

Mitsuri Media管理人

精密板金加工工場のインサイドセールスとして加工と寸法の提案をしてきた経験を経て、製造業の知見と楽しさを提供している。 幼少期からモノの構造を理解するのが好き。JAPAN MENSA会員。

SUS321は、オーステナイト系のステンレス鋼の中で最も代表的な材質であるSUS304をベースに、チタン(Ti)を添加して溶接部の耐食性を改善し、高温強度を上昇させたステンレス鋼です。

SUS321の用途

SUS321は、腐食が進行しやすい高温下で使用される部品や、高温用溶接構造品に用いられます。

SUS321の化学成分、組成

<SUS321及びSUS304の成分、組成(単位:%)>

材料記号 C Si Mn P S Ni Cr Mo Cu N その他
SUS321 0.08以下 1.00以下 2.00以下 0.045以下 0.030以下 9.00~13.00 17.00~19.00 - - - Ti: 5×C%以上
SUS304 0.08以下 1.00以下 2.00以下 0.045以下 0.030以下 8.00~10.50 18.00~20.00 - - - -

SUS321の化学成分を上表に示しました。SUS304との成分上の最大の違いは、Ti(チタン)の有無です。SUS321では、上表の通りチタンが炭素(C)量に応じて添加されていますが、SUS304ではチタンは添加されません。チタンは耐粒界腐食性を高める目的で、少量添加されます。

粒界腐食とは、溶接や熱処理などの過程において、ステンレス鋼を高温下で使用することによって発生する局部的な腐食です。約550~900℃程度の温度に加熱された箇所で発生しやすいと言われています。

ステンレス鋼には、不動態皮膜を形成させ、耐食性を向上させる目的で、クロム(Cr)が含有されています。クロムは高温下において炭素と結合し、クロム炭化物を形成しやすいという性質を持っています。クロムは、いったんクロム炭化物として析出すると不動態皮膜を形成できなくなり、結果的にそのステンレス鋼は耐食性が低下し、腐食が進行してしまいます。

チタンは、炭化物安定元素と言われ、炭素と結合しやすい元素です。そのため、チタンをステンレス鋼に添加することでクロム炭化物の析出を抑えることができ、粒界腐食を防げます。炭化物安定元素が添加されたステンレス鋼は、安定化ステンレス鋼とも言われています。

SUS321の機械的性質

<SUS321及びSUS304の機械的性質>

材料記号 耐力
N/mm2
引張強さ
N/mm2
伸び
(%)
硬さ
HBW HRBS又はHRBW HV
SUS321 205以上 520以上 40以上 187以下 90以下 200以下
SUS304 205以上 520以上 40以上 187以下 90以下 200以下

SUS321の機械的特性を上表に示しました。上述した通り、SUS321は、SUS304をベースにチタンを微量添加したステンレス鋼です。そのため、耐力、引張強さ、伸び、硬さの全項目において、SUS304と同等の値となっています。

SUS321の加工性

SUS321は、SUS304同様、溶接性に優れます。特にSUS321は耐粒界腐食性を有するため、溶接部品での使用に適しています。ただし、SUS321の切削性は、チタンが含有されていることから、SUS304より劣ります。

 

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