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SUS329J1(ステンレス鋼)化学成分、磁性、機械的性質

2024-09-18

更新

この記事を監修した人

染谷 ひとみ

Mitsuri Media管理人

精密板金加工工場のインサイドセールスとして加工と寸法の提案をしてきた経験を経て、製造業の知見と楽しさを提供している。 幼少期からモノの構造を理解するのが好き。JAPAN MENSA会員。

SUS329J1は、オーステナイト相とフェライト相の両方の組織を持つ、二相系のステンレス鋼です。二相系ステンレス鋼は、JIS規格では「オーステナイト・フェライト系」と記述されているステンレス鋼に該当します。

SUS329J1は、SUS304のようなオーステナイト系ステンレス鋼と比べて、クロム(Cr)の含有量が多く、ニッケル(Ni)の含有量が少なめです。クロムの含有量が多いため、比較的に耐食性に優れているほか、レアメタルであるニッケルが少ないことから、価格高騰の影響を受けにくい特徴があります。

参考:【SUS(ステンレス)種類と見分け方】用途・特徴を専門家が徹底解説!

SUS329J1の特性、磁性

SUS329J1は、優れた耐食性(耐孔食性と耐応力腐食割れ性)を持つのが特徴です。オーステナイト系に加えてフェライト系の組織を持つため、磁性があります。

SUS329J1は、耐孔食性に強いステンレス鋼であるため、孔食のリスクを軽減できます。この特性により、工業用水や海水を扱う部品や機器などに多く採用されています。

参考:応力腐食割れをわかりやすく!3要素と対策方法

孔食とは、孔が開いたかのように、深い箇所まで腐食することをいいます。孔食の原因は、サビを防ぐための不働態皮膜が、塩素イオンなどの作用により局部的に破壊されてしまうためです。一般的にステンレス鋼が形成する不働態皮膜は、傷がついても再び形成されますが、孔食は連続的に発生し、深くまで腐食してしまいます。

また、SUS329J1は、強度にも優れたステンレス鋼です。オーステナイト系ステンレス鋼の代表であるSUS304に比べて、2倍近い耐力があり、引張強度もやや高めです。

SUS329J1は、耐食性と強度に優れているだけでなく、高価な材料であるニッケルの含有量も少ないため、価格高騰の影響を受けにくい材料です。加えて、強度で肉厚が決まる構造体の場合は、肉厚を薄くできる分、材料のコストを削減できます。

SUS329J1の用途

SUS329J1は、工業用水や海水に強い材料であることから、主に海水用ポンプシャフト・水門・排煙脱硫装置などの用途として使われています。

SUS329J1の化学成分

<SUS329J1の化学成分(単位:%)>

種類の記号 C Si Mn P S Ni Cr Mo N
SUS329J1 0.08以下 1.00以下 1.50以下 0.040以下 0.030以下 3.00~6.00 23.00~28.00 1.00~3.00 -

※この表に規定されていないCu、W及びNのうち一つ又は複数の元素を必要によって添加した場合、その含有率を報告しなければならない。

引用元:JIS G 4303:2012

上表は、JIS規格の【ステンレス鋼棒 JIS G 4303】から抜粋したものです。

SUS329J1は、SUS304と比べてクロム(Cr)の含有量が多く、モリブデン(Mo)も含有していることから、不働態皮膜を形成しやすい特徴があります。

SUS329J1の機械的性質

<SUS329J1の固溶化熱処理状態の機械的性質>

種類の記号 耐力 MPa (N/mm2) 引張強さ MPa (N/mm2) 伸び 絞り 硬さ
HBW HRC HV
SUS329J1 390以上 590以上 18以上 40以上 277以下 29以下 292以下

引用元:JIS G 4303:2012

SUS329J1は、強度にも優れたステンレス鋼です。

SUS304の耐力は205MPa以上、引張強さは520MPa以上であるのに対し、SUS329J1の耐力は390MPa以上、引張強さは590MPa以上と高い数値を示しています。

伸びに関してはフェライト系ステンレス鋼と同等の数値になりますが、靭性や溶接性はフェライト系よりも優れている特徴があります。

 

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