志民 直人
技術営業、カスタマーサクセス
切削加工歴29年の1級機械加工技能士(精密器具製作/フライス盤/数値制御フライス盤)。金型・部品加工経験を持ち、CAD・CAMや各種工作機械に精通。設計からカスタマーサービスまで幅広く対応。製造現場改善や治具設計も得意。趣味は日曜大工、ゲーム。
S55Cは、JIS規格で規定されている【JIS G 4051:機械構造用炭素鋼鋼材】の高炭素鋼です。
S45CやS55Cなどの炭素鋼は「SC材」とも呼ばれる材料で、SS材の強度を基準としたものとは違い、成分を基準に規定されています。S〇〇Cのなかに入る数字は、炭素の含有量を示しており、例えばS55Cでは、0.55%前後の炭素を含むという意味を持ちます。
炭素の含有量が多いほど、鋼材の硬度は高くなりますが、一方で靭性は損なわれる傾向にあります。S55Cは炭素の含有量が多い鋼材であるため、硬度が必要なときに採用されています。
S55Cの比重はおよそ7.9です。
S55Cは高炭素鋼の鋼材であるため硬度が高く、優れた耐摩耗性を有しています。基本的にS55Cは、軸材や工具材などのほとんどの用途で熱処理(焼入れ・焼き戻し・調質)をして使用されています。強度を必要とする部品などに適していますが、その一方で靭性は低い材料です。
用途としては、回転式機械の回転軸・ボルト・自動車部品・ニッパーやペンチといった工具類などに使われています。
<S55Cの化学成分(単位:%)>
*1)Crは受渡当事者間の協定によって0.30%未満としてもよい。
*2)Ni+Crは受渡当事者間の協定によって0.45%未満としてもよい。
引用元:JIS G 4051:2016
S55Cに含まれる炭素(C)・ケイ素(Si)・マンガン(Mn)の化学成分については、含有量の範囲が定められており、その他の化学成分については上限値が設定されています。
S55CはS45Cよりも炭素量(C)が多く、優れた耐摩耗性を必要とする場合に採用されます。一方でS45Cは炭素量がS55Cよりも少ないため、耐摩耗性にやや劣りますが、加工性は良好です。
硬さを重視したい場合はS55Cを、加工性と耐摩耗性を両立したい場合はS45Cを選ぶなど、硬さと加工性のバランスを見て材料を選定する必要があります。
参考:SS400とS45Cの違いを徹底解説【専門家が語る】製品による使い分け
<S55Cの機械的性質(降伏点・引張強さ・伸び・絞り・衝撃値・硬さ)>
引用元:旧規格JIS G 4051:2009より抜粋
2021年2月現在の最新規格【JIS G 4051:2016 機械構造用炭素鋼鋼材】には、機械的性質は記述されておりません。よって、旧規格にて記述されていた内容を抜粋しております。
<S55Cの熱処理温度(焼ならし・焼なまし・焼入れ・焼戻し)>
引用元:大阪フォーミング株式会社
S55Cは硬さのある鋼材ですが、切削・研削ともに加工はできます。しかし炭素量が多いので、溶接には不向きです。S55Cのような高炭素鋼は、焼入れ性が高い分、熱影響部が著しく硬化するため、溶接割れが発生しやすい傾向にあります。
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