染谷 ひとみ
Mitsuri Media管理人
精密板金加工工場のインサイドセールスとして加工と寸法の提案をしてきた経験を経て、製造業の知見と楽しさを提供している。 幼少期からモノの構造を理解するのが好き。JAPAN MENSA会員。
「初めてステンレス加工をお願いするのに、見積りの目安がわからない・・・」
「ステンレス加工の具体的な価格設定について知っておきたい」
このようなステンレス加工に関するお悩みをお持ちではありませんか?
ステンレスはさまざまな場面で活用される一般的な金属素材のひとつであり、ステンレスの加工を得意とする企業や製作所は多数存在しています。いざ加工を依頼する際、具体的な価格の決め方や見積りの目安を知っておくと、スムーズな取り引きにつながります。
この記事では、ステンレス加工の価格設定について解説していきます。今後、ステンレス加工の依頼を検討している場合や、ステンレス加工の金額を知りたい方はぜひ最後まで読んでみてください。
ステンレスは「さびない」という意味の言葉に由来する材質で、ステンレス鋼あるいはステンレススチールなどと呼ばれます。耐食性が高く、さびにくい性質から、産業機械から日常生活まで幅広い場面で多用されている金属のひとつです。
通常、ステンレスはクロム、ニッケルを含む合金鋼で、さまざまな種類が存在しますが、代表的なものに次の3タイプがあります。
●マルテンサイト系:マルテンサイト(硬度が高くもろい性質を持つ鉄鋼材料組織)の組成を持ち、刃物・ブレードの部品などに使われる
●フェライト系:フェライト(酸化鉄にマンガン、ニッケル、亜鉛などを配合して焼結した磁性材料)の組成を持ち、厨房用品や自動車部品などに採用されている
●オーステナイト系:常温でオーステナイト(鉄に炭素や合金元素などの他の元素が固溶したもの)の組成を持ち、他のステンレスより耐食性が高く、温度差が激しい環境でも強度低下が少ない性質、家庭用品から原子力発電まで幅広く使用されている
上記3タイプからさらに細かく分類され、多くの種類のステンレスが存在します。加工を依頼する際には、素材の特徴を踏まえた上で、適切なステンレス材を選ぶ必要があります。
ステンレス材といってもさまざまな種類に分かれ、価格は母材の種類によって変わります。予算や用途に応じて最適な母材をチョイスするために、母材単価は重要な要素です。代表的なステンレス材の種類について説明していきます。
ステンレス材の中でも代表的な「SUS403」はマルテンサイト系のステンレスで、13クロム系とも呼ばれます。炭素の含有量が多く、焼入れを行うことで高い強度を得られます。耐熱性や耐食性が高く、タービンブレードやポンプなど高応力部品に採用されています。
「SUS430」はフェライト系ステンレスの一種で、高い耐久性と耐食性を備えており、軽量な点が特徴です。価格は比較的安めでコスパが良く、食器などの水回りの製品から電車の外装まで幅広く使用されています。
オーステナイト系ステンレスの代表格である「SUS304」は、主要成分に対して18%のクロムと8%のニッケルを含む「18クロム−8ニッケル」と呼ばれる成分構成です。高価な素材であるニッケルを含んでいる分、価格は比較的高めになります。腐食やさびへの高い耐性を備えており、複雑な加工も可能です。
参考記事
ステンレス板の種類に関しては次の記事でも詳しく解説していますので、併せてご覧ください。
⇒ステンレス板の種類と板厚一覧!必要なステンレス板がすぐ見つかります!
母材の種類を決定したら、加工単価が上乗せされます。加工が複雑になるほど価格は高くなるので、加工方法や手順を考えて依頼する必要があります。よく使用されるステンレス加工方法に関して説明していきます。
ステンレスは伸びが良く、引っ張りの強さもあるため、他の素材よりも大きな加工圧を必要とします。また、曲げ荷重を加えた後に、変形が若干元に戻るスプリングバックという状態が出やすいため、加工を行う際はあらかじめスプリングバックを見込んでおきます。
あくまでも例になりますが、ステンレス平板に対する曲げ加工の単価例は、100mm×100mmのサイズで700〜1,800円(1ヶ所あたり)ほどです。
ステンレスは粘性が比較的高いため、切断加工では加工者の技術が必要とされます。近年は、効率的に高精度な加工を行えるレーザー切断機を使用することが多くなっています。
ステンレス材の切断加工の単価例は、大きさ100mm×100mm程度で300〜900円(1ヶ所あたり)ほどが平均です。
ステンレス材の種類によって溶接時の特徴が異なるため、ステンレスの溶接加工は難易度が高いといわれます。薄いステンレス板を溶接する場合、TIG溶接(溶接する材料との間に高温のアークを発生させ、熱で材料を溶かして接合する)でも仕上げることが可能です。中厚以上の厚みのステンレス板は、豊富な経験を持つステンレス鋼溶接技術者などに最適な溶接を依頼する必要があります。
ステンレス材への溶接加工の単価例は、加工の長さ約1mあたり200〜400円(1ヶ所あたり)ほどとされています。
切削加工は、旋盤やフライス盤などを使って、素材を削り出す加工方法で、大きく分けて工作物を固定して工具を回す転削と、工作物を回転させる旋削があります。
熱伝導率が低い性質を持つステンレスの切削加工では、発生する熱が工具に集中し、工具の寿命が短くなりやすい上、加工精度が確保しにくいとされています。ステンレスの切削加工の経験が豊富な技術者や業者に施工を依頼する必要があるでしょう。
なお、切削加工は作る形状の複雑さによって加工賃が異なり、サイズだけでは正確な費用の算出ができないため、あくまで参考価格となりますが、ステンレス材の切削加工の平均単価は以下の通りです。
外から圧力を加えてものを加工する方法がプレス加工です。加工用金型をマシンにセットして、ステンレス板を希望の形状に変形させていくやり方が一般的で、せん断加工や曲げ加工が含まれます。
せん断加工のうち穴あけの単価例は、丸穴が200〜400円(1個あたり)、角穴が200〜1,200円(1個あたり)です。
プレス加工は金型が必要になるため初期投資が高い傾向にありますが、一度金型を製作してしまえば精度よく大量に同じ形状を加工できるため量産向きです。試作等の少量生産時は切削加工、レーザー切断等をしている製品でも発注数量が増えた段階でプレス加工に変更、という場合もよくあります。そのため、今から製作しようとしているものをどのくらいの量生産するのかという点も、見積りを決定するには重要な要素となります。
参考記事
ステンレス加工全般については、下記記事でも詳しくまとめていますのでご参照ください。
ステンレスは母材を加工した後、研磨加工などの表面処理を行います。表面処理の種類は、見た目の印象やデザインだけではなく、機能面も重視して決定されます。
ステンレスの場合、つや消しの「No.1」、やや光沢のあるつるっとした「2B」などが一般的で、鏡面仕上げなどはより高額になります。鏡面仕上げは、ステンレスの種類などによって作業手順や使う研磨剤を変える必要があり、比較的難易度の高い加工方法です。ステンレス材の鏡面仕上げの単価例を紹介します。
以上の費用に加えて、時間あたりの金属加工費であるチャージ料が発生します。チャージ料は、基本的に原価ベースの「原価チャージ」と、見積り価格に反映される「売値チャージ」があり、売値チャージが一般的です。切削加工など比較的シンプルな加工のみだと、1時間4,000〜5,000円ほどが平均ですが、加工の難易度が高い場合や複雑な加工では1万円前後になることもあります。
また、加工した工作物を郵送してもらうには、別途送料も必要で配送料については、配送会社や速達などの種類によって異なりますので、加工を依頼する前に確認しておきましょう。
ステンレス加工の見積りに必要となる価格について紹介してきました。ステンレス加工時の見積りについて、具体的なイメージが得られたのではないでしょうか。基本的には、ステンレスの材質や加工方法、仕上げの表面処理、チャージ費用までを含めて見積り金額が算出されますが、ここで紹介した価格はあくまで一例です。実際は、メーカーごとに金額が異なりますし、同じ加工をまとめて行う場合は発注数量によっては割引されることもあります。設計がある程度完成したら、まずは見積りを取ってみましょう。
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