染谷 ひとみ
Mitsuri Media管理人
精密板金加工工場のインサイドセールスとして加工と寸法の提案をしてきた経験を経て、製造業の知見と楽しさを提供している。 幼少期からモノの構造を理解するのが好き。JAPAN MENSA会員。
ステンレス板には、多種多様な種類があります。使用用途によって適切なステンレス板の種類を選ぶ必要があり、仕上がりもそれぞれの種類で大きく違いますので、事前に確認しておくべき事項が多くあります。
ステンレス板の仕上がりは千差万別で、鏡のようにぴかぴかとした美しい加工がなされたステンレス板から、水場でも滑らないように滑り止め加工が施されたステンレス板など、様々な用途にステンレス板は対応できます。
この記事ではステンレス板で一番メジャーなSUS304を例とし、表面の概要から特徴まで解説しています。ステンレス板の理解を深める参考にしていただけるとうれしいです。
板金加工のステンレスでは、鏡のようなぴかぴかとした美しい仕上がりのステンレス板から、なめらかな光沢を持ったステンレス板など種類は様々です。
ステンレス板の中では一番メジャーなSUS304を例に紹介していきます。
用途によって適切なステンレス板を分けます。それぞれのステンレス板の特徴
それぞれのステンレス板は、用途も違えば成分も違います。それぞれのステンレス板の特徴を解説していきますので、調達を考えているステンレス板の詳細をチェックし、適切な種類と板厚であるかどうか確認しておきましょう。
以下は、板金加工で使われるステンレス板の種類と主な板厚を一覧にまとめた表です。
「SUS304-2B」は「SUS304」というステンレスの、表面が「2B」の物をさしています。
SUS304はオーステナイト系ステンレス鋼の一種で、板金加工の材料としてよく使われる種類です。ステンレスの中では最も流通量のある材料です。ステンレスの原料(鉄やクロム、ニッケルなど)となる液体を鋳型に流し込んで固め、冷ましてから延ばす冷間圧延加工でできあがります。仕上がりが光沢のある状態となるため「2B」とあらわされます。
なめらかで光沢のある仕上がりとなり、そのまま加工せずに使うこともできます。帯鋼(冷間圧延を行った板状に加工された鉄鋼)全般にいえることですが、巻き癖がついていますので、加工前に巻き癖をとる必要があります。
冷間圧延加工の特性により、6mmより厚いものは流通していません。
0.3/0.4/0.5/0.6/0.8/1.0/1.2/1.5/2.0/2.5/3.0/4.0/5.0/6.0
対して、SUS304-No.1は表面が少しザラザラしており、光沢はありません。色は白に近いグレーです。熱間圧延加工をした後に焼鈍、酸洗と手順を踏んでできあがります。
他の材料と違って、外観を重視する場所では、塗装を施さない状態で使われることはほぼありません。大抵は機械内部の部品など外側からは目立たない場所で使用されています。
「SUS304-NO.1」は板厚が厚いものに対応しています。
熱間圧延加工の特性により、3mmより薄いものは流通していません。
3.0/4.0/5.0/6.0/7.0/8.0/9.0/10.0/12.0/14.0/15.0/16.0
「SUS304 HL(ヘアライン)」は、素材に研磨ベルトで一定方向に連続した研磨目を持たせた仕上げの板です。髪の毛のような連続した研磨目が特徴で建材の中でも最も一般的に使われています。
2Bの素材、NO.1の素材どちらからも研磨することができますが、一般的には表面の粗さが少ない2Bから加工されます。
光沢をなくし、ツヤ消しを行うことで落ち着いた雰囲気を持たせていますので、美観を求める場合はSUS304-HLのステンレス板をおすすめします。SUS304-#400よりも比較的安価に研磨可能である点も特徴です。
主な板厚は3mmまでになりますが、板状になったSUS304の材料を後で研磨するので、板厚に制限はありません。
板厚が4mm以上の材料にヘアライン加工をする場合は、板を調達する時点で在庫の2B材にヘアライン研磨をかけます。3mm以下の材料よりも1~3日程納期がかかることがあります。
0.5/0.6/0.8/1.0/1.2/1.5/2.0/3.0
「SUS304 #400」は、P400番バフによって研磨仕上げしたステンレス板で渋い光沢を持ち、鏡面に近い光沢と若干のすじが見られるのが特徴です。
#400では若干の筋が残ってしまうので、鏡面とまではいきません。鏡面の材料で加工をしてほしい場合は、「#800 バフ目なし」「鏡面」など指定しましょう。バフ目とは、#400で残ってしまう若干のすじのことです。
美しく見栄えがよいため、装飾品や建材、厨房用品や医療用ワゴンなど広く使われています。SUS304-HL同様、美観を求められる際におすすめです。
主な板厚は3mmまでになりますが、板状になったSUS304の材料を後で研磨するので、板厚に制限はありません。
板厚が4mm以上の材料に#400加工をする場合は、板を調達する時点で在庫の2B材にヘアライン研磨をかけます。3mm以下の材料よりも1~3日程納期がかかることがあります。
0.8/1.0/1.2/1.5/2.0/3.0
「SUS430-2B」は、SUS304と比べると鉄に近い材料です。SUS304と比べて成分に鉄(Fe)が多いので、安価で磁石がつくという特性があります。
ただ、SUS304より少し錆やすい傾向がありますが、ステンレスですので、他の材料よりは錆にくい材料です。マグネットがつくので、厨房の壁や掲示板に使われることもあります。「磁石がつくステンレスがいい」「ステンレスで作りたいけど価格は抑えたい」というような要望に応えられる材料です。
SUS430もSUS304と同様に表面の違いがありますが、製造方法や見た目は基本的にSUS304と同様です。SUS430にもHLや#400はあります。ただNO.1は流通量が多くないので、入手しにくい可能性があります。表面にこだわりがない場合は、基本的に2Bを選びましょう。
主な板厚が3mmまでになります。規格としては4mm、5mm、6mmもありますが、需要があまりないので流通量もそこまで多くありません。試作品や単品注文など、材料をあまり使わない注文の場合は、SUS304を指定した方がかえって安く製作できるケースが多々あります。
0.5/0.8/1.0/1.2/1.5/2.0/2.5/3.0
「SUS304 縞板」は、圧延によって表面に連続した滑り止め用の突起をつけた仕上げが施され、別名「チェッカープレート」とも呼ばれています。
耐食性・耐熱性・耐低温性に優れており、塗料も不要なのでメンテナンスも手間がかかりません。デザイン性には乏しいですがメンテナンス性や安全性はステンレス板の中でも群を抜いて高いものとなっています。
水切れが良いので屋外スロープの床板や階段のステップなどの滑り止めが必要な環境に使われるほか、化学プラントなどの厳しい環境下でも十二分に性能の高さを発揮することができます。
規格のある厚さは主に6種類です。
2.5/3.0/3.5/4.0/4.5/6.0
動画で4分で簡単に解説しています!是非ご覧ください。
こちらは専門用語を使った解説になります。
SUS304はオーステナイト系、SUS430はフェライト系のステンレスです。
オーステナイト系ステンレスは延性および靭性に富み、溶接性に優れています。低温・高温どちらの耐性も優秀です。製品形状は薄板が最も多く、全ステンレス生産量の60%を超えるほどです。
フェライト系ステンレスは熱処理により硬化することがほとんどなく、軟質状態で使用されます。主に薄板や線の形で使用されるのが一般的です。
SUS304とSUS430の違いを、以下の表にまとめました。
SUS304は、SUS430と比べて高価ではあるものの、加工のしやすさや耐熱性・保温効果・強度どれをとってもSUS430に勝ります。SUS430と比べて高機能なので、エレベーターや建築材、階段のステップなどさまざまなシーンで使われるほか、加工のしやすさから複雑な形状の製品にまで幅広く使用されています。
ステンレス板の種類によって使用される用途が変わるほか、素材によっても耐久性や加工のしやすさが変わります。特に表面仕上げは種類によって大きく変わりますので、ステンレス板を使うシーンによって使い分ける必要があります。
事前にどのような環境下でステンレス板を使用するのか、どのような雰囲気を持たせたいのかを明確にした上でステンレス板の種類および板厚を決めると、スムーズに進めていくことができます。
適切な種類のステンレス板をお好みの板厚で製作したい場合、十分な加工の技術が必要になります。品質の高いステンレス板を得るには技術力のあるメーカーに依頼すると良いでしょう。
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