焼入れリボン鋼(焼入鋼帯)について解説!用途や特徴等を丁寧にご紹介!

2023-11-07

あまり聞き慣れない「焼入れリボン鋼」は、焼入鋼帯とも呼ばれ、ばね用炭素鋼帯の一種を指し、特に強靭性、弾性に優れるという特徴を持っています。そのため、自動車業界をはじめ、刃物、ゼンマイなどとして、さまざまな用途に使用されています。

今回は、この焼入れリボン鋼(焼入鋼帯)について、その製作過程で必須となる熱処理(焼入れ・焼戻し)の技術についての説明に加え、用途や加工上の特徴、さらに焼入れリボン鋼以外のばね用炭素鋼帯もご紹介します。また最後に、焼入れリボン鋼の表面処理の種類についても解説します。焼入れリボン鋼についてさらに知識を深めたい方や、焼入れリボン鋼の購入でお悩みの方は、ぜひご一読ください。

焼入れリボン鋼(焼入鋼帯)とは

焼入れリボン鋼とは、ばね用炭素鋼帯の一種であり、一般に焼入鋼帯と呼ばています。

ばね用炭素鋼帯とは、冷間圧延して製造される炭素鋼帯であり、薄板ばねやぜんまいばねなどに使用される材料です。中でも、焼入れリボン鋼は、焼入れ・焼戻しという熱処理加工を施して製造されたばね用炭素鋼帯を指します。焼入れ・焼戻しについては、この後説明していますが、焼入れリボン鋼は熱処理が施されていることで、強度、靭性、弾性に優れた鋼帯となっています。

焼入れ・焼戻しとは

ここで、焼入れ・焼戻しについて説明していきます。

まず、焼入れとは、鋼材を加熱した後、急速に冷却することによって鋼を硬くする熱処理方法を指します。ここで、焼入れによって鋼材は硬くなりますが、脆く、そのまま加工を行うと変形や割れが生じやすくなっています。そこで、焼入れを行った鋼に、焼戻しを行うことによって、硬さを減少させ、靭性を高めます。

参考記事

こちらの記事では、焼入れについて、その種類や特徴をさらに詳しく解説しています。焼入れについて詳しく知りたい方は、ぜひご覧ください。

⇒ 焼き入れとは?焼き入れの種類ごとの特徴に分けて解説!

使われる主な製品

次に、焼入れリボン鋼の用途について見ていきましょう。焼入れリボン鋼は、一般に板金加工の分野において薄板ばねやゼンマイを中心に、幅広い用途で使用されています。例えば、オルゴールや時計用のゼンマイや、掃除機などの電源コードを巻き込むコード引込用ぜんまい、その他にも上図に示したようなカメラシャッターの羽根など、さまざまな製品に使用されており、私たちの生活の身近なところにも広く利用されています。

 

焼入れリボン鋼の加工上の特徴

次に、焼入れリボン鋼の加工上の特徴について見ていきましょう。次のような特徴が挙げられます。

ばねの特性を出す熱処理が不要

焼入れリボン鋼は、既に熱処理が施してあるため、成形・加工後の製品に対する熱処理加工は不要となります。そのため、プレス成型後の熱処理による形状変化がなく、手直し工程の省略が可能となります。

成形には不向きな事も

熱処理が施してある焼入れリボン鋼は、上述したようなメリットもある反面、焼入れによって硬度が高められているため、成形性には乏しくなっています。

 

焼入れリボン鋼以外のばね用炭素鋼帯

ばね用炭素鋼帯は、焼入れリボン鋼の他にも、みがき特殊帯鋼及びベイナイト鋼帯があり、計三種類に分類されます。それでは、焼入れリボン鋼以外のばね用炭素鋼帯についてご説明していきます。

みがき特殊帯鋼

みがき特殊帯鋼は、熱間圧延した鋼板をさらに冷間圧延して製造される鉄鋼材料を指します。みがきという名前は、冷間圧延によって熱間圧延後に生じる黒いスケールを無くし、鉄本来の輝きを持つことに由来しています。なお、焼入れリボン鋼は、みがき特殊帯鋼に対して、焼入れ・焼戻しを施して製造した、ばね用炭素鋼帯であるとも言えます。

また、みがき特殊帯鋼は、基本的には説明した通り、熱間圧延の後に冷間圧延を施した鋼材を言いますが、中には冷間圧延後、さらに焼きなましという熱処理加工を行うものもあります。

焼なまし(焼鈍)とは

焼なまし加工は、焼鈍(しょうどん)とも呼ばれ、鋼材を550~650℃ほどの温度に加熱し、その後徐冷していく熱処理法の一つです。材料を軟らかくし、より加工性を上げる目的で行われます。そのため、みがき特殊帯鋼においても、焼なましを施した材質の方がより成形性に優れるという特徴があります。

参考記事

こちらの記事では、熱処理について、その仕組みや種類を詳しく解説しています。熱処理についてさらに詳しく知りたい方は、ぜひご覧ください。

鋼の性質を変える【熱処理】とは?仕組みや種類について徹底解説!

ベイナイト鋼帯

ベイナイト鋼帯とは、上述したみがき特殊帯鋼に対して、オーステンパー処理という熱処理を施して製造されるものを指します。ベイナイト鋼帯は、強さとしなやかさの両方を持つ材料です。

オーステンパー処理とは

オーステンパー処理とは、820〜900℃以上に加熱後、300℃~500℃に冷却、等温保持する処理方法です。この処理によって、ベイナイトと呼ばれる組織が得られることから、「ベイナイト鋼帯」と呼ばれています。このベイナイト組織は、靭性や耐久性に富んだ組織です。そのため、オーステンパー処理は、鋼材の焼入れによる歪みや焼割れの発生を防ぎ、強靭性を与える熱処理法となっています。このことから、ベイナイト鋼帯は、焼入れリボン鋼に比べて、より靭性に優れた材料となっています。

 

焼入れリボン鋼(焼入鋼帯)の表面処理の種類

最後に、焼入れリボン鋼の表面処理の種類について解説していきます。焼入れリボン鋼の表面処理の種類には、下表のようなものが挙げられます。

引用元:日本金属株式会社

まず、表中の光輝白・光輝青・光輝茶に関しては、熱処理時の雰囲気によって表面の色が変わるもので、一般に光輝仕上げと呼ばれています。例えば、無酸素雰囲気で熱処理を行うと材料表面が白色になり、酸素のある雰囲気で熱処理を行うと、酸化皮膜によって材料表面が青・茶色になります。焼入れリボン鋼は、鋼素材であるため錆やすいのですが、光輝仕上げを施すことによって、防錆性を向上させることができます。また、耐摩耗性や耐疲労性を向上させる役割もあります。

次に、表中の研磨白・研磨青・研磨茶に関しては、研磨仕上げと呼ばれ、その名の通り熱処理後に研磨し、着色したものを指します。なお、研磨白については、着色はなく、研磨のみ施された仕上げ方法となっています。研磨仕上げでは、熱処理によって材料表面に発生したスケールなどを除去することによって、表面の平滑性を高められます。さらに、付着物などのない材料へ仕上げることができるため、精密機器部品などに利用されます。なお、光輝仕上げの施された製品と比較すると、防錆性はやや劣ります。

まとめ

今回は、焼入れリボン鋼(焼入鋼帯)について、その製作過程で必須となる熱処理の技術や、用途や加工上の特徴、また焼入れリボン鋼以外のばね用炭素鋼帯や、表面処理の種類など、幅広い内容について解説しましたが、いかがでしたでしょうか。ばね用炭素鋼帯には、焼入れリボン鋼の他にも、みがき特殊帯鋼やベイナイト鋼帯などがあり、それぞれ特徴が異なります。そのため、用途にあった素材を選定することが必要となってきます。

 

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