染谷 ひとみ
Mitsuri Media管理人
精密板金加工工場のインサイドセールスとして加工と寸法の提案をしてきた経験を経て、製造業の知見と楽しさを提供している。 幼少期からモノの構造を理解するのが好き。JAPAN MENSA会員。
「高級感を出したいけど、めっきと塗装どっちがいいの?」
「耐食性が必要な製品だけど、めっきと塗装どちらが良いのかわからない・・・」
こんな、お悩みをお持ちではありませんか。
めっきと塗装は、似たような状況で必要となる加工法です。しかし、いざ依頼しようとした際、そのケースにはどちらが適切なのか、分からないことも多々あるかと思います。
そこで、今回の記事では、めっきと塗装について説明すると共に、その違いや混同しやすいめっき塗装などについても解説していきます。めっきと塗装のメリット・デメリットも述べていますので、ご依頼する際の参考にしてください。
めっきとは、素材の表面に金属の薄膜を形成させる技術のことです。表面処理技術の一つで、素材が錆びることを防いだり、外観の装飾性を高めたり、素材に機能を付与したりするために行われます。
付与できる機能は幅広く、金めっきを例にすれば、熱伝導性や導電性を付与できますし、抗菌効果も期待できます。また、硬い素材であるクロムのめっきは、優れた耐摩耗性を付与できることから、強度が必要な部品や擦り減りやすい部品に実施されることが多いです。
めっきの主要な加工方法としては、電気めっきと無電解めっきが挙げられます。どちらも、めっきする金属や薬品が溶けた液に素材を漬けることは共通です。ですが、電気めっきは電気を流すことで素材表面に金属膜を析出させる一方、無電解めっきは、薬品による化学反応だけを利用してめっきを行います。
参考記事
めっきの加工方法については、以下の記事に詳細がありますので、気になった方はぜひご覧ください。
⇒メッキ加工方法について!【専門家が語る】メッキされるまでの工程が丸わかり!
めっきする金属としては、上述した金やクロムのほか、銀や銅、ニッケルなどが代表的です。
特にニッケルは、硬く腐食しにくい上、光沢や色味、性質などをめっき溶液に添加する薬品や合金化することによって調整できます。そのため、自動車部品や機械部品、精密機器のほか、装飾品にもよく用いられるめっきです。
参考記事
めっきの概要を知りたい方は、以下の記事を参考にしてください。
⇒【メッキ処理とは?】目的・仕組み・種類・特徴について徹底解説!
塗装とは、素材表面に塗料を塗ったり、吹きかけたりすることで、塗膜を形成させる表面処理技術のことを言います。塗装もまた、防錆や装飾、機能の付与が主要な役割です。その一方、素材の保護を目的に塗装することもあり、塗り直すことを前提としている場合があります。
防錆を目的とする塗装は、鉄が代表的です。鉄は、空気や水との接触で簡単に錆びてしまうため、めっきか塗装が必須となります。
一方、塗装が不必要にみえるステンレスにも塗装することがあります。ステンレスは、サビに強い素材ですが、傷や亀裂から腐食が進むことがあります。このような、傷の発生を防ぐことなどを目的に、塗装する場合があります。
塗装方法には、様々なものがあります。
刷毛(ハケ)・ローラー等を使った手作業による塗装や、塗料を高圧の空気で吹き付ける吹付塗装などは、建築物の外壁などに用いられているため、目にしたこともあるかも知れません。これらの方法の多くは、溶剤塗装に分類され、揮発性の溶剤を含有する塗料を乾燥させることで固化、密着させて塗膜を形成させます。
専門的な塗装法としては、加熱して塗料を硬化させる焼付塗装、粉末状の塗料を静電気で付着させた後に加熱溶解させる粉体塗装、後述で説明する電着塗装などが挙げられます。
参考記事
焼付塗装の概要については、以下の記事で解説しています。ぜひ、参考にしてください。
塗料としては、ペンキやニス、樹脂(プラスチック)などが挙げられ、塗装方法や用途によって様々なものが選ばれます。
ペンキは、一般的に、揮発性の溶剤を含む油性塗料、ニスは、有機溶剤などを含んだ樹脂塗料のことで、共に乾燥させることで塗膜を形成させる溶剤塗装の材料です。
一方、焼付塗装に用いられるアクリル樹脂やメラミン樹脂、フッソ樹脂は、100~200℃程度の加熱を必要としますが、塗装の中では品質が良いです。塗料によりますが、焼付塗装は、インテリアやエクステリアのほか、様々な日用品などに用いられています。
粉体塗装には、熱可塑性の塗料と熱硬化性の塗料があります。熱可塑性塗料としては、ポリエステル系や塩化ビニル系の樹脂、熱硬化性塗料としては、エポキシ系やポリエステル系、アクリル系の樹脂が挙げられます。熱可塑性塗料は、熱硬化させているわけではないので、焼付塗装による塗膜ほどの硬度は得られません。ですが、熱硬化性塗料は、焼付塗装に用いられる塗料と同様、高い強度が期待できます。また、粉体塗装に用いられる塗料は、環境や人体に悪影響を与える、有機溶剤を使用していないことが特徴です。
次は、めっきと塗装の種類の中でも、名称や内容が分かりにくい「クロームめっき」と、めっきなのか塗装なのか混同しやすい「電着塗装(電着めっき)」と「めっき塗装」について説明します。
クロームめっきとは、めっき金属としてクロムを使うめっき、つまり「クロムめっき」のことです。クロムめっきしたものは、英語で「chrome」と記述し、その読みはむしろ「クローム」に近いです。ですが、JIS規格では「クロムめっき」とされています。
クロムめっきには、装飾用クロムめっきと工業用クロムめっきがあるのも分かりにくいところです。装飾用クロムめっきは、下地にニッケルをめっきし、その上に薄いクロムめっきを施しためっきで、「ニッケルクロムめっき」とも呼ばれています。
一方、工業用クロムめっきは、クロムの優れた硬度や耐摩耗性を利用したもので、硬質クロムめっきとも呼ばれます。摩耗しやすい機械部品などに用いられ、耐用年数が必要なものほど厚いめっきを施します。
クロムめっきと混同しやすいものに「クロメート処理」があります。クロメート処理は、クロムを含有した溶液に亜鉛やアルミなどを浸し、素材表面にクロムを含む酸化皮膜を形成する表面処理です。表面に膜を付着させるめっきではなく、化学反応を起こすことで表面の性質を変化させる化成処理に当たります。
また、クロメート処理では、溶液のクロム含有量や添加する薬品を変化させることで、光沢や色味を調整することが可能です。そのような処理の中でも、光沢を付与する方法を光沢クロメート処理と呼び、亜鉛めっきに光沢クロメート処理を施すことを「ユニクロめっき」と言います。これも、クロムめっきを分かりにくくしています。
電着塗装とは、塗料を溶かした液に素材を漬け、電気を流すことで素材に塗膜を形成する塗装方法です。素材と塗料の一方を正、もう一方を負にする必要があるため、導電性の素材にしか適用できませんし、電荷を付与できる塗料でないと、電着塗装の塗布物にはできません。
電気めっきと加工方法が似ているためか、「電着めっき」と呼ばれることもあるようです。しかし、塗膜は樹脂であり、金属ではないので、電着メッキ(電着塗装)は、メッキではありません。
電着塗装には、電気めっきと同様のメリットがあります。例えば、構造が複雑な部分にも均一な厚さの塗膜を形成できますし、膜厚の調整も容易です。また、そのほかの塗装方法と比べ、ラインを組みやすいという利点もあります。
最近では、めっき塗装と呼ばれる、めっきなのか塗装なのか分かりにくい表面処理方法も目にします。しかし、これは、あくまで「めっき調塗装」であり、めっきではありません。
めっき塗装は、銀を含んだ塗料をスプレーなどで素材に吹きかけ、素材表面で銀鏡反応を起こして鏡のような光沢ある塗膜を形成。その上に、透明な塗料を使った塗装を施すことで、金属的な光沢と質感が得られる塗装方法です。透明な塗料に色を加えれば、多様な金属的色彩を付けることもできます。
この塗装方法は、薬品で銀を還元して析出させる銀鏡反応を利用することから、「銀鏡塗装」や「銀鏡めっき」とも呼ばれます。ですが、もちろん、銀を含んだ溶液に素材を漬け込み、表面から金属を析出させる銀めっきとは異なります。めっき塗装では、塗料を付着させた部分でのみ銀鏡反応が起こります。そのため、銀めっきとは違って、均一な膜形成は困難ですし、表面の微細な凹凸を完全に埋めることも容易ではありません。
このように、めっき塗装の塗膜は、めっきに近い質感が得られるものの、密着性が弱く、剝がれやすいという欠点があります。ですが、塗装の前処理の工夫などにより、高い密着性を実現しているメッキ塗装もあります。Mitsuriでしたら、めっき塗装を得意としてるメーカーもご紹介できますので、ぜひご相談ください。
それでは、めっきと塗装のどちらを選べば良いのでしょうか。
まず、めっきには、以下のようなメリットがあります。
めっきは、めっき金属が素材の金属と金属結合することで素材表面に析出したものです。このとき、素材とめっきの境界は、金属が連続的に存在しているかのように接着しています。そのため、素材とめっきが共に金属であるめっきは剥がれにくいです。
ですが、無電解めっきなどで樹脂等の非金属にめっきする場合は、素材表面の微細な凹凸に入り込んだめっき金属が固化し、引っ掛かることで接着します。この効果をアンカー効果と呼びますが、金属同士の接着に比べると接着性が低いです。
めっきは、傷みにくく、長持ちしやすいです。めっきは通常、傷や部分的な剥離をきっかけにサビや痛みが進行します。金属が塗料に比べて高強度であること、まためっきの剥がれにくさから、めっきは塗装に比べて長持ちし、長く機能を保持できます。
めっきを行うと、めっきする金属の性質を利用することが可能です。耐食性を引き継げるのはもちろん、導電性や熱伝導性、磁気的性質など、様々な特性を素材に付与することができます。
金属の特徴的な光沢や質感を素材に与えることができます。また、めっきを薄くすることで、下地の色味などを反映することができるため、多様な色彩や光沢を形作ることが可能です。
めっき金属は、素材表面の原子レベルの凹凸にも入り込むことができます。そのため、構造が複雑な素材であってもめっきすることが可能です。
めっきは、液体が浸透する箇所であれば、めっきすることが可能です。そのため、ムラが生じにくく、均一性の高い金属膜を形成することが可能です。
しかし、めっきには、以下のようなデメリットがあります。
めっきをしっかりと付けるには、素材が清浄であることや素材が露出していることが必要です。そのため、素材の前処理に多くの工程を必要とし、その結果、ある程度の時間を要します。
めっきは、加工工程が多いことから、様々な設備を必要とします。そのため、自然と設備が大掛かりになり、現地へ行ってめっきするといったことが難しくなります。
めっきは、一部分が剥離したからといって、その上からめっきし直すことはできません。めっき可能かどうかは、素材とめっき金属のイオン化傾向の大小などにも依存するため、めっきの貼り直しには、一度全てのメッキを剥がすことなどが必要となります。
ある金属の上には、この金属をめっきできると言うように、めっき可能か否かには制限があります。例えば、金などの貴金属をめっきする場合には、素材へのめっき金属の拡散防止が必要となるため、ニッケルを下地めっきとして挟まなければなりません。また、イオン化傾向が大きいチタンやマグネシウムなどは、どのような金属に対してもめっきすることが難しいです。
一方、塗装には、以下のようなメリットがあります。
塗料は、樹脂や硬化剤、顔料など、さまざまな成分を混ぜ合わせたものです。それらは無数に存在し、その組み合わせも多様です。そのため、塗料には、どのような色彩にも対応可能というほどの種類があります。
塗装は、めっきと同様の機能を付与することもありますが、めっきできないものや、通常めっきしないものに施すことが多く、付与する機能もめっきとは異なることが多いです。
代表的なものとして、耐火塗料や難燃性塗料を用いた防火機能の付与があります。そのほか、抗菌性を付与する抗菌塗料、カビの発生を抑制する防カビ塗料など、付与できる機能は様々です。
塗装方法や塗装設備によりますが、塗装対象がある現地に行って塗装することができます。そのため、建築物など、動かせないものの塗装が可能です。
塗装方法や塗料にもよりますが、塗装済みのものにも、そのまま上から塗装できます。塗り直しを前提としていることも多く、ひび割れや剥離が生じても、塗り直すことで元の品質や機能を容易に復元することができます。
塗装方法や塗料にもよりますが、めっきに比べると低コストです。塗料自体が、めっきに使用する金属よりも安価ですし、加工工程もめっきより少なく、加工賃も安くなります。
しかし、塗装には、以下のようなデメリットがあります。
塗膜の厚みや表面の均一性は、塗装の仕方に依存します。手塗りで不均一になるのは当然ですし、吹付塗装で機械的に360°を均一に塗装できたとしても、塗装対象の形状によっては、不均一性が生じてしまいます。電着塗装など、めっきに近い均一性が得られる塗装法もありますが、総じてめっきよりも均一性が低いです。
塗装は、めっきに比べて剥がれやすいです。塗装は主に、アンカー効果で接着しますが、めっきが素材表面の原子レベルの凹凸に入り込んで固化するのに対し、塗装は表面に付着するだけです。そのため、アンカー効果が弱く、接着性が低いです。また、塗料が金属よりも強度が低く、壊れやすいことも、塗装の剥離の原因となります。
塗装は、めっきに比べると、長持ちしません。塗膜は、そもそも、金属めっきよりも強度が低く、また密着性も弱いため、剥がれたり、痛みやすかったりします。そのため、塗装は、定期的に塗り直すものとして用いることが多々あります。
この記事から、めっきは高級感があって品質が高く、塗装は手軽で多様な色彩にも対応可能であるとまとめることができます。
ですが、近年では、めっき塗装のようなめっきに似せた塗装法も開発されており、いずれは、外観や品質を再現することも可能になるかもしれません。しかし、新しい技術ゆえに、メーカーごとの技術の差が大きく、品質もピンからキリまで、というのが現状です。
その点、Mitsuriは、日本全国に協力会社が250社以上ございますので、めっき塗装を得意とする先進的な塗装メーカーのご紹介が可能です。
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