2025-01-15
更新
メタルソーとは、メタルソー切断機やフライス盤、マシニングセンタなどに取り付けて、金属材料の切断や溝加工などに用いられる刃物のことです。円盤型で外周に鋸刃を備えており、高速回転させることで材料を切断します。JIS規格「JIS B 4219:1999」に規定されている刃物です。
材質には主に高速度工具鋼(ハイス鋼)が用いられており、さらにコーティングなどの表面処理を施すことで硬度や耐摩耗性などを調整し、様々な加工対象に対応できるようにしています。
加工対象の形状としては、丸棒や角棒、パイプ、形材(断面形状がL字形やH字形などの長手材)が適しており、加工対象の形状とサイズに応じてメタルソーの外径とピッチ(刃の間隔)を選定します(下図参照)。
例えば、材質によって違いはありますが、直径2~4mmのパイプの切断であれば、ピッチがおよそ5mmのメタルソーを選びます(下図参照)。なお、メタルソーの材料に対する最大切断寸法は、メタルソーの外径の3分の1程度です。
メタルソーには、他の切断方法と比較して、火花の飛散や粉塵の発生が少ないという特徴があります。「メタルソー切断」は、円盤状の砥石を高速回転させて切断する「高速切断」に比べて、切れ味がシャープな上に回転速度が遅いことから、摩擦熱が発生しにくくなっています。従って、火気への注意が必要な場所でも、実行することが可能です。また、高速切断では切り屑が微細で粉塵として空気を汚染してしまう一方、メタルソーでは、必ず切削液を使用する上、切り屑は比較的サイズが大きく、切削液で押し流すことから、切り屑による事故は起こりにくくなっています。
メタルソー切断は、熱の発生が少ないことから、材料の形状変化が小さく、高い精度で加工できるという利点もあります。さらに、切断面に発生するバリが少なく、切断面の仕上がりが良好です。
ただし、メタルソーは、砥石に比べると刃の消耗が早く、高頻度で再研磨を行う必要があります。頻繁に研磨することで、割れなどのトラブルが発生しにくくなり、刃の寿命を延ばすことが可能です。
メタルソーの刃は、全体がハイス鋼からできているため、研磨すると外径が小さくなっていくものの、何回でも使用することができます。ただし、外径が小さくなると、刃が加工対象に届かなくなったり、厚い材料を切断できなくなったりしますので、その場合はメタルソーを交換しましょう。
メタルソーの種類には、代表的なものとして以下が挙げられます。
・SSメタルソー
・HSSメタルソー
・MSSメタルソー
・チタンコーティングメタルソー
これらは、メタルソーに施された表面処理の違いによる分類であり、切断する材質によって使い分けられます。
そのほか、メタルソーの材質として、ハイス鋼にコバルトを添加したコバルトハイス鋼が用いられているものもあります。コバルトハイス鋼製のメタルソーは、耐摩耗性と耐熱性が高く、切削速度を上げることが可能です。
また、メタルソーには、側面の形状で分けられる以下のタイプがあります。
●ストレートタイプ…メタルソーの幅(厚み)が一様なタイプ。再研磨を行っても厚みが変わらないという利点がありますが、切り込みが深くなると側面が擦れるようになります。浅い溝加工や薄い(細い)材料の切断に向いています。
●バックテーパタイプ…メタルソーの幅が外周から中心へ向かうほどに薄くなっていくタイプ(下図参照)。メタルソーの側面と切断面が接触しないため、深い溝加工や厚い(太い)材料の切断でも切断面が綺麗に仕上がります。
●ボス付きバックテーパタイプ…バックテーパタイプの中心にボスと呼ばれる隆起した面があるタイプ(下図参照)。フライス盤やマシニングセンタに取り付ける場合に選ばれます。メタルソーのボスは、工作機械の主軸に接続して工具を保持する装置である「アーバー」への強固な結合や取り付けたメタルソーの芯ブレ防止の効果があります。
SSメタルソーは、表面処理が施されていないメタルソーです。メタルソーの材質がよく用いられている「SKH51」であれば、HV700~850程度の硬度を持ちます。アルミや銅などの比較的軟らかい非鉄金属の加工に採用されます。
HSSメタルソーは、黒染加工が施された最も一般的なメタルソーです。黒染加工は、鉄鋼の表面に黒色酸化皮膜(Fe3O4)を形成させる表面処理のことで、耐摩耗性や潤滑性の向上、サビ防止などを目的に施されます。HSSメタルソーに対しての黒染加工は、加工時に用いられる切削液の冷却効果を高めたり、材料が切削熱で溶けて付着する「溶着」を防いだりするために適用されています。HSSメタルソーは、主に普通鋼や炭素鋼の加工に採用されます。
MSSメタルソーは、クロムとニッケルがコーティングされたメタルソーです。耐食性や耐摩耗性に優れ、高い溶着防止力を発揮します。HSSメタルソーと同様、普通鋼や炭素鋼の加工にも使用されますが、特に溶着しやすいステンレス鋼の加工に適しており、そのほか合金工具鋼や特殊鋼などの加工も可能です。
チタンコーティングメタルソーは、真空中で加熱した成膜物質を吹き付けて付着させる「PVD(物理蒸着)」によって窒化チタンがコーティングされたメタルソーです。硬度がHV2000〜2500と極めて高いことから耐摩耗性に優れ、耐久性も高くて長寿命です。摩擦係数が極めて小さいため、摩擦熱が原因で発生する焼き付きが起きにくくなっています。溶着も起こりにくく、普通鋼や炭素鋼、ステンレス鋼のほか、高硬度鋼や高硬度合金などの難削材の加工も可能です。
メタルソーの切削条件は、メーカーによって異なりますが、以下のような値が例示されています。
参照元:鋸の基本説明「メタルソーの基本説明2」天龍製鋸株式会社
送り速度は、下式から求められます。
送り速度の算出方法
F:送り速度 (m/min)
f:一刃当たりの送り量 (mm/tooth)
N:メタルソーの回転数 (min-1)
Z:メタルソーの刃数
また、回転数は、下式から求めて設定します。
回転数の算出方法
N:回転数 (min-1)
V:切削速度 (m/min)
D:メタルソーの外径 (mm)
π:円周率
ただし、上記の切削条件は、メタルソーの材質や種類、被削材の硬度、荒加工か中仕上げかの違いなどによって変わります。
送り速度と回転数は、以下のような指針で調整します。
●送り速度を上げる場合
・被削材の被削性が良い
・加工深さが浅い
・逃げ面摩耗が激しい
・ビビリが発生する
・被削材が加工硬化を起こしやすい
●送り速度を下げる場合
・被削材が薄肉である
・中仕上げを行う
・加工深さが深い
・刃先がチッピング(微細な欠けが生じる現象)を起こす
・メタルソーが薄い
●回転数を上げる場合
・被削材の被削性が良い
・中仕上げを行う
●回転数を下げる場合
・被削性が悪い
・荒加工を行う
・メタルソーの摩耗が激しい
・新規材料・新規設定・新規条件での作業を行う(徐々に回転数を上げていく)
メタルソー切断機は、鉛直面で回転させたメタルソーを押し下げることで、テーブル上に固定した材料を切断する工作機械です(上図参照)。刃を手動で上下させる切断機と、自動で上下させる自動切込み機能付きの切断機があります。テーブルは、回転させて切り込み角度を変えることが可能です。
メタルソー切断機は、定置型の機械で、切削液を供給するクーラントポンプや、材料を自動的に移動させることができる自動送り装置などとともに使用します。NC(数値制御)やCNC(コンピュータ数値制御)に対応している切断機もあります。
刃の回転速度がそれほど速くはないため、熱影響が小さく、高精度の切断が可能です。切断面の焼き付きもほぼ入らず、バリやカエリもほとんど発生しません。火花や粉塵なども発生しにくいことから、安全性も高くなっています。
なお、切断機へメタルソーを取り付けるには、下図に見られるメタルソーのピンホールの芯間距離と径、個数が切断機に適合しなくてはなりません。また、ピンホールに関する寸法は、JIS規格で規定されておらず、メーカーによって異なるため、メタルソーの選定には注意が必要です。
メタルソーとチップソーとは、刃の構造が異なります。メタルソーは刃物全体がハイス鋼でできているのに対し、チップソーは、丸鋸の刃先にのみ超硬合金製やサーメット製の「チップ」と呼ばれる加工を担う刃物が付いています。従って、刃が損傷したり、摩耗が進んだりした場合、メタルソーは再研磨することで再度使用することができますが、チップソーは、再度使用するのにチップの交換が必要です。
ただし、チップソーは、チップの種類によって以下のように用途や加工対象が違い、ここでメタルソーと比較しているのは金属用のものです。
・超硬チップ…超硬合金製のチップ。木工用。
・サーメットチップ…高硬度のチタン合金を主成分としたチップ。金工用(金属用)。
・焼結ダイヤモンドチップ…高密度に焼き固めたダイヤモンドからできたチップ。サイディング(窯業系外壁材)用。
また、切断機の中には、メタルソーとチップソーの双方を取り付けられるものがあります。
金属加工のマッチングならMitsuri!
法人・個人問わずご利用できます。
Mitsuriでどんな取引が行われている?
新しい機能を使ってどう新規取引につなげる
そんな疑問に毎月メールでお届けします