2025-01-13
更新
あまり聞き慣れない「エキスパンドメタル」ですが、実は私たちの身近なところで幅広い用途において使用されています。例えば、フェンスや階段の踏板などに用いられています。パンチングメタルでは、丸孔や角孔で材料に孔をあけるのに対し、エキスパンドメタルでは、材料に千鳥状の切れ目を入れて引き伸ばすことで菱形の網目状に加工します。
今回は、このエキスパンドメタルをテーマに、材質やその種類、各部名称のほか、メリットや用途、さらに購入する際に注意する点など、幅広い内容について解説していきます。エキスパンドメタルについてさらに知識を深めたい方や、エキスパンドメタルの購入でお悩みの方は、ぜひご一読ください。
エキスパンドメタルとは、金属板を刃型によって千鳥状に切れ目を入れながら押し広げ、その切れ目を菱形や亀甲形に成形したメッシュ状の金属板を指します。エキスパンドメタルの製造の様子を示した動画をご覧ください。
エキスパンドメタルは、板を引き伸ばし切断してあるため軽量で、さらに網の継ぎ目がなく、加えられた荷重が分散することで、各角度に対して抗張力が強く、高い強度を有するなどといった特徴を持ちます。このような特徴を活かして、エキスパンドメタルは、フェンス、通気孔窓、ケーブルラック、建築、土木用資材など、幅広い用途に使用されています。
エキスパンドメタルの材質には、鉄やアルミ、ステンレスなど、さまざまな材質が用いられます。
アルミは、比重が鉄や銅の約1/3と軽く、耐食性、加工性にも優れた金属です。そのため、アルミエキスパンドメタルはパーテーションや日除け、またDIYなどの家庭用インテリアの製作にも用いられます。
ステンレスは、耐食性、耐熱性を有し、また加工性、強度、意匠性に優れた金属です。そのため、ステンレスエキスパンドメタルは建築外装などに広く使用され、デザインファサードとして用いられています。
参考記事
こちらの記事では、アルミやステンレスなどの材料の性質について詳しく解説しています。ご興味のある方は、ぜひご覧ください。
⇒板金材料の機械的性質・化学的性質とは?主な金属6種の性質も解説!
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次に、エキスパンドメタルの各部名称についてご説明していきます。下図に、エキスパンドメタルの網目を拡大した図を示しました。
引用元:松陽産業株式会社
図中にある、エキスパンドメタルの各部名称の表記について、以下の表にまとめましたのでご覧ください。
次に、エキスパンドメタルの目方向について見ていきましょう。
上図のように、エキスパンドメタルの菱目方向の呼称には、ソロバン目とタタミ目の2種類が存在します。
まず、ソロバン目は、エキスパンドメタルの長目方向に対して菱形の目が流れているもので、製品寸法において、L>Sとなる形状の製品を指します。
一方、タタミ目は、寸法の短目方向へ菱形の目が流れているもので、製品寸法において、L<Sとなる形状の製品を指します。
次に、エキスパンドメタルの穴の種類について見ていきましょう。
ソロバン目については、上述した通り、菱形の目がエキスパンドメタルの長目方向に流れるものを指します。
タタミ目についても、上述した通り、菱形の目がエキスパンドメタルの短目方向に流れるものを指します。
まず、菱形の穴の形状を下図に示します。エキスパンドメタルのボンド部が短い形状となります。
一方、亀甲形の穴の形状は下図のようになります。菱形とは異なり、エキスパンドメタルのボンド部が長い形状となっています。
エキスパンドメタルの切断方法にはいくつかの種類があり、例えばボンド切断やフルメッシュと呼ばれる、編目に合わせてボンド部で切断する方法の他に、編目に関係なしに切断を行う乱切断などの方法が挙げられます。以下に、各切断方法で加工した場合のエキスパンドメタルの図を示します。
エキスパンドメタルの種類について解説していきます。
XSタイプはスタンダードタイプとも呼ばれ、網目が菱形のエキスパンドメタルとなっています。軽量で、加工・切断がしやすく、施工も簡単であるという特徴を持っています。また、通光・通気性に優れ、衝撃耐力が強いのも特徴です。
用途としては、各種器具防護柵、間仕切り、発電所ケーブルラック、乗り物などの通気窓、各種バスケット、各種フェンス、手すり、家具などが挙げられます。
XGタイプはグレーチングタイプと言われており、網目が亀甲形のエキスパンドメタルとなっています。XSタイプよりも強度があります。さらに、耐火性を持ち、取り扱いや施工も容易で、滑り止め効果にも優れるという特徴を有します。
用途としては、各種工場、船舶、鉱業所、建物などの床張、階段の踏板や側溝の蓋、フェンスなどが挙げられます。
エキスパンドメタルラスは、金属の板材を小さな網目になるように切開伸長したものを指し、一般にメッシュ(SWxLW)が10mmx20mm未満のものを言います。
装飾性に優れており、さらに外から透視しにくいものの、通気面積は大きく、通気性も抜群であるという特徴を有しています。
用途としては、車両、船舶、航空機などの通風機や、建物の外装などが挙げられます。
XFタイプはフラット型とも呼ばれます。エキスパンドメタルの表面には、ストランドやボンド部の隆起があるのですが、スキンパスロールを通すことによって、下図のように、隆起部分が押し潰され、網目全体が同一平面となります。
一般に、XSタイプのエキスパンドメタルをフラット化することで得られることから、XSタイプ同様、軽量で、施工も簡単であるなどといった特徴を持っています。
用途としては、各建物の間仕切り、フェンス、窓格子、通気口、網戸、鳥かごなどが挙げられます。
このように、エキスパンドメタルには種類があり、用途に応じて適切なエキスパンドメタルを選定することが必要となります。
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次に、エキスパンドメタルのメリットと用途について見ていきましょう。
エキスパンドメタルは、軽量であるため、輸送や作業も楽に行うことができます。また、切断などの加工性にも優れているのも特徴として挙げられます。そのため、建築用の内・外装材としても広く利用されています。
エキスパンドメタルは、強度が高く、耐荷重性に優れるため、特に床材や側溝蓋など荷重がかかるような場所において活躍しています。
エキスパンドメタルは網目構造を持つことから、塞がれた壁面とは異なり、換気性や、採光性などに優れます。一方、適度な遮断性も有するため、日除けや目隠しの目的で、建物の外装や室内のパーテーションなどのインテリアにも利用されています。
エキスパンドメタルのメッシュは、意匠性にも優れています。また、網目に起伏があるという点も、より立体的な外観を演出し、さらにデザイン性を高めています。
なお、網目にある起伏部は滑り止めの効果もあります。このように、意匠性の高いエキスパンドメタルは、建築には欠かせない材質の一つとなっています。
フェンスなどに利用されるエキスパンドメタルは、防犯の役割も果たします。さらに、一枚の金属板で製作されていることから、部分的に切断されても網目がほどける心配もありません。
エキスパンドメタルは、金属の板材のみを用いて作られる製品で、その製造工程では、ほとんど原材料のロスが出ません。また、使用後においても、また新たな鉄鋼製品としてリサイクルすることも可能です。
最後に、エキスパンドメタルを購入する際に注意する点についてご説明します。
エキスパンドメタルを製造する際には、金型を用いて切れ目を入れながら押し広げ成形するため、開口部にはバリ、ボンド部には隆起が発生してしまいます。そのため、特に人の手が触れる場所に利用する際には注意が必要です。
エキスパンドメタルには、塗装やメッキを施すこともありますが、特にアルミエキスパンドメタルのアルマイト処理後の染色には注意が必要です。アルマイト処理では、電解液につけて酸化皮膜を張らせます。その酸化皮膜には、微細な孔が存在し、その孔に染料を入れて染色を行いますが、素材ごとに皮膜を生成する際にできるこの孔の大きさが異なるため、発色の具合が変化してしまいます。そのため、建築用の装飾材などとして、アルマイト処理後の染色する場合には、アルミメーカーやロットを揃えないと、仕上がりの色が変わってしまうので注意しましょう。
参考記事
こちらの記事では、アルマイト処理について詳しく解説しています。アルマイト処理について詳しく知りたい方は、ぜひご覧ください。
⇒【アルマイト処理・化成被膜処理とは?】目的や種類などを徹底解説!
上述した通り、エキスパンドメタルには幾つかの種類が存在します。XS、XG、エキスパンドメタルラス、XFタイプなどのような代表的な種類以外のエキスパンドメタルをお求めの際には、メーカーも在庫を保有していないことが多いため、注意する必要があります。
エキスパンドメタルは、種類が豊富であるため、用途に合わせて適切な種類を選定する必要があります。また、メーカーによって、販売しているエキスパンドメタルの種類なども異なるため、購入の際には注意が必要です。
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