染谷 ひとみ
Mitsuri Media管理人
精密板金加工工場のインサイドセールスとして加工と寸法の提案をしてきた経験を経て、製造業の知見と楽しさを提供している。 幼少期からモノの構造を理解するのが好き。JAPAN MENSA会員。
近年、様々な分野でIoTが活用されています。製造業もその例外ではなく、IoTを導入することで、ノウハウの見える化や生産管理の自動化など、様々な効果を得られている事例も少なくありません。
ただ、製造業でIoTを導入する際の課題を十分整理できていない方も、いらっしゃるのではないでしょうか。また、製造業でIoTを導入した事例を学べば、よりIoTを導入する具体的なイメージがわくはずです。
そこで本記事では、製造業におけるIoT導入のメリットと課題を解説した後、製造業のIoT導入事例について解説していきます。
まずは、IoTの意味を解説します。
IoT(Internet of Things)は、直訳すると「モノのインターネット」で、「さまざまなモノがインターネットで接続され、モノ同士のネットワークが構築された状態」を指します。モノ同士は、インターネットを通じて情報交換・制御し合うことが特徴です。内閣府提唱の「ソサエティ(Society)5.0」や、経済産業省推進の「コネクテッド インダストリーズ(Connected Industries)」でも、IoTに言及されています。そして、製造業においても、IoTを活用することで、様々な課題を解決できると期待されているのです。
参考:製造プロセス分野のIoT展開(データ収集・解析と予知保全等)|経済産業省
ここからは、製造業でIoTを導入するメリットについて、以下4つ解説します。
・製造現場で培われてきたノウハウを見える化
・機械の異常をいち早く検知
・品質管理をより確実に遂行
・生産管理を自動化
それでは、一つずつ見ていきましょう。
メリットの1つ目は、製造現場で培われてきたノウハウを見える化できることです。
熟練技術者の勘やポイントなど、生産現場にはこれまで見える化が難しかったノウハウが少なくありません。ノウハウを見える化できないと、そのノウハウは属人化して他の社員に伝承することが困難になるため、企業全体の競争力にも影響が出ることも考えられます。しかし、製造機械のセンサーやアイトラッキングシステムなどのデータ活用ができれば、熟練技術者の動きを詳細に解析し、ノウハウを見える化できるのです。
また、生産設備データをカメラやセンサーで収集・蓄積し、生産工程を見える化することで、業務プロセス改善を図っている企業も珍しくありません。経済産業省の調査によると、営業利益増加が見られた企業のうち、73.2%が工場内でデータ収集を行っています。
メリットの2つ目は、機械の異常をいち早く検知できることです。
IoTを活用すれば、人間ではなかなか気づかない異常もすぐ検知できます。いち早く異常に対処できるため、生産ラインの故障で生産が止まるリスクを回避できます。また、機器トラブルへの対応も、IoTを活用すれば人の手を使わずに解決できる場面が少なくありません。経済産業省の調査によると、製造業全体の94.8%もの企業が、「人材確保に何らかの課題がある」と回答しています。このように、製造業は人手不足に悩む会社が多いだけに、IoTを用いて人の手を使わずとも機器トラブル対応できることは、魅力ではないでしょうか。
メリットの3つ目は、品質管理をより確実に遂行できることです。
生産工程をIoTツールで常時確認することで、きめ細やかな品質管理が可能になります。トラブルが発生しても、いち早く検知できる上に、収集データからトラブルの原因を特定できるようになります。また、出荷後もセンサーで商品の状態を把握できる仕組みを作れば、予防保全や故障対応に役立つため、適切なサービスを提供する一助となります。
メリットの4つ目は、生産管理を自動化できることです。
製造業の生産管理では、データの収集・入力などでは手作業が多いため、生産計画の立案・生産管理に時間がかかることが課題です。しかし、IoTを導入することで、生産管理に係る品質・機械稼働状況などのデータを自動取得して分析できます。これにより、生産管理の効率化を実現できる上に、PCやスマートフォンで生産管理データを手軽に常時把握し、生産計画について施策立案に活用できるのです。
ここからは、製造業でIoTを導入する際の課題について、以下3つ解説します。
・コスト
・現場への定着
・導入後の効果的な活用
それでは、一つずつ見ていきましょう。
課題の1つ目は、コストです。
IoT導入には、初期費用だけでなくランニングコストもかかります。IoT導入前には、得られるメリットとコストを比較し、十分なメリットを得られるか検討しましょう。
課題の2つ目は、現場への定着です。
IoTに理解がある作業者が現場にいないと、IoT導入・運用には時間がかかります。特に、ITに苦手意識がある作業者にとっては、IoT機器を取り扱うことは、心身に負担になる問題があります。現場にIoTを定着させるためには、IoT導入前に作業者の方々にメリットを繰り返し伝えるだけでなく、IoTに関する教育を徹底することが必要です。
課題の3つ目は、導入後の効果的な活用です。
IoTで得られたデータは、正しく解析して業務に効果的に活用して初めて意味をもちます。IoTの導入には少なからずコストもかかるため、IoT導入だけを目的にせず、十分にIoTを活用して生産性向上に成功できているか確認しましょう。
ここからは、製造業でIoTを導入した事例について、以下4つ解説します。
それでは、一つずつ見ていきましょう。
事例の1つ目は、IoTでノウハウの見える化を実現した事例です。
この事例では、技術力がある熟練技術者は勘と経験で作業を行うことが多く、ノウハウが属人化していることに課題を感じていました。これにより、熟練技術者から若手技術者への、技術の伝承、育成がなかなか進みませんでした。そこで、IoTを活用して、生産設備の細やかな動作を可能にしました。これにより、誰でも熟練技術者のように細やかな加工が可能になったのです。
事例の2つ目は、IoTで機械異常のいち早い検知を実現した事例です。
この事例では、廉価の商品を大量生産することで、利益を出す戦略を取ってきました。ただ、24時間365日生産ラインを稼働させ続けてきたため、機器トラブルをいち早く検知することに課題を感じていました。そこで、 IoTを導入して各工程の機器稼働状況データを見える化しました。その結果、機器稼働状況を常に把握し、異常があってもすぐに気づいて対処できるようになりました。これにより、人員を増やさずとも生産性の1.5倍増を実現したのです。
事例の3つ目は、IoTでより確実な品質管理を実現した事例です。
生コンクリートの品質管理では、建設現場に届けるまでに刻一刻と品質が変化することが難しい点です。この事例では、コンクリートのミキサー車のドラムにIoTデバイスを取り付けることで、生コンクリートのリアルタイム品質管理を取得し、可視化しました。これにより、品質を常に確認できる状態にして、品質管理を可能にしたのです。
事例の4つ目は、IoTで生産管理の自動化を実現した事例です。
この事例では、IoTで生産設備のあらゆるデータの見える化や生産設備同士の連携を実現しました。これにより、製品の細やかな加工や、加工した製品同士の比較が容易になったのです。また、生産設備の稼働状況も遠隔地でチェックできるようになり、生産性もIoT導入前より1.2倍以上アップできました。
本記事では、製造業におけるIoT導入のメリットと課題を解説した後、製造業のIoT導入事例について解説しました。IoTは、ノウハウの伝承や機器異常の検知、生産管理など、製造業のあらゆるシーンで役立ちます。コストや現場への定着など、IoTを導入する際の課題も少なくありませんが、自社の現状や導入目的を明らかにし、IoTの導入メリットを現場に根気強く伝えていきましょう。また、IoT導入の際は、本記事で紹介した事例も参考になるので、ぜひご覧ください。
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