ガス溶接・ガス切断の特徴や加工手順、用途をご紹介!

ガス溶接は炎で母材を溶かして接合する方法、ガス切断は予熱した鋼材を酸素で酸化させ、酸化物を吹き飛ばして切断する方法です。どちらも燃料ガスと酸素を使いますが、目的、トーチの構造、適する材料が異なります。
| 比較項目 | ガス溶接 | ガス切断 |
|---|---|---|
| 目的 | 母材の接合、補修 | 主に鋼材の切断 |
| 原理 | 酸素と燃料ガスの炎で接合部を溶融し、必要に応じて溶加棒を加える | 予熱後に切断酸素を噴射し、酸化反応と酸素噴流で溶断する |
| トーチ | 燃料ガスと酸素を混合して溶接炎を作る溶接器 | 予熱炎に加え、切断酸素を噴射する切断器 |
| 適する材料・用途 | 薄い鋼板・鋼管などの接合、現場補修、加熱を伴う作業 | 軟鋼など、母材より融点の低い酸化物を作る鋼材の切断 |
| 主な注意点 | 入熱範囲が広く、厚板では能率が下がり、ひずみが生じやすい | ステンレス鋼やアルミニウムは通常の酸素切断に不向き |
本記事では、ガス溶接側の使用機器、トーチ、作業の流れ、用途を詳しく解説したうえで、ガス切断の特徴と手順も整理します。可燃性ガスと酸素を使う作業は火災・爆発・逆火などの危険を伴うため、実作業は技能講習を修了した作業者が、使用機器の取扱説明書と事業場の手順に従って行う必要があります。
ガス溶接は可燃性ガスによって起こした火を用いた加工
ガス溶接は、酸素とアセチレンなどの燃料ガスをトーチ内で混合し、火口から出る炎で接合部を加熱・溶融してつなぐ溶接方法です。必要に応じて、母材に合った溶加棒を溶融池へ加えます。
JIS B 6801:2003「手動ガス溶接器,切断器及び加熱器」は、アセチレン、LPGまたは同等の加熱効果を持つ燃料ガスと酸素を使う手動機器を対象としています。同規格は2023年10月に確認され、現在も有効です。
ガス溶接とろう付けは、トーチの炎を熱源にできる点は共通しますが、接合原理が異なります。ガス溶接は母材を溶かすのに対し、ろう付けは母材を溶かさず、母材より融点の低いろう材を流して接合します。厚板だから自動的にろう付けへ切り替えるわけではありません。詳しくは「ろう付けとは?種類・特徴・メリットとデメリット」をご覧ください。
ガス溶接の特徴とメリット・デメリット
ガス溶接は炎と溶融池を目視しながら、トーチの距離・角度・移動速度、溶加棒の供給を手作業で調整できます。電源を必要としないため、適切な換気と防火措置を確保できる現場で使いやすいことも利点です。
一方、アーク溶接と比べると熱源が広がりやすく、溶接速度も遅くなる傾向があります。周囲まで長時間加熱されるため、熱影響範囲やひずみが大きくなりやすく、厚板や高能率が必要な量産には不向きです。適用可否は材質、板厚、継手形状、要求品質から判断します。
ガス溶接で使用する機器
一般的な手動ガス溶接設備は、次の機器で構成されます。
| 機器 | 役割と選定時の確認点 |
|---|---|
| 酸素容器・燃料ガス容器 | 酸素とアセチレンなどを供給する。容器は転倒・加熱を防ぎ、油脂類を酸素機器へ付着させない |
| 圧力調整器・圧力計 | 容器内の高圧ガスを使用圧力へ減圧する。酸素用と燃料ガス用を取り違えない |
| ホース | 各ガスをトーチへ送る。ガス種に適合したものを使い、亀裂、摩耗、接続部の緩みを確認する |
| 安全器・逆火防止器 | 逆流・逆火が供給側へ進むリスクを抑える。設置位置と点検方法は法令、機器仕様、事業場の設備構成に従う |
| 溶接トーチ(吹管)・火口 | 酸素と燃料ガスを混合し、溶接炎を形成する。燃料ガス、母材、板厚、必要火力に適合する火口を選ぶ |
| 溶加棒・フラックス | 必要な場合に溶融池へ金属を補う。母材と施工条件に合う材料を選定する |
| 保護具・点火器 | 遮光保護具、難燃性作業服、革手袋、安全靴などを使用し、点火には専用の点火器を使う |
ガス溶断機器の点検では、外観、接続部やバルブの漏れ、火炎状態などを確認します。日本溶接協会のガス溶断部会は、日常点検に加えて、一定期間を超えた溶接器・切断器・圧力調整器をメーカーまたは指定事業者が定期点検することを案内しています。
ガス溶接トーチの構造と火口の選び方
溶接トーチは、酸素と燃料ガスの通路、各流量を調整するバルブ、両ガスを混合する部分、火口で構成されます。ガス切断用トーチと異なり、切断酸素を噴射する専用バルブはありません。日本溶接協会の認定制度では、酸素とアセチレンの混合部が吹管内にあるB形溶接器を「トーチミキシング式」と説明しています。
火口は、燃料ガスの種類、溶接する材質・板厚、継手形状に合うものを選びます。火口番号と適用板厚、使用圧力はメーカー・型式ごとに異なるため、一般値を流用せず、火口とトーチの取扱説明書を確認してください。千代田精機「B形手動ガス溶接器 取扱説明書」も、溶接器だけでなく圧力調整器と火口の説明書を併読するよう求めています。
ガス溶接の作業手順
ガス溶接の操作は、技能講習と使用機器の取扱説明書に従うことが前提です。バルブの開閉順序や使用圧力は機器構成によって異なるため、この記事だけを操作手順書として使用しないでください。全体の流れは次のとおりです。
- 施工条件を決める:母材、板厚、継手、開先、溶加棒、火口、溶接姿勢を確認します。
- 作業場所と保護具を確認する:換気し、可燃物を除去・養生して消火設備を準備します。遮光保護具、難燃性作業服、手袋、安全靴を着用します。
- 機器を点検する:容器、調整器、ホース、安全器、トーチ、火口の損傷・緩み・漏れを、メーカー指定の方法で確認します。
- 点火して炎を調整する:有資格者が取扱説明書どおりに供給圧力を設定し、専用点火器で点火して、母材と施工に適した炎へ調整します。
- 仮付け後に本溶接する:継手のずれを防ぐため仮付けし、溶融池を観察しながらトーチと溶加棒を一定に進めます。
- 停止・点検する:取扱説明書の順序で消火、容器弁の閉止、残圧処理を行い、溶接部の外観、変形、必要な品質を確認します。
引用元:モノタロウ
炎は燃料ガスと酸素の混合比で状態が変わります。母材と施工目的に合わない炎は、酸化、すす、溶接欠陥の原因になります。「白心の大きさ」だけで判断せず、使用するトーチ・火口の説明書と技能講習で習得した方法に従って調整します。
これらの作業手順については以下の動画も参考にしてみてください。
ガス溶接に必要な資格
労働安全衛生法施行令第20条第10号では、可燃性ガスと酸素を用いて行う金属の溶接・溶断・加熱を就業制限の対象業務としています。事業者は、ガス溶接技能講習を修了した者など、法令で定める資格を持つ人を業務に就かせる必要があります。
ガス溶接技能講習
厚生労働省「ガス溶接技能講習規程」では、学科8時間、実技5時間を規定しています。学科の内訳は、設備の構造・取扱方法4時間、可燃性ガスと酸素3時間、関係法令1時間です。実技では、容器、導管、吹管、圧力調整器、安全装置、圧力計などの取扱いを5時間学びます。
ガス溶接作業主任者
ガス溶接作業主任者は、すべての携帯式ガス溶接作業で一律に選任するものではありません。労働安全衛生法施行令第6条第2号が定める、アセチレン溶接装置またはガス集合溶接装置を用いる溶接・溶断・加熱作業では、免許を持つ者から作業主任者を選任します。設備構成を確認して判断してください。
免許試験の主な科目は次のとおりです。
- ガス溶接等の業務に関する知識
- 関係法令
- アセチレン溶接装置及びガス集合溶接装置に関する知識
- アセチレンその他可燃性ガス、カーバイド及び酸素に関する知識
条件によっては、一部の試験科目を免除される場合もあります。詳しくは安全衛生技術試験協会公式サイトをチェックしてみてください。
ガス溶接の用途
ガス溶接は、薄い鋼板や小径鋼管の接合、設備・車両部品などの補修、電源を確保しにくい現場での手作業に用いられます。炎を連続的に調整しながら施工できるため、薄板や小物の作業に向きます。
同じトーチ系設備は、加熱、曲げ前の予熱、ろう付けにも利用されますが、ガス溶接とは施工法が別です。また、材質によって溶加棒、フラックス、炎の状態、前処理が異なります。重要部品や法令・規格の適用を受ける製品では、施工要領、作業者資格、検査方法まで発注前に確認しましょう。
ガス切断はガスを用いて切断する加工
ガス切断とは、ガスを使った炎で加熱し、被加工材を切断する加工方法のことです。別名「酸素切断」とも呼ばれています。
使用する機材は、可燃性ガスボンベ・酸素ボンベ・圧力調整器・ホース・トーチ・専用ライターとガス溶接とほぼ同じですが、トーチに関してはガス切断専用のものを扱います。
ガス切断の特徴とメリット・デメリット
ガス切断は、数mmの薄板から数百mmの肉厚な鋼材の切断に対応しています。また、小さい規模の設備で加工を行えるため、導入費用が安く抑えられるのが特徴です。
しかし、ステンレスやアルミニウムなどはガス切断には不向きです。これは、ガス切断が、母材より融点の低い酸化物を形成する鋼材のみ対応可能なため。ステンレスやアルミニウムは、高い融点の酸化物を生じるので、ガス切断ではなく、プラズマ切断やレーザー切断が採用されています。
参考:プラズマ切断について専門家が解説!特徴やレーザー切断との比較もしています!
また、ガス切断は手作業になるので、作業者の技術力が問われます。被加工材の厚みによって火力や切断のスピードの調節が必要なほか、切断面にブレがないように加工するには、経験を要します。
ガス切断の原理と手順
ガスの炎で加熱された鋼材は、火口の中心から高速で酸素を供給し、酸化鉄となります。この酸化鉄は鋼より融点が低く、酸素の噴流で吹き飛ばすことで切断する仕組みです。
危険な作業のため、ガス切断を行う前の準備として、保護マスク・革手袋・革前掛け・安全靴などを着用しておきましょう。
安全な服装が準備できたら、可燃性ガスボンベと酸素ボンベに圧力調整器を取り付けたのち、ホースとガス切断用トーチも繋ぎます。繋ぎ終えたら可燃性ガスボンベと酸素ボンベを開栓します。このとき、ガス漏れがないかも点検しておきましょう。
引用元:一般社団法人日本溶接協会
ガス切断に使うトーチは、燃料ガスバルブ・予熱酸素バルブ・切断酸素バルブの計3つのバルブがあります。点火・火炎調整は、技能講習で習得した方法と使用する切断器・火口の取扱説明書に従います。
ここから被加工材に炎を当てて切断します。炎を当てている箇所が赤くなってきた段階で、トーチの切断酸素弁を開くと鋼材の切断が可能です。ここから、切断したい方向に火口を移動させましょう。切断が終わるたびに、切断酸素バルブは閉じるようにしてください。
消火から片付けに関しては、準備とはほぼ逆の手順で行います。可燃性ガスボンベ・酸素ボンベの栓を閉めるまで進めたら、圧力調整器のバルブとトーチの3つのバルブも開いて、ホース内にあるガスと酸素を完全に抜く作業も行う必要があります。
これらの作業手順は以下の動画も参考にしてみてください。
ガス切断は、切断する鋼材の厚みによって火力や切断のスピードを適宜調節しながら行うのが大切です。また、薄肉の鋼材を切断する際は、火力を弱くして素早く切断すると、上手く加工できます。
ガス切断の火口は、燃料ガスの種類、切断する鋼材の厚み、切断器の型式に合わせて選びます。火口番号と適用板厚の対応はメーカー・型式で異なるため、取扱説明書の範囲を守ります。適用外の火口では、切断不良や逆火などの危険につながるため注意が必要です。
ガス切断に必要な資格
可燃性ガスと酸素を使うガス切断も、ガス溶接と同じ就業制限の対象であり、ガス溶接技能講習の修了などが必要です。アセチレン溶接装置またはガス集合溶接装置を用いる作業では、法令に従ってガス溶接作業主任者を選任します。
詳しくは、前述の「ガス溶接に必要な資格」の項を確認してください。
ガス切断の用途
ガス切断は、ステンレスやアルミニウムの加工には不向きですが、グラインダーなどでは手間のかかるような、厚みのある鋼材を切断する際に、多く利用されています。
まとめ
ガス溶接は炎で母材を溶かして接合し、ガス切断は予熱した鋼材を酸素で酸化・除去して切断します。共通する機器は多いものの、トーチの構造、施工原理、適する材料が異なります。
ガス溶接では、母材・板厚・継手に合うトーチと火口、溶加棒を選び、点検、換気、防火、保護具を徹底することが重要です。可燃性ガスと酸素を使う溶接・溶断・加熱は就業制限の対象なので、技能講習の修了者が機器の取扱説明書と事業場の手順に従って作業します。
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参考規格・資料
- 日本規格協会 JIS B 6801:2003「手動ガス溶接器,切断器及び加熱器」(2023年10月20日確認)
- 日本規格協会 JIS Z 3001-2:2018「溶接用語―第2部:溶接方法」(2022年10月20日確認)
- 厚生労働省「労働安全衛生法施行令」(第6条第2号、第20条第10号)
- 厚生労働省「ガス溶接技能講習規程」(学科・実技の科目と時間)
- 日本溶接協会 ガス溶断部会「活動成果」(ガス溶断器の点検案内)
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