クランプとは?金属加工で使う種類と選び方|切削・溶接・治具向けを解説

クランプとは、加工中にワークが動かないよう、挟む・押さえるなどの方法で固定する工具です。
金属加工では、切削、穴あけ、溶接、板金、組立、検査など、さまざまな工程で使用されます。
クランプが緩んだり、取り付け位置が不適切だったりすると、加工精度の低下やワークの飛び出しにつながるため、作業内容に合った種類を選ぶことが重要です。
クランプとは
金属加工で使われるクランプには、手作業で部品を仮固定するものと、工作機械や専用治具に取り付けてワークを固定するものがあります。
切削加工用のクランプは、ワークを工作機械のテーブルや治具へ確実に固定し、切削抵抗による移動や浮き上がりを防ぎます。加工治具には、汎用的なものから特定のワーク専用に設計されたものまであります。
溶接では、部材の位置や角度を保ちながら仮付けするために使われます。用途によって、必要な締付力、口開き、操作性、耐久性が異なります。
金属加工で使うクランプの種類
C型クランプ
C型クランプは、アルファベットのCに似た形状のクランプです。シャコ万力やG型クランプとも呼ばれます。
ねじを締め込むことで強く固定でき、溶接時の仮止め、部品の組立、穴あけ、手仕上げなどに使われます。
構造が簡単で強い締付力を得やすい一方、口開きの調整に時間がかかり、奥行きのあるワークには届かない場合があります。
F型クランプ
F型クランプは、長いバーに可動式の口金を備えたクランプです。
可動口金をワークの厚みに合わせてスライドできるため、C型クランプより口開きを素早く調整できます。
溶接構造物や比較的大きな部品の仮固定に便利ですが、製品によって締付力が異なるため、強い力が必要な作業では仕様を確認しましょう。
ロッキングプライヤー
ロッキングプライヤーは、ハンドルを握ると口金が固定される工具です。バイスグリップとも呼ばれます。
片手で素早く着脱でき、板金部品の仮止め、溶接、部品の保持などに適しています。
通常の口金に加えて、板材用、パイプ用、溶接用など、対象物に合わせた形状があります。
締付位置が狭い場合に便利ですが、接触面積が小さい製品では、ワークに傷やへこみが生じることがあります。
トグルクランプ
トグルクランプは、リンク機構を利用し、ハンドル操作でワークを素早く固定するクランプです。
治具に取り付けて使用することが多く、溶接、組立、検査、穴あけなどの繰り返し作業に向いています。
毎回ねじを回す必要がなく、同じ位置で固定しやすいため、作業時間の短縮と品質の安定につながります。溶接治具や計測治具などにも使用されています。
押さえる方向やハンドルの向きによって、立型、横型、押引型などがあります。
ステップクランプ
ステップクランプは、フライス盤やマシニングセンタのテーブルにワークを固定するためのクランプです。
クランプ本体、ステップブロック、スタッドボルト、Tスロットナットなどを組み合わせて使用します。高さを段階的に調整でき、さまざまな大きさのワークに対応できます。
汎用性が高く、大型部品やバイスで挟みにくい形状の固定に適しています。
一方、クランプ本体が工具の動線に入りやすいため、加工範囲との干渉を確認する必要があります。
ストラップクランプ
ストラップクランプは、板状のクランプ部品でワークを上から押さえるタイプです。
切削加工用治具の基本的なクランプで、穴加工や側面加工などに使われます。クランプする位置や高さに合わせて、ボルトや支持部品と組み合わせます。
押さえる位置がワークの端に近すぎると、変形や浮き上がりが発生する場合があります。
クランプの先端をワーク側に向かってわずかに下げ、ワークを治具の基準面へ押し付けるように設置することが重要です。
スイングクランプ
スイングクランプは、クランプアームが旋回しながらワークの上へ移動し、下方向へ押さえるタイプです。
アンクランプ時にはアームが加工範囲から退避するため、ワークの着脱がしやすく、工具との干渉も抑えられます。
マシニング加工のワーク固定に使用でき、繰り返し作業や自動化治具にも向いています。
手動式のほか、油圧式や空圧式もあります。
クサビクランプ
クサビクランプは、クサビの作用を利用し、横方向からワークを固定するクランプです。
本体が低くコンパクトなため、ワーク上面を広く加工でき、工具との干渉を減らしやすい点が特徴です。
マシニング加工のワーク固定に使用され、複数個のワークを並べる多数個取り治具にも適しています。
製品によっては、横から押す力と同時に、ワークを基準面へ引き下げる機能があります。
溶接作業で使うクランプ
溶接では、部材の位置や角度を保ち、仮付け中のずれを防ぐためにクランプを使います。
平板や形鋼の固定にはC型・F型クランプ、素早い仮止めにはロッキングプライヤー、繰り返し作業にはトグルクランプが便利です。
ただし、締め付ければ必ず溶接変形を防げるわけではありません。
溶接順序、入熱、仮付け位置も考慮し、必要に応じて拘束用の治具や補強材を使用します。
クランプを溶接部の近くに設置する場合は、スパッタや熱による損傷にも注意しましょう。
切削加工で使うクランプ
フライス盤やマシニングセンタでは、切削抵抗を受けてもワークが動かないよう、十分な保持力が必要です。
大型部品や不定形のワークにはステップクランプ、小型部品の多数個取りにはクサビクランプ、着脱性を重視する場合はスイングクランプなどが使われます。
クランプは、単に強く締め付けるだけでは不十分です。
切削力を受ける方向にストッパーを設け、ワークを基準面へ確実に押し付けることで、クランプへ過度な負担が集中するのを防げます。
クランプの選び方
クランプを選ぶ際は、ワークの大きさと形状、作業内容、必要な締付力を確認します。
溶接や組立の仮固定では、着脱のしやすさが重要です。切削加工では、締付力に加えて、剛性、繰り返し精度、工具との干渉を確認します。
繰り返し作業が多い場合は、トグルクランプやスイングクランプなど、短時間で着脱できるタイプが有効です。
薄板、アルミ、仕上げ面のある部品では、締め付けによる変形や傷にも注意しましょう。必要に応じて、保護口金や当て板を使用します。
クランプとバイスの違い
クランプは、ワークと作業台、または複数の部材を一時的に固定する工具の総称です。
バイスは、固定口金と可動口金の間にワークを挟む固定工具で、通常は作業台や工作機械のテーブルに本体を取り付けて使用します。
クランプは取り付け位置の自由度が高く、不定形ワークや大型部品にも対応しやすい点が特徴です。
バイスについては、関連記事「バイス(万力)とは?種類と選び方|マシンバイス・5軸用センタリングバイスも解説」もあわせてご覧ください。
クランプを使用するときの注意点
使用前には、クランプ本体、ねじ、口金に変形や摩耗がないか確認します。
ワークとクランプの接触面に切粉や異物があると、傾きや傷の原因になります。取り付け前に清掃し、ワークが基準面へ正しく当たっているか確認しましょう。
締付力が不足するとワークが動きますが、締めすぎると薄物や軟らかい材料が変形します。
また、加工中に工具や主軸がクランプへ接触しないよう、工具経路と高さを事前に確認することも重要です。
まとめ
クランプは、切削、溶接、板金、組立などでワークを固定するための工具です。
手作業ではC型・F型クランプやロッキングプライヤー、繰り返し作業ではトグルクランプが使われます。
フライス盤やマシニングセンタでは、ステップクランプ、ストラップクランプ、スイングクランプ、クサビクランプなどを、ワーク形状や加工範囲に合わせて使い分けます。
選定時は、締付力だけでなく、ワークの変形、工具との干渉、着脱性、繰り返し精度を確認し、安全かつ確実に固定できるクランプを選びましょう。
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