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ABS樹脂の特徴・メリット・用途を解説!

2025-01-13

更新

この記事を監修した人

金属加工業界最大級のマッチングプラットフォーム「Mitsuri」を手掛ける企業。
「未来の製造業をつくる」をモットーに、製造業DXを推進している。

「ABS樹脂」という材料をご存知でしょうか。あまり聞き慣れない材料かもしれませんが、機械的性質や加工性などに優れることから、非常に幅広い分野で利用されている材質です。例えば、私たちの生活に身近なところでは、冷蔵庫、洗濯機、テレビなどの家電用品から、ノートパソコンやカメラなどの精密機械、さらには旅行用のキャリーケースまで、さまざまな用途で使用されています。

今回は、この「ABS樹脂」をテーマに、その基本的な知識に加え、ABS樹脂の特徴やメリット・デメリット、さらに用途について幅広くご説明いたします。これからABS樹脂を用いて製品の製作を検討している方、またABS樹脂についてさらに知識を深めたい方はぜひご一読ください。

 

参考:樹脂加工とは?素材の種類と加工方法

 

ABS樹脂は3種類の樹脂の特徴を兼ね備えている

ABS樹脂は、乳白色半透明のプラスチックで、1950年代にアメリカの企業によって開発された材料です。ABS樹脂という名前は、その化学構造に由来します。

<ABS樹脂の化学式>

引用元:株式会社KDA

ABS樹脂は上図のような化学構造を有し、アクリロ二トリル(左)、ブタジエン(中央)、スチレン(右)から成るポリマー(重合体)です。これらの3つの頭文字をとって、ABS樹脂と命名されました。

アクリロニトリル、ブタジエン、スチレンは、それぞれ異なる特徴を持ちます。以下、各物質がどのような特性に優れているかを示しました。

・アクリロニトリル:耐熱性、機械的強度、耐油性

・ブタジエン:ゴムの特性、耐衝撃性

・スチレン:光沢性、加工性、安定性

このように、ABS樹脂は上記3つの物質の特性を兼ね備えています。もちろん、どの物質がより高い比率で含まれているかによって、ABS樹脂の性質は変化します。一般に、ABS樹脂は、加工性に優れ、耐衝撃性や機械的強度に優れます。その他にも、外観は光沢があり美しい質感を有するため、デザイン性が求められる製品においても広く利用されています。

Mitsuriは、ABS樹脂を用いた製品の加工に対応している多数のメーカーと提携しています。ぜひお気軽にお問い合わせください。

 

ABS樹脂のメリット

次に、ABS樹脂のメリットについて見ていきましょう。ABS樹脂の長所には以下のような点が挙げられます。

①機械的性質に優れる

前述した通り、ABS樹脂は3種類の物質の機械的特性を合わせ持ち、機械的強度にも優れたプラスチック材料と言えます。機械的強度特性(引張強さ、圧縮強さ、曲げ強さ)について、ABS樹脂とその他の汎用プラスチックでも代表的なポリエチレンとポリプロピレンとを比較した表を以下に示しましたが、ABS樹脂の特性が優れることが分かります。

  ABS樹脂 ポリエチレン ポリプロピレン
引張強さ (MPa) 23-55 23-31 31-41
圧縮強さ (MPa) 45-52 19-25 38-55
曲げ強さ (MPa) 66-96 20-31 41-55

出典元:株式会社KDA

また、ABS樹脂の衝撃強さは3.8~66Kg・cm/cmです。アクリル(1.6~2.7Kg・cm/cm)やポリスチレン(1.4~2.2Kg・cm/cm)と比較すると、衝撃強度にも優れることが分かります。

②加工性に優れる

ABS樹脂の最大の特徴とも言えるのが「加工性の良さ」です。プラスチック成形においてよく利用される、射出成形や押出成形はもちろんのこと、真空圧空成型、カレンダー成形加工などが可能です。また、切削、接着、溶着の他、メッキや塗装などの表面加工も容易に施すことができ、さまざまな加工方法に対応しています。

特に、塗装加工においては、着色性も優れるという点もメリットの一つとして挙げられます。ABS樹脂の加工性の良さを活かして、最近では、3Dプリンターに使用する材料としても広く利用されています。

③表面光沢性のある外観を作り出せる

引用元:株式会社オークマ工塗

ABS樹脂は、上図に示したような、高級感のあるピアノブラックの色調をした外観を作り出すことができるため、薄型テレビやプリンターなどに広く利用されます。このようなピアノブラックの色調を持つABS樹脂の製品を製作する場合には、一般に鏡面仕上げをした金型を用いた射出成形加工が用いられます。研磨と塗装を繰り返すことでも可能ですが、射出成形加工という製法を選定することで、二次加工仕上げが不要で、よりきれいな鏡面製品の成形が可能となります。

参考記事:射出成形の仕組みやメリットを解説!他の加工法との比較も

以上が代表的なABS樹脂のメリットとなりますが、その他にも、寸法安定性が良く、経時変化によるサイズ変化が少ないといった特徴も挙げられます。

 

ABS樹脂のデメリット

次に、ABS樹脂のデメリットについても見ていきましょう。ABS樹脂の短所には以下のような点が挙げられます。

①耐候性に劣る

ABS樹脂は、耐候性にはあまり優れておらず、紫外線や太陽光にさらされることによって、劣化しやすい材料です。そのため、ABS樹脂は一般に、屋内で使用される製品に利用されます。しかし、近年ではウレタン塗装を表面に施すことによって耐候性を高めたABS樹脂なども存在します。

②可燃性である

ABS樹脂は可燃性の材質です。そのため、製品に使用する場合、高温下では燃えてしまう可能性もありますので、注意が必要です。

例えば、家具や建材などに使用する場合、火災時にABS樹脂自体が燃えてしまうと、あちこちに延焼してしまったり、有毒なガスが発生する恐れがあります。そこで近年では、難燃性のABS樹脂の開発も進められています。設計上難燃性が必要な場合には、難燃性グレード(プラスチック材料について、燃えにくさの度合いを表す指標)を確認し、適切な材料を選定することをおすすめします。

また、ABS樹脂の耐熱温度は、一般に70〜100℃ほどと言われており、ポリエチレン(70〜90℃)やポリスチレン(70〜90℃)、ポリ塩化ビニル(60~80℃)などのその他汎用プラスチックと同程度の耐熱性を示します。

ただし、ポリプロピレン(100~140℃)などの耐熱温度には劣ります。特に、製品を煮沸したり、製品が沸騰した水などに触れる可能性がある場合、ABS樹脂では溶解したり変形してしまいますが、ポリプロピレンは耐性を有しています。

例えば、食器洗い洗浄機や電子レンジなどでの使用する製品を設計する際には、ABS樹脂ではなく、ポリプロピレン製にするなど、材料の性質を十分に考慮して設計することが重要となります。

この他にも、ABS樹脂を加工する際には独特の臭いを発する点も短所として挙げられます。また、ABS樹脂は弱酸や弱アルカリなどには耐性を有する一方、有機溶剤や鉱物油、アルコールなどには弱く、これらの物質によって侵食され劣化してしまう恐れがあるため、注意が必要です。

 

ABS樹脂の用途

上述した通り、ABS樹脂は多くの長所を有し、さまざまな加工方法に対応していることから、非常に幅広い産業分野にて利用されています。それでは、ABS樹脂がどのような分野でどのような用途に使用されているか見ていきましょう。

まず、ABS樹脂の代表的な用途として、家電製品や精密機器が挙げられます。例えば、テレビ、冷蔵庫、掃除機、洗濯機、カメラ、パソコン、プリンターなどの筐体やハウジング(装置などを包んで保護するための部品)などに使用されています。他にも、プラモデルなどのおもちゃ、文具、キャリーケース、スポーツ用品や楽器などにも利用されています。

また、ABS樹脂は、自動車部品や工業部品にも欠かせません。自動車部品では、メーターケース、コンソールボックス、ラジエターグリルやその他内装部品など、広く利用されています。このように、ABS樹脂は私たちの生活に欠かすことができない材質の一つだということがわかります。

Mitsuriは、さまざまな用途に利用されるABS樹脂の加工に対応している多数のメーカーと提携しています。ぜひお気軽にお問い合わせください。

 

まとめ

本記事では、「ABS樹脂」をテーマに、その基本的な知識に加え、ABS樹脂の特徴やメリット・デメリットのほか、その用途などについて詳しく解説いたしましたが、いかがでしたでしょうか。一口に樹脂と言っても、さまざまな材質が存在します。その中でも、ABS樹脂は特に加工性に優れ、機械的強度についても優れたプラスチック材料です。これから樹脂を用いた製品の設計を予定している方は、ぜひABS樹脂の使用もご検討ください。

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