溶接記号の一覧【基礎講座】溶接指示を徹底理解!種類と書き方をマスターしよう

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【5分でわかる】溶接記号の見方、書き方

溶接記号の見方、書き方について動画でも解説しています!
噛み砕いて解説しているので、ぜひ参考にしてください!

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溶接記号は規格化されていて、溶接記号を見ればひと目で、溶接の種類、開先の形状・深さ・角度、ルート間隔、非破壊検査方法などが分かります。製図者の指示通りに溶接するために、溶接記号の理解は必要不可欠です。代表的な補助記号も合わせて学びましょう。

溶接記号の基本形を学ぼう

溶接記号の基本形、基線・矢・基本記号の例図1:溶接記号の基本形、基線・矢・基本記号の例 

溶接記号とは、JIS規格で定められた溶接の仕方を指示するための記号です。図1に溶接記号の基本形を図示しました。溶接記号の基本形は、溶接する箇所を示す「矢」と水平に引いた「基線」です。基線に合わせて、基本記号と寸法を書きます。「表面形状の補助記号」や「仕上方法の補助記号」「尾」はオプションで、特に指示がなければ書きません。

母材の開先(かいさき)方向は、基本記号を基線の下側に書くか、上側に書くかで区別します。基線の下側に基本記号が書かれている場合は、矢が指す側から溶接します。基線の上側に基本記号が書かれている場合は、矢の反対側から溶接します。基本記号に「ルート間隔」や「開先角度」を書き、基本記号の左側に「開先深さ」を書きます。

参考:溶接の種類はこの記事だけでOK!3分でわかる金属加工で代表的溶接方法! 

溶接記号全般 

基本記号
一覧
I型開先 V型開先 レ型開先 J型開先 U型開先 K型開先 X型開先 すみ肉溶接
開先形状
基本記号

V型フレア溶接 レ型フレア溶接 へり溶接 プラグ溶接・スロット溶接 ビード溶接 肉盛溶接
キーホール溶接 スポット溶接・プロジェクション溶接 シーム溶接 スタッド溶接 サーフェス継手 スカーフ継手

図2:溶接の基本記号一覧

図2に、溶接の基本記号一覧を示しました。基本記号とは、溶接部の開先形状や溶接方法を指示する記号です。開先(かいさき)とは別名「グルーブ」とも呼ばれ、母材をつなぎ合わせる溝を指します。開先は溶接部の強度を確保するために重要な箇所で、様々な種類があります。

適切な開先形状を選ぶことで、溶接作業を楽にできたり、溶接の欠陥が起きにくくなったり、溶着量が少なくて済んだりします。ただし、開先を取るには母材の加工が必要なので、溶接指示は上記メリットと加工のロスや手間を考慮したうえで、バランス良く選択する必要があります。

図3:突合せ溶接の断面図

図3は、実際の溶接状態(左)と溶接記号で指示した図(右)です。基本記号の左側に書いてある数字(24)は開先の深さ、基本記号の下に書いてある数字は、ルート間隔(4)と開先の角度(90°)を示しています。これらは開先の形状が異なっていても、意味は同じです。

開先はI型、V型、レ型、J型、U型、K型、X型など、様々な種類があります。J型開先はレ型開先と形状が似ていますが、母材の片側にアールが付いており、開先加工が難しい点で異なります。またU型開先も同様に、両側にアールが付いているため、開先加工が難しいです。 

すみ肉溶接の溶接記号

すみ肉溶接(T字)図4:すみ肉溶接(T字)  

すみ肉溶接(平行)図5:すみ肉溶接(平行) 

鋼板同士をT字につなぎ合わせたり(図4)、平行に重ねたものをつなぎ合わせたり(図5)する溶接方法を「すみ肉溶接」といいます。

すみ肉溶接の溶接記号は、三角の記号で表します。基線よりも下側に基本記号がある場合は、矢の示している箇所をすみ肉溶接します。基線より上側に基本記号がある場合は、矢の反対側をすみ肉溶接します。基本記号の前にある数値は、溶接の脚の長さです。一般的には、両側で溶接の脚長を同じにすることが多いですが、下記の図ではわかりやすいように異なる寸法で示しています。すみ肉溶接の溶接記号の書き方と実際の溶接

図6:すみ肉溶接の溶接記号の書き方と実際の溶接

断続すみ肉溶接(並列・千鳥)の溶接記号

すみ肉溶接には、連続すみ肉溶接と断続すみ肉溶接(タップ溶接)があります。さらに断続すみ肉溶接は、並列断続すみ肉溶接と千鳥断続すみ肉溶接の2種類に分類できます。千鳥の溶接記号は、上下の三角記号を互い違いにずらして書きます(図7)。

すみ肉溶接の分類と並列・千鳥の溶接記号の書き方

図7:すみ肉溶接の分類と並列・千鳥の溶接記号の書き方

図8に千鳥断続すみ肉溶接の溶接記号と、実際の溶接状態を表しました。基線の下側基本記号は、溶接の脚長(6)、溶接の幅(30)、溶接の数( (3) )、溶接のピッチ(120)を示しています。

※並列断続すみ肉溶接において矢の反対側も同じ溶接である場合、基線の片側の数値は省略できます。

図8:千鳥断続すみ肉溶接の溶接記号と実際の溶接状態

図9:並列断続すみ肉溶接の溶接記号と実際の溶接状態

溶接補助記号の一覧

表面形状 平ら へこみ 止端仕上げ
溶接補助記号

仕上げ方法 チッピング 研削 切削 指定なし
溶接補助記号 C G M F

裏波溶接 裏当て 現場溶接 全周溶接 全周現場溶接
溶接補助記号

非破壊検査方法
RT 放射線透過試験(JIS Z3104)
UT 超音波探傷試験(JIS Z3060)
MT 磁粉探傷試験
PT 浸透探傷試験 
LT 漏れ試験
VT 目視試験
ST ひずみ測定試験
AET(AT) アコースティック・エミッション試験
ET 渦電流探傷試験
TT 赤外線サーモグラフィ試験
全周試験(試験記号の後に付加)

溶接補助記号は基本記号と合わせて表示し、溶接に必要な情報を追加します。表面形状(平ら、凸、へこみ、止端仕上げ)やビード仕上げ、裏波溶接、裏当てなどを指示します。

溶接補助記号① 裏波溶接

溶接補助記号の例、V型開先の裏波溶接

図10:溶接補助記号の例、V型開先の裏波溶接

裏波溶接の補助記号は、基線に黒の半円です(図10左)。裏波溶接は、突合わせ溶接のルート側面の隙間を完全に覆うようにビード(溶接時にできる帯状の盛り上がり)を出したい場合に用いられます。矢を示している側とは反対の面の指示になるので、裏波溶接の補助記号は基本記号の反対側に配置します。裏波溶接の補助記号前に書かれている数字は、必要なビードの高さです。

裏波溶接をすると、母材同士の隙間のない完全溶込が確実な状態になります。高い強度が期待できるほか、異物混入も防げるメリットがあります。

溶接補助記号② 裏当て

裏当てとは「裏当て金」という材料を、溶接する側と反対面に配置する溶接です。裏当ての溶接補助記号も、基本記号の反対側に配置します。裏当て金は一方の面から溶接する際に、反対側への溶け落ちを防ぐために使用し、母材と一緒に溶接します。

溶接補助記号③ 表面形状(平ら・凸・へこみ・止端仕上げ)

表面形状の溶接補助記号は、ビード(溶接時にできる帯状の盛り上がり)表面の仕上げ方を指示します。

表面形状 突合せ溶接
平ら
へこみ
止端仕上げ
母材の面とビードが交わるラインを仕上げる指示

溶接補助記号④ 現場溶接と工場溶接、全周溶接

全周現場溶接の溶接指示例

図11:全周現場溶接の溶接指示例

図11は、全周現場溶接の指示例です。現場溶接とは、組立現場での溶接です。建築や大型設備の溶接で指示されることがあります。全周溶接は、接合部の全周に渡って、全てを同じ溶接方法でおこなう溶接です。全周現場溶接は、現場でおこなう全周溶接です。

溶接補助記号⑤ 非破壊検査

非破壊検査の溶接記号例

図12:非破壊検査の溶接記号例

図12は、非破壊検査の溶接記号例です。非破壊検査は、モノを壊さずに欠陥を調べる検査です。製品の品質担保のためにおこなわれ、外観検査と併用されるのが一般的です。時期(欠陥発生中か欠陥発生後か)や欠陥箇所(表面、表層部、内部、全て)、欠陥形状、材質によって適切な検査を選びます。

溶接の検査において主におこなわれるのは、放射線透過試験や超音波探傷試験です。溶接部内部の欠陥有無、欠陥形状や大きさを調べます。非破壊検査の記号は基線を2段にし、上段に書きます。

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