【タフトライド処理の基礎】防錆、硬度・寸法変化!焼入れとの違いを解説

表面処理 | 2021年01月25日

「タフトライド処理」とはどのような加工かご存知でしょうか?金属加工を生業とする方や、機械部品を扱う方以外は聞きなれない単語かもしれません。

タフトライド処理は、主に表面硬化を目的とした処理ですが、一度の処理でさまざまなメリットがあります。耐摩耗性や耐かじり性が向上するため、摩擦の多い摺動部などの機械部品にタフトライド処理は重宝します。

この記事では、タフトライド処理について知らない方に向け、基礎知識を解説します。また、「タフトライド処理の防錆効果は?」「硬度をどのくらい得られる?」「寸法変化は起きる?」といった疑問にもお答えします。

タフトライド処理の知識を深めたい方は、ぜひ参考にしてみてください。

cta

タフトライド処理とは

タフトライド処理とは、「塩浴軟窒化処理」とも呼ばれている窒化硬化処理のひとつです。タフトライド処理をすることで、材料の表面に窒素をしみ込ませて金属元素と結合し、薄い窒化層を形成します。この窒化層は硬度が高く、摺動性も良好。耐摩耗性と耐かじり性の向上が期待できます。

用途としては、部品同士が互いに擦れ合うような、摩耗の激しい機械部品であるクランクシャフトやベアリングなどに多く採用されています。

窒化硬化処理には、「窒化」と「軟窒化」の2種類があります。窒化は、厚みのある硬化層が得られ、表面硬さも軟窒化より硬いのが特徴。その反面、処理時間が20時間以上かかるというデメリットがあります。軟窒化は、硬化層が窒化に比べて薄いものの、処理時間が1~3時間程度で済む点はメリットです。今回ご紹介しているタフトライド処理は、軟窒化の部類に該当します。

タフトライド処理は、500~600℃程度の塩浴(ソルトバス)に1~3時間ほど被加工材を浸け、表面に薄い窒化層を形成させます。タフトライド処理を行った製品は、ねずみ色や白灰色になる点が特徴です。

引用元:ものづくり市場


引用元:ものづくり市場

上の1枚目の写真は、タフトライド処理前の製品。2枚目の写真は、タフトライド処理後の製品です。2枚目の写真を見ると、つや消しのねずみ色のように変化していることが分かります。

処理後はそのまま使用されるのが一般的ですが、表面の滑らかさが必要な場合は、ラッピング研磨・バフ研磨などで磨く場合もあります。

参考:研磨加工とは?種類と加工手順、除去加工まで専門家が解説!

タフトライド処理の注意点として、塩浴に使用するシアン酸塩は毒性があるため、公害防止対策が必要です。しかし近年では、シアン酸塩が少ないタフトライド処理を開発している加工業者もあります。

タフトライド処理の公害防止対策が難しい場合は、代替案としてガス軟窒化を採用している加工業者も存在します。ガス軟窒化は、公害防止対策が不要なほか、タフトライド処理と同等の効果が期待できます。

焼入れとの違い

焼入れは、金属材料を一定の温度に加熱・冷却し、硬度を上げる処理です。「硬度を上げる」という目的はタフトライド処理も同様ですが、焼入れの場合、ズブ焼入れなどの種類によっては、表面だけでなく材料の内部まで硬化が可能です。

しかし、焼入れは、強引に金属の組織変化を起こしているため、歪みや寸法変化のリスクがあります。これにより、高い品質や精度が求められる製品は、焼入れをした後に仕上げ工程が必要です。

一方、タフトライド処理は、変態点温度(鋼が組織変化する温度)よりも低い温度で処理を行うため、焼入れよりも歪みが少なく抑えられます。


参考:焼入れとは?焼入れの種類ごとの特徴に分けて解説!

硬度と膜厚

タフトライド処理の膜厚は、0.01~0.3mm程度と非常に薄い特徴があります。膜厚が薄いため、寸法と重量の変化の影響が少ない点はメリットです。ただし、膜厚が薄いということは、硬化している層もその分薄いということ。高い寸法精度よりも、耐衝撃性を求められる場合は、焼入れでの表面硬化も検討してみましょう。

材質

タフトライド処理後の

表面硬度(HV)

※実用窒化深さ0.05~0.1mm

タフトライド未処理の

表面硬度(HV)

SPCC

400~500

105以下

SS400

400~500

120~140

S45C

450~600

201~269

SCM440

750~850

285~352

SACM645

1100~1300

241~302

SUS304

1100~1300

200以下

上表は、タフトライド処理後とタフトライド未処理のビッカース硬さの参考値を比較した表です。タフトライド処理後の表面硬度は、株式会社栗山熱処理の公式HPに掲載されている、各材料にタフトライド処理を行った際の硬度の値です。

材質によりますが、一般的によく使われる炭素鋼(S45C)や合金鋼(SCM440)で、ビッカース硬さ450~850HV程度の硬度が得られ、アルミニウムクロムモリブデン鋼(SACM645)・ステンレス(SUS304)では、1100~1300HV程度の優れた硬度が得られます。 

材質

タフトライド処理は、炭素鋼・合金鋼・ステンレス・鋳鉄など、幅広い材質に対応しています。また、少量多品種の処理も対応しやすい特徴があります。



タフトライド処理後の錆発生と防錆対策

タフトライド処理は、炭素鋼などの不働態皮膜を形成しないものに対しては、亜鉛メッキや硬質クロムメッキ程度の防錆効果が期待できます。

しかし、もともと防錆効果の高いステンレスに対して、タフトライド処理を行った場合は、防錆効果が低下するので注意してください。これは、タフトライド処理を行うことで、材料表面の不働態皮膜が破壊され、クロム窒化物が生成されるためです。不働態皮膜は防錆効果を生みますが、破壊されてしまうと錆びが発生しやすくなります。

ステンレスにタフトライド処理を行った材料に対して錆びを防ぎたい場合は、防錆油を塗布する必要があります。また、別の対策として、ステンレスにタフトライド処理ではなく、硬度の高い硬質クロムメッキ処理を行うといった対策を行うのもひとつの方法です。


参考:【メッキ処理とは?】目的・仕組み・種類・特徴について徹底解説!

参考:錆びにくい金属について解説【錆びない金属はありません】



タフトライド処理後の寸法変化

タフトライド処理で形成する膜厚は、0.01~0.3mm程度のため、寸法変化が少なく済みます。また、変態点温度(鋼が組織変化する温度)よりも低い温度である、500~600℃程度で処理を行うので、製品の変形も抑えられます。

しかし、残留応力がある材料に対してタフトライド処理を行うと、その温度により応力が開放し、変形する場合があります。例えば、より高い硬度や耐衝撃性を得ようとして、予め熱処理をした材料にタフトライド処理を行うと、残留応力が発生して、材料の変形が起きるケースもあるので注意が必要です。



タフトライド処理とイソナイト処理との違い

結論から述べると、タフトライド処理とイソナイト処理はどちらも商標で、処理方法は同じです。

タフトライド処理は、ドイツのデグサ社と呼ばれる企業の商標。一方、イソナイト処理は、日本パーカライジング社の商標になります。これらは、JIS規格では「塩浴軟窒化」に該当する加工方法です。

そのため、仮に図面で「タフトライド処理」や「イソナイト処理」と書かれていても、処理する方法は同じ「塩浴軟窒化処理」になります。

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Mitsuri編集部
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