制約理論とは、「Theory of Constraints(TOC)」の日本語を訳したもので、生産性の低いボトルネック・制約条件を見つけ、その改善を図ることで業務全体の最適化を行い、生産性を高めることを目的とした考え方です。製造業の生産分野のほか、経営マネジメントなどの分野でも用いられることがあります。
制約理論とは?基本的な考え方と目的
制約理論は、「製造業などにおける生産性は、制約条件(ボトルネック)に依存していて、その制約条件を改善することで、業務全体のパフォーマンスが向上する」という考え方に基づいています。ボトルネックの特定→改善を行うことで、業務全体の最適化を行い、処理能力(スループット)を向上させること、つまり生産性を高めることを目的としています。
制約理論で進める業務改善手順
制約理論では、以下のような5つの業務改善手順を踏むことで、継続的な業務の改善を行います。
(1)業務全体のボトルネックを特定する
第1ステップでは、業務プロセス全体の中からボトルネック、つまり全体の生産性を規定してしまっている工程を見つけます。工場の生産ラインにおいて特に時間を要する工程や、生産能力や作業効率が悪い工程が挙げられます。
ボトルネックの特定に当たり、プロセス全体の工程を、各工程の処理能力と合わせて可視化することで、どこがボトルネックとなっているかが把握しやすくなります。特に製造業の生産分野では、3M(ムリ・ムダ・ムラ)の発生や、装置による生産量の制限などがボトルネックにつながります。
参考:7つのムダ例「かざふてつどう」製造業のコスト改善を考える
(2)ボトルネックを最大限に活用する
ボトルネックとなる工程がある場合、その処理能力(スループット)が業務全体の処理能力に大きく影響することがあります。そのため、第2ステップでは、ボトルネックとなっている工程のパフォーマンスを最大限に活用する、つまりその処理能力を最大にする方法を考えていきます。
この段階では、新たな設備の導入や新たな人員の確保などは検討せず、現状の設備、人員数を持って、パフォーマンスを高めることにフォーカスします。ボトルネックとなっている工程に、どのような障害・不具合があるかを判断した上で、対策を検討します。製造工程においては、段取り時間の短縮、トラブルの削減、材料待ち時間の削減、歩留まりの向上、稼働時間の延長などが方法として挙げられます。
(3)業務プロセスをボトルネックに合わせる
第3ステップでは、業務全体の処理能力をボトルネックとなっている工程の処理能力に合わせていきます。これによって、業務全体が無駄を省いた効率的なプロセスに最適化されます。
例えば、製造工程ではボトルネック工程の処理能力に合わせて資材を投入するということが行われます。これにより、全工程の処理能力のバランスが取れ、結果的に生産スケジュール及び在庫の最適化につながります。
(4)ボトルネックの能力を向上させる
第4ステップでは、ボトルネックの処理能力を高めることで、業務プロセス全体の処理能力の向上を図ります。例えば、新規設備の導入や遊休設備の改造などといった設備強化の他、新たに優れた人材を採用するという方法が考えられます。ここでは、需要の変化や、製品設計の変更など将来的に起こりうる変化を考慮した上で、対策を取ることが重要となります。
(5)新たなボトルネックを探す
ボトルネックとなっていた工程の改善を行い、処理能力が向上した後は、制約条件(ボトルネック)が変わる可能性もあります。そのため、第1ステップに戻り、新たなボトルネックの解消に向け、さらなる業務改善を図ることが重要となります。