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SUS317L(ステンレス鋼)比重、用途、成分

2024-09-18

更新

この記事を監修した人

染谷 ひとみ

Mitsuri Media管理人

精密板金加工工場のインサイドセールスとして加工と寸法の提案をしてきた経験を経て、製造業の知見と楽しさを提供している。 幼少期からモノの構造を理解するのが好き。JAPAN MENSA会員。

SUS317Lは耐粒界腐食性に優れた材料です。SUS317Lは、JIS規格である【JIS G 4303:ステンレス鋼棒】や【JIS G 4308:ステンレス鋼線材】などに規定されている、オーステナイト系ステンレス鋼の一種です。オーステナイト系ステンレス鋼は、一般的に高温になると強度が上がり、低温でも脆くなりにくい性質を持ちます。

SUS317よりも炭素(C)の含有量が少ない極低炭素鋼で、耐粒界腐食性に優れています。

参考:SUS317(ステンレス鋼)用途、成分、機械的性質

SUS317Lの用途

SUS317Lは、耐酸性が必要な化学工業設備に用いられます。

材質の末尾にLがついたステンレス鋼は、Lグレードと呼ばれています。Lグレードのステンレス鋼は、クロム(Cr)と炭素(C)が結合することにより耐食性が損なわれる「鋭敏化」が起こりにくい材料です。

鋭敏化は、ステンレス鋼を550~900℃程度まで加熱した際に発生しやすく、「粒界腐食」と呼ばれる局部的な腐食を誘発してしまいます。そのため、溶接や熱処理、高温での使用の際は注意が必要です。下の画像は、溶接熱によって生じた粒界腐食を表しています。

引用元:ステンレス協会

粒界腐食を防ぐには、炭素量が少ないステンレス鋼を使うのが効果的です。そのため、炭素量が0.03%以下であるSUS317Lは、粒界腐食を防ぐのに適しています。

またSUS317Lは、モリブデン(Mo)を含有しており、サビを防ぐ不働態皮膜が破れても、修復を助ける機能を有しています。これによりSUS317Lは、モリブデンを含有していないSUS304よりも、耐食性は良好です。

SUS317Lの化学成分、組成

<SUSの化学成分(単位:%)>

種類の記号 C Si Mn P S Ni Cr Mo Cu N その他
SUS317L 0.030以下 1.00以下 2.00以下 0.045以下 0.030以下 11.00~15.00 18.00~20.00 3.00~4.00 - - -
SUS317 0.08以下 1.00以下 2.00以下 0.045以下 0.030以下 11.00~15.00 18.00~20.00 3.00~4.00 - - -
SUS304 0.08以下 1.00以下 2.00以下 0.045以下 0.030以下 8.00~10.50 18.00~20.00 - - - -

引用元:JIS G 4303:2012

上表は、【JIS G 4303:ステンレス鋼棒】に記述されている、SUS317Lをはじめとした化学成分の値です。比較のために、似た材料であるSUS317と、市場で多く出回っているSUS304の値も抜粋しています。

SUS317Lは、SUS317・SUS304と比べて炭素(C)が少ないのが特徴です。これにより、耐粒界腐食性を向上しています。また、モリブデン(Mo)を含有しているため、不働態皮膜が破壊されやすい環境でも、耐食性を保つ特徴があります。

SUS317Lの機械的性質

<SUSの機械的性質>

記号 耐力Mpa (N/mm2) 引張強さMpa (N/mm2) 伸び 絞り 硬さ
HBW HRBS又はHRBW HV
SUS317L 175以上 480以上 40以上 60以上 187以下 90以下 200以下
SUS317 205以上 520以上 40以上 60以上 187以下 90以下 200以下
SUS304 205以上 520以上 40以上 60以上 187以下 90以下 200以下

引用元:JIS G 4303:2012

【JIS G 4303:ステンレス鋼棒】から内容を抜粋しました。

SUS317Lは、SUS317・SUS304と比べて耐力と引張強さに劣ります。なお、SUS317Lの比重は、7.93の値となります。

SUS317Lの加工性

SUS317Lは、SUS304などと比べて炭素量が少ないため、溶接性に優れています。ただし、ニッケルやモリブデンを多く含んでいる分、被削性には劣ります。

 

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