SUS317は、クロム18%・ニッケル12%・モリブデン3.5%程度を含む、オーステナイト系ステンレス鋼です。
オーステナイト系ステンレス鋼には、優れた延性・強度・耐熱性・靭性があります。SUS317は、オーステナイト系のなかでも特に耐食性に優れた材料で、サビを誘発する塩素環境でも有効に使える材料です。
参考:【SUS(ステンレス)種類と見分け方】用途・特徴を専門家が徹底解説!
SUS317の用途
引用元:株式会社富士セイセン
SUS317は、化学工業設備・染色設備に多く用いられています。SUS317は、オーステナイト系ステンレス鋼の一種で、SUS316よりも耐孔食性に優れた材料です。
JIS規格では、【JIS G 4303:ステンレス鋼棒】・【JIS G 4304:熱間圧延ステンレス鋼板及び鋼帯】・【JIS G 4305:冷間圧延ステンレス鋼板及び鋼帯】などで規定されています。
孔食とは
引用元:株式会社日坂製作所
孔食とは、上図のように点状、もしくは虫食い状のような、局部的に深く腐食する現象のことをいいます。
一般的にステンレス鋼は、表面に「不働態皮膜」と呼ばれる、サビに強い膜を形成します。しかし、塩素イオン(Cl-)により不働態皮膜が破壊されると、不働態皮膜が再形成できず、腐食し続けてしまいます。これは、不働態皮膜の破れた箇所が電気化学反応を起こし、塩素イオンが腐食した穴のなかに蓄積するためです。
孔食対策のひとつとして、クロム(Cr)やモリブデン(Mo)を多く添加した、強い耐食性を持つステンレス鋼を選ぶことが挙げられます。SUS317は、モリブデンを多く含有しており、孔食を防ぎたい場合に効果的です。
SUS317の化学成分
引用元:有本機業株式会社
<SUSの化学成分(単位:%)>
種類の記号 | C | Si | Mn | P | S | Ni | Cr | Mo | Cu | N | その他 |
SUS317 | 0.08 以下 | 1.00 以下 | 2.00 以下 | 0.045 以下 | 0.030 以下 | 11.00~ 15.00 | 18.00~ 20.00 | 3.00~4.00 | - | - | - |
SUS316 | 0.08 以下 | 1.00 以下 | 2.00 以下 | 0.045 以下 | 0.030 以下 | 10.00~ 14.00 | 16.00~ 18.00 | 2.00~3.00 | - | - | - |
SUS304 | 0.08 以下 | 1.00 以下 | 2.00 以下 | 0.045 以下 | 0.030 以下 | 8.00~ 10.50 | 18.00~ 20.00 | - | - | - | - |
引用元:JIS G 4303:2012
SUS317は、前述したSUS316や市場で多く出回っているSUS304と比較すると、ニッケル(Ni)とモリブデン(Mo)を多く含有しています。
参考:SUS304とSUS430の意味とは? 使い分けや特徴も分かりやすく解説!
ステンレス鋼は、モリブデンを含むことにより、不働態皮膜を再形成しやすくなります。また、ニッケルは、強度や靭性の向上のほか、孔食の進行速度を引き下げる効果も期待できます。
SUS317の機械的性質
引用元:山内金属株式会社
<SUS317の機械的性質>
種類の記号 | 耐力 Mpa (N/mm2) | 引張強さ Mpa (N/mm2) | 伸び | 絞り | 硬さ | ||
HBW | HRBS 又は HRBW | HV | |||||
SUS317 | 205以上 | 520以上 | 40以上 | 60以上 | 187以下 | 90以下 | 200以下 |
引用元:JIS G 4303:2012
SUS317の機械的性質は上表の通りです。こちらは、SUS316・SUS304の数値と全く同じ値を示しています。