SUS316(ステンレス鋼)成分、硬さ、ヤング率

オーステナイト系ステンレス | 2021年01月25日

SUS316は、クロム17%、ニッケル12%、モリブデン2.5%程度の添加物を含むステンレス鋼で、ステンレス鋼の中でも特に腐食に強い合金です。

ステンレス鋼は、その耐食性が表面に形成される「不動態皮膜」によって実現されています。この不動態皮膜は、クロムによって形成されており、その自己修復能力によって皮膜が破れても再生します。モリブデンは、塩化物環境においてこれらの効果を高める性質があり、モリブデンを含有するSUS316は、沿岸部や海水に触れる製品の素材として幅広く使用されている素材です。

今回の記事では、SUS316について解説していきます。特徴や用途、様々な性質について説明しますので、参考にしてください。

cta

SUS316の特徴と主な用途

SUS316は、ステンレス鋼の中で最も一般的に使用されているオーステナイト系に属し、オーステナイト系の中でも特に耐食性に優れた合金です。

オーステナイト系は、鉄(Fe)のほか、クロム(Cr)とニッケル(Ni)を主成分とするステンレス鋼です。冷間加工性や溶接性が良好で、耐食性に優れます。

SUS316は、このオーステナイト系の性質はそのままに、「モリブデン(Mo)」を添加することで、さらに耐食性を向上させたステンレス鋼です。モリブデンは、不動態皮膜の耐食性を向上させるとともに、不動態皮膜のキズから生じる腐食(孔食)の進行を止めて修復の力を高める性質を持ちます。

下図は、クロムによって形成される不動態皮膜のキズにモリブデンが集まって孔食の進行を止め、皮膜が修復・再生される様子を示しています。

引用元:日本製鉄株式会社

SUS316は、特に海水中や塩害地域など、塩化物環境での耐食性に優れます。しかし、硝酸などの酸素を供給する「酸化性酸」に対しては、耐食性が他のオーステナイト系ステンレス鋼と逆転する場合があるので注意が必要です。

塩化物環境での高い耐食性を反映して、SUS316は、以下のような用途に用いられています。

・沿岸部で用いられる外壁パネルなどの建築部材

・沿岸部や塩化物を含んだ融雪剤が撒かれる地域の配管・配管部材

・海水用の配管や配管部材、ポンプといった海水を利用する工場の機器

・船舶部品

・業務用食品保管容器


参考:【SUS(ステンレス)の基本】種類・用途・特徴、SUSの意味から見分け方まで専門家が徹底解説!



SUS316の化学成分

鋼種名

C(%)

Si(%)

Mn(%)

P(%)

S(%)

Ni(%)

Cr(%)

Mo(%)

SUS316

0.08以下

1.00以下

2.00以下

0.045以下

0.030以下

10.00〜14.00

16.00〜18.00

2.00〜3.00

SUS316L

0.030以下

1.00以下

2.00以下

0.045以下

0.030以下

12.00〜15.00

16.00〜18.00

2.00〜3.00

SUS316の化学成分は、JIS規格(JIS G 4305:2012)によって上表のように定められています。

なお、上表のSUS316Lは、冷間加工性と溶接後の腐食耐性を高めるために、SUS316の炭素含有量を低減し、ニッケル含有量を増加させたものです。炭素量の低減とニッケル量の増加には、焼鈍し状態の硬度を低くするとともに、加工硬化性を高める効果があります。また、炭素量の低減によって、粒界腐食の原因となる、溶接部におけるクロム炭化物の析出を抑制することが可能です。なお、下の写真は、溶接の熱影響部に生じた粒界腐食です。



SUS316の耐熱温度

SUS316の耐熱温度は、800〜900℃程度です。

オーステナイト系ステンレス鋼の耐熱温度は、「SUS304<SUS316<SUS310S」となっています。SUS304の耐熱温度は700℃〜800℃程度、耐熱鋼として使われるSUS310Sの耐熱温度は1000℃程度です。

しかし、材料の強度は、温度の上昇とともに低下していくので、どのような環境でも耐熱温度まで使用できるわけではありません。下図は、炭素鋼と代表的なステンレス鋼の温度−引張り強さ曲線ですが、SUS316(図ではType316と表示)は、600℃程度で急激に引張り強さが低下しています。

引用元:山陽特殊製鋼株式会社


参考:ステンレス耐熱温度を種類別に専門家が解説!



SUS316の機械的性質(硬さなど)

鋼種名

耐力

MPa

引張強さ

MPa

伸び

絞り

硬さ

HBW

HRBS
又は
HRBW

HV

SUS316

205以上

520以上

40以上

60以上

187以下

90以下

200以下

SUS316L

175以上

480以上

40以上

60以上

187以下

90以下

200以下

SUS316の機械的性質は、JIS規格によって上表の値を満足することが規定されています。なお、「HBW」は「ブリネル硬さ」、「HRBS 又は HRBW」は「ロックウェル硬さ」、「HV」は「ビッカーズ硬さ」を示しています。

また、SUS316Lの耐力と引張強さは、SUS316に少し劣ります。これは、上述したように、SUS316と比べてSUS316Lの炭素含有率が低く、ニッケル含有率が高いことによります。



SUS316の物理的性質(ヤング率、ポアソン比など)

鋼種名

密度

g/cm3

比熱

J(kg・K)

熱膨張係数

(0~100℃)

10-6/K

熱伝導率

W/(m・K)

電気抵抗

μΩ・cm

ヤング率

MPa

ポアソン比

SUS316

8.03

502

16

16.3

74

193,000

0.28

SUS316L

8.03

600

15.9

16.3

74

193,000

0.29

SUS316の物理的性質は、上表の通りです。

また、SUS316は、オーステナイト系ステンレス鋼に共通することですが、磁性はありません。しかし、加工によって内部結晶構造に変化が生じ、材料の一部分が磁性を持つ結晶構造になってしまう場合があります(下図参照)。その際には、溶体化処理を施すことにより、結晶構造が元通りになって磁性を消失させることが可能です。なお、溶体化処理は、材料をある温度まで加熱して保持した後、急冷する処理です。SUS316では、1010~1150℃程度まで加熱します。

引用元:東洋磁気工業株式会社

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