2024-09-18
更新
染谷 ひとみ
Mitsuri Media管理人
精密板金加工工場のインサイドセールスとして加工と寸法の提案をしてきた経験を経て、製造業の知見と楽しさを提供している。 幼少期からモノの構造を理解するのが好き。JAPAN MENSA会員。
SUS310Sは、主に高温環境下で用いられる耐熱ステンレス鋼です。オーステナイト系ステンレス鋼の一種で、その中でも特に多くクロムとニッケルを含有します。
最も流通量が多いステンレス鋼である「SUS304」よりも耐食性が高く、耐熱ステンレス鋼である「SUS309S」よりも耐熱性に優れます。
しかし、SUS304やSUS309Sと比べると加工性が劣ります。さらに、比較的高価なニッケルを多く含むため、その価格はSUS304のおよそ3〜4倍にもなります。
また、磁性を持たないこともSUS310Sの特徴です。オーステナイト系は、本来磁性を持ちませんが、一部の鋼種では冷間加工によって磁性を帯びることがあります。しかし、SUS310Sは、ニッケルの含有率が大きいために、加工を施しても磁性を帯びません。
SUS310Sの用途としては、繰り返し高温に曝される炉材や熱処理器具、耐熱調理器、熱交換器の部品、自動車の排ガス部品などが挙げられます。
SUS310Sの耐熱温度は、1,000℃程度です。SUS309Sの耐熱温度が950℃程度、SUS304の耐熱温度は700℃〜800℃程度ですので、耐熱温度の関係は以下の通りになります。
耐熱温度:SUS304<SUS309S<SUS310S
しかし、強度は、高温になるほど低下していくので、用途によっては使用温度に注意する必要があります。下図は、炭素鋼と代表的なステンレス鋼の温度−引張り強さ曲線ですが、SUS310S(図ではType310と表示)の引張り強さは、700℃程度で2分の1以下まで低下してしまいます。また、オーステナイト系は、共通に、700〜900℃の温度に長時間曝されるとσ相と呼ばれる脆い金属組織が析出するため、さらなる注意が必要です。
引用元:山陽特殊製鋼株式会社
SUS310Sの化学成分は、JIS規格(JIS G 4305:2012)によって上表のように定められています。比較のため、SUS309SとSUS304の化学成分も併せて記載しています。
SUS310Sのクロム(Cr)とニッケル(Ni)の含有率は、SUS309Sの含有率よりも大きく、SUS309Sの含有率は、SUS304の含有率よりも大きくなっています。クロムは、ステンレスの表面に形成される不動態皮膜の源となる添加元素であり、その含有率が大きいほど耐食性が向上します。一方、ニッケルは、クロムと併せて添加することで、耐食性と耐熱性を向上させる効果があります。これらの効果により、耐食性と耐熱性についても以下の関係性が成り立ちます。
耐食性:SUS304<SUS309S<SUS310S
耐熱性:SUS304<SUS309S<SUS310S
また、SUS310Sのシリコン(Si)含有率は、SUS309SとSUS304の1.5倍となっていますが、シリコンもまたステンレスの耐熱性を向上させる効果があります。
SUS310の機械的性質は、JIS規格(JIS G 4303:2012)によって上表の値を満たすものと規定されています。SUS309SとSUS304の機械的性質も併せて載せています。
SUS310の機械的性質は、SUS309SやSUS304と大きな違いはありません。絞り率だけが、10%大きくなっていますが、これはSUS310Sの加工硬化性の高さを反映しています。
参考:加工硬化とはどんな現象?仕組み・影響・扱い方をご紹介!
ステンレスは、一般に切削加工や研削加工が難しい難削材です。その中でもSUS310Sは、特に被削性が劣るとされています。
クロムとニッケルの含有量が多いSUS310Sは、切削抵抗が大きく、切削工具が損傷しやすくなります。そのため、SUS310Sに切削加工を施す場合は、切削速度を低くするなど、加工条件の調整が必要となります。
また、SUS310Sは、加工硬化性が高いことも特徴で、加工が進むほど切削加工も板金加工も難しくなります。
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