染谷 ひとみ
Mitsuri Media管理人
精密板金加工工場のインサイドセールスとして加工と寸法の提案をしてきた経験を経て、製造業の知見と楽しさを提供している。 幼少期からモノの構造を理解するのが好き。JAPAN MENSA会員。
SPHCとは、熱間圧延軟鋼板の一種で、【JIS G 3131:2018 熱間圧延軟鋼板及び鋼帯】に規定されている材料です。
SPHCのように、高温で圧延された鋼板は別名「HOT(ホット)」とも呼ばれています。熱間圧延した鋼板は、焼けた状態で空気中にさらされることで、「黒皮(クロカワ)」と呼ばれる酸化被膜(ミルスケール)が発生します。これは名前の通り、表面が黒に近い色をした皮膜のことで、黒皮が鋼板を覆い、新品である鋼板のキズや錆びを保護します。
しかし黒皮は、小さな穴(ピンホール)があったり、ボロボロと剥がれ落ちたりと、安心して錆びから守るには心もとないものです。そのため製品として利用する際は、黒皮を除去し、めっきや塗装を施して使うことがほとんどです。
SPHC(steel plate hot commercial)は、【JIS G 3131 熱間圧延軟鋼板及び鋼帯】のなかでも一般用と分類されている材料です。用途としては自動車・電気機器・機械部品などが挙げられます。
SPHCは冷間圧延鋼板に比べて製作工程が少なく、比較的安価に手に入れられます。また、柔らかい材料であるため、曲げ加工性に優れているのも特徴です。
しかしSPHCは、引張強さが270MPa以上の規定であるため、あまり強度が求められる場所には不向きです。市場に多く流通しているほか、価格が安い点が魅力ですが、コストを下げるためにSS材から代用する場合は、強度の仕様を満たしているか確認しておきましょう。
また、SPHCの板厚は、1.2~14mmが適用厚さとして【JIS G 3131】で規定されています。板厚に対しての寸法の許容値は以下の表の通りです。
<SPHCの厚さの許容差>
引用元:JIS G 3131:2018
SPHCの比重は鉄と同じく7.85(密度7.85g/cm3)です。SPHCに限らず、同じ【JIS G 3131】規格内にあるSPH材は、全て同じ値を示します。
<熱間圧延軟鋼板及び鋼帯の化学成分(単位:%)>
※必要に応じて、この表以外の合金元素を添加してもよい。
引用元:JIS G 3131:2018
上表は【JIS G 3131:2018 熱間圧延軟鋼板及び鋼帯】に記述されている、SPH材の化学成分表を抜粋したものです。
<熱間圧延軟鋼板及び鋼帯の機械的性質(引張強さ・伸び)>
※受渡当事者間の協定によって、引張強さの上限値として次の値を適用してもよい。
SPHC:440N/mm2、SPHD:420N/mm2、SPHE:400N/mm2、SPHF:380N/mm2
引用元:JIS G 3131:2018
上表は【JIS G 3131:2018 熱間圧延軟鋼板及び鋼帯】に記述されている、SPH材の機械的性質表を抜粋したものです。
SPHCは一般用として規定されていますが、その他の材質は加工用としての規定がされています。加工用の材質はSPHCに比べて炭素量が少なく、伸びに優れているのが特徴です。
SPHCとSS400の大きな違いは引張強さになります。SS400のほうが数値が高いため、強度が求められる箇所では、SPHCは不向きです。また、SS400のほうが、板厚の厚みがあるラインナップが豊富にあります。
参考:一般構造用圧延鋼材(SS材)とは?【専門家が解説】素人でも3分で判ります
SPCCは、冷間圧延鋼板(Steel Plate Cold Commercial)の常温で圧延した鋼板であるため、製造方法やJIS規格が異なります。
特徴としては、SPHCはSPCCと比べて冷間圧延の工程がない分、価格が安価です。しかし寸法精度や外観の良さには劣ります。
それぞれのJIS規格で定められている適用厚さに対しても、SPHCが1.2~14mmであるのに対し、SPCCは0.1~3.2mmといった違いもあります。
参考:【SPCC基礎知識】他材料とどう違う?板厚、材質、降伏点、比重、ヤング率
SPHC-Pは、SPCHにある黒皮を酸で取り除いたもののことで、「酸洗(サンセン)」とも呼びます。SPCHに比べて、酸洗は塗装性が向上しているのが特徴です。
黒皮はキズや腐食を防止しますが、触れるとボロボロと剥げ落ちたり、ピンホールがあったりするため、防錆効果が高いわけではありません。基本的にSPHCを用いる際は、黒皮を落とし、塗装などの表面処理を施すことで、防錆効果を持たせていますが、その黒皮の除去方法のひとつとして酸洗処理があります。
SPHCは強度が求められる場所には不向きです。強度の仕様を満たすか確認しておきましょう。
大きな違いは引張強さです。SPHCは270N/mm2、SS400は400~500N/mm2です。強度が求められる箇所では、SPHCは不向きです。
SPHCは、SPCCと比べて冷間圧延の工程がありません。そのため価格が安価です。ただし、寸法精度と外観の良さはSPCCより劣ります。
SPCCとSPHCが被る板厚は「1.6mm」「2.3mm」「3.2mm」です。このような板厚を使う場合は、精度が必要な外観にSPCC、見えない場所にはSPHCと使い分けることが多いです。
SPCH-Pは、SPCHの黒皮を酸で取り除いたものです(酸洗)。SPHCよりも、塗装性が向上しています。
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