SPHCとは【基礎】SS400/SPCCとの違い

SPHCとは、熱間圧延軟鋼板の一種で、【JIS G 3131:2018 熱間圧延軟鋼板及び鋼帯】に規定されている材料です。
SPHCのように、高温で圧延された鋼板は別名「HOT(ホット)」とも呼ばれています。熱間圧延した鋼板は、焼けた状態で空気中にさらされることで、「黒皮(クロカワ)」と呼ばれる酸化被膜(ミルスケール)が発生します。これは名前の通り、表面が黒に近い色をした皮膜のことで、黒皮が鋼板を覆い、新品である鋼板のキズや錆びを保護します。
しかし黒皮は、小さな穴(ピンホール)があったり、ボロボロと剥がれ落ちたりと、安心して錆びから守るには心もとないものです。そのため製品として利用する際は、黒皮を除去し、めっきや塗装を施して使うことがほとんどです。
SPHCとは?特徴と用途
SPHC(steel plate hot commercial)は、【JIS G 3131 熱間圧延軟鋼板及び鋼帯】のなかでも一般用と分類されている材料です。用途としては自動車・電気機器・機械部品などが挙げられます。
SPHCは冷間圧延鋼板に比べて製作工程が少なく、比較的安価に手に入れられます。また、柔らかい材料であるため、曲げ加工性に優れているのも特徴です。
しかしSPHCは、引張強さが270MPa以上の規定であるため、あまり強度が求められる場所には不向きです。市場に多く流通しているほか、価格が安い点が魅力ですが、コストを下げるためにSS材から代用する場合は、強度の仕様を満たしているか確認しておきましょう。
また、SPHCの板厚は、1.2~14mmが適用厚さとして【JIS G 3131】で規定されています。板厚に対しての寸法の許容値は以下の表の通りです。
<SPHCの厚さの許容差>
| 厚さ | 幅(mm) | |||
|---|---|---|---|---|
| 1200未満 | 1200以上 1500未満 | 1500以上 1800未満 | 1800以上 2300以下 | |
| 1.60未満 | ±0.14 | ±0.15 | ±0.16 ※幅1600未満について適用する | - |
| 1.60以上2.00未満 | ±0.16 | ±0.17 | ±0.18 | ±0.21 ※幅2000未満について適用する |
| 2.00以上2.50未満 | ±0.17 | ±0.19 | ±0.21 | ±0.25 ※幅2000未満について適用する |
| 2.50以上3.15未満 | ±0.19 | ±0.21 | ±0.24 | ±0.26 |
| 3.15以上4.00未満 | ±0.21 | ±0.23 | ±0.26 | ±0.27 |
| 4.00以上5.00未満 | ±0.24 | ±0.26 | ±0.28 | ±0.29 |
| 5.00以上6.00未満 | ±0.26 | ±0.28 | ±0.29 | ±0.31 |
| 6.00以上800未満 | ±0.29 | ±0.30 | ±0.31 | ±0.35 |
| 8.00以上10.0未満 | ±0.32 | ±0.33 | ±0.34 | ±0.40 |
| 10.0以上12.5未満 | ±0.35 | ±0.36 | ±0.37 | ±0.45 |
| 12.5以上14.0以下 | ±0.38 | ±0.39 | ±0.40 | ±0.50 |
引用元:JIS G 3131:2018
SPHCの比重・密度
SPHCの比重は鉄と同じく7.85(密度7.85g/cm3)です。SPHCに限らず、同じ【JIS G 3131】規格内にあるSPH材は、全て同じ値を示します。
SPHCの化学成分
<熱間圧延軟鋼板及び鋼帯の化学成分(単位:%)>
| 種類の記号 | C(炭素) | Mn(マンガン) | P(リン) | S(硫黄) |
|---|---|---|---|---|
| SPHC | 0.12以下 | 0.60以下 | 0.045以下 | 0.035以下 |
| SPHD | 0.10以下 | 0.45以下 | 0.035以下 | 0.035以下 |
| SPHE | 0.08以下 | 0.40以下 | 0.030以下 | 0.030以下 |
| SPHF | 0.08以下 | 0.35以下 | 0.025以下 | 0.025以下 |
※必要に応じて、この表以外の合金元素を添加してもよい。
引用元:JIS G 3131:2018
上表は【JIS G 3131:2018 熱間圧延軟鋼板及び鋼帯】に記述されている、SPH材の化学成分表を抜粋したものです。
SPHCの機械的性質
<熱間圧延軟鋼板及び鋼帯の機械的性質(引張強さ・伸び)>
| 種類の記号 | 引張強さ MPa (N/mm2) |
伸び % | 引張試験片 | |||||
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 厚さ mm | ||||||||
| 1.2以上 1.6未満 | 1.6以上 2.0未満 | 2.0以上 2.5未満 | 2.5以上 3.2未満 | 3.2以上 4.0未満 | 4.0以上 | |||
| SPHC | 270以上 | 27以上 | 29以上 | 29以上 | 29以上 | 31以上 | 31以上 | 5号試験片 圧延方向 |
| SPHD | 270以上 | 30以上 | 32以上 | 33以上 | 35以上 | 37以上 | 39以上 | |
| SPHE | 270以上 | 32以上 | 34以上 | 35以上 | 37以上 | 39以上 | 41以上 | |
| SPHF | 270以上 | 37以上 | 38以上 | 39以上 | 40以上 | 40以上 | 42以上 | |
※受渡当事者間の協定によって、引張強さの上限値として次の値を適用してもよい。
SPHC:440N/mm2、SPHD:420N/mm2、SPHE:400N/mm2、SPHF:380N/mm2
引用元:JIS G 3131:2018
上表は【JIS G 3131:2018 熱間圧延軟鋼板及び鋼帯】に記述されている、SPH材の機械的性質表を抜粋したものです。
SPHCは一般用として規定されていますが、その他の材質は加工用としての規定がされています。加工用の材質はSPHCに比べて炭素量が少なく、伸びに優れているのが特徴です。
SPHCと他材料との違い
SPHCとSS400との違い
| SPHC | SS400 | |
|---|---|---|
| 名称 | 熱間圧延軟鋼板 | 一般構造用圧延鋼材 |
| 引張強さ | 270N/mm2 | 400~500N/mm2 |
| 規格 | JIS G 3131で規定 | JIS G 3101で規定 |
| 特徴 | 価格が安価 曲げ加工性に優れる |
強度に優れる 板厚の種類が幅広い |
SPHCとSS400の大きな違いは引張強さになります。SS400のほうが数値が高いため、強度が求められる箇所では、SPHCは不向きです。また、SS400のほうが、板厚の厚みがあるラインナップが豊富にあります。
参考:一般構造用圧延鋼材(SS材)とは?【専門家が解説】素人でも3分で判ります
SPHCとSPCCとの違い
| SPHC | SPCC | |
|---|---|---|
| 名称 | 熱間圧延軟鋼板 | 冷間圧延鋼板 |
| 製造方法 | 高温で圧延する | 常温で圧延する |
| 規格 | JIS G 3131で規定 | JIS G 3141で規定 |
| 特徴 | 酸化被膜(黒皮)があり、錆の進行を抑えられる 値段が安価 |
精度が高い |
SPCCは、冷間圧延鋼板(Steel Plate Cold Commercial)の常温で圧延した鋼板であるため、製造方法やJIS規格が異なります。
特徴としては、SPHCはSPCCと比べて冷間圧延の工程がない分、価格が安価です。しかし寸法精度や外観の良さには劣ります。
それぞれのJIS規格で定められている適用厚さに対しても、SPHCが1.2~14mmであるのに対し、SPCCは0.1~3.2mmといった違いもあります。
参考:【SPCC基礎知識】他材料とどう違う?板厚、材質、降伏点、比重、ヤング率
SPHCとSPHC-Pとの違い
SPHC-Pは、SPCHにある黒皮を酸で取り除いたもののことで、「酸洗(サンセン)」とも呼びます。SPCHに比べて、酸洗は塗装性が向上しているのが特徴です。
黒皮はキズや腐食を防止しますが、触れるとボロボロと剥げ落ちたり、ピンホールがあったりするため、防錆効果が高いわけではありません。基本的にSPHCを用いる際は、黒皮を落とし、塗装などの表面処理を施すことで、防錆効果を持たせていますが、その黒皮の除去方法のひとつとして酸洗処理があります。
SPHCのQ&Aまとめ
Q1.SS材をSPHCで代用する際の注意点を教えてください。
SPHCは強度が求められる場所には不向きです。強度の仕様を満たすか確認しておきましょう。
Q2.SPHCは、SS400とどう違うのですか?
大きな違いは引張強さです。SPHCは270N/mm2、SS400は400~500N/mm2です。強度が求められる箇所では、SPHCは不向きです。
Q3.SPHCは、SPCCとどう違うのですか?
SPHCは、SPCCと比べて冷間圧延の工程がありません。そのため価格が安価です。ただし、寸法精度と外観の良さはSPCCより劣ります。
Q4.SPCCとSPHCはどう使い分けるのでしょうか?
SPCCとSPHCが被る板厚は「1.6mm」「2.3mm」「3.2mm」です。このような板厚を使う場合は、精度が必要な外観にSPCC、見えない場所にはSPHCと使い分けることが多いです。
Q5.SPHCとSPHC-Pはどう違うのですか?
SPCH-Pは、SPCHの黒皮を酸で取り除いたものです(酸洗)。SPHCよりも、塗装性が向上しています。
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