SPCCとは?他の鉄とどう違う?板厚、材質、降伏点、比重、ヤング率

SPCC(Steel Plate Cold Commercial)は、冷間圧延鋼板です。SPCCは、SPHC(熱間圧延鋼板)に常温下の冷間圧延加工を施して生産します。冷間圧延鋼板の中では「一般用」で、別名「ミガキ材」「圧延材」「コールド」とも呼ばれます。板金加工の場面で使用されることも多く、時計やカメラ、自動車などの部品として使用されるなど、用途も多岐に渡ります。

他には絞り用のSPCD(Deep Drawn) 、深絞り用のSPCE(Deep Drawn Extra) などの規格があります。錆びやすい性質を持つため、SPCCの加工後には塗装やメッキ処理などの錆対策が必須です。

SPCCは一般用の冷間圧延鋼板、錆対策必須

SPCCとは「Steel Plate Cold Commercial」の略で、冷間圧延鋼板です。高炉メーカーから仕入れた熱間圧延軟鋼板を、常温状態で冷間圧延して作られます。主に、曲げ加工やプレス加工、簡単な絞り加工を施すのに適した素材で、柔らかく、成形性・加工性に優れた特徴をもちます。SPCCは、3.2mm以下の板金加工をする場合に最適です。

SPCCは冷間圧延で製作されており、未研磨でも材の表面に光沢があり滑らかなため、「ミガキ材」と呼ばれることもあります。別名「圧延材」「コールド」とも呼ばれます。

SPCCを、SPHCの冷間圧延加工で生産する図
図:冷間圧延加工

初期のSPCCには油がついていますが、この油がなくなると錆びてしまう性質をもつため、SPCCの加工後は塗装やメッキ処理の後工程を施すなど、錆対策が必須です。他材と比べると安価で加工性にも優れていることから、自動車などの様々な機械部品やワッシャー、スペーサーなどにも使用される身近な金属です。

SPCCの規格・化学成分

SPCCは「JIS G 3141」で冷間圧延鋼板及び鋼帯に規定されている鋼材です。炭素量が少ないことから、炭素を含有した炭素鋼に対して普通鋼とも呼ばれます。一般的な鋼材であるSS400の炭素量がおおよそ0.2%程度であるのに対し、SPCCは炭素量が0.15%以下になるよう規定されています。SPCCは炭素量が少ないため、炭素鋼の中で最も柔らかい材料です。

規格

SPCC:一般用

SPCC-T(Test):引張試験の値を保証したもの

SPCD(Deep Drawn):絞り用

SPCE(Deep Drawn Extra):深絞り用

SPCF:非時効性深絞り用

SPCG:非時効性長深絞り用

JIS G3141で規定されている鋼材には、SPCCの他に「SPCC-T」「SPCD」「SPCE」「SPCG」の5種の鋼種があり、それぞれ化学成分と機械的性質の違いによって分類されています。SPCCが一般用であるのに対し、SPCC-Tは引張試験の値を保証したもの、SPCDは絞り用、SPCEは深絞り用、SPCFは非時効性深絞り用、SPCGは非時効性長深絞り用です。

各鋼種の適用厚さと化学成分規定は次の通りです(単位%)。

種類 適用厚さ(mm) C(炭素) Mn(マンガン) P(リン) S(硫黄)
SPCC 0.10~3.2 0.15以下 0.60以下 0.100以下 0.050以下
SPCD 0.15~3.2 0.12以下 0.50以下 0.040以下 0.040以下
SPCE 0.15~3.2 0.10以下 0.45以下 0.030以下 0.030以下
SPCF 0.40~3.2 0.08以下 0.45以下 0.030以下 0.030以下
SPCG 0.40~3.2 0.02以下 0.25以下 0.020以下 0.020以下

SPCCの物理的性質(物性値)比重、比熱、ヤング率、ポアソン比等

種類 溶融点 比重・密度 電気抵抗 比熱 体積比熱 線膨張係数 ヤング率 ポアソン比
SPCC 1530℃ 7.85g/cm3 0.097μΩ・m 460KJ/kg・K 3.6W/cm3⋅K 12.0/K×10-6 206,000N/mm2
(206GPa)
0.30

SPCCの機械的性質(引張強さ等)

SPCD、SPCE、SPCF、SPCGには、それぞれ引張強さと伸び率に応じた板厚が定められています。

種類 引張強さ 降伏点 耐力 伸び率
SPCC 270N/mm2 以上 0.2%未満 0.20~0.25%未満 0.25~0.30%未満 0.30~0.40%未満 0.40~0.60%未満 0.60~1.0%未満 1.0~1.6%未満 1.6~2.5%未満
板厚
27mm以上 29mm以上 32mm以上 35mm以上 42mm以上 44mm以上 45mm以上 46mm以上

引張強さは全鋼種において270N/mm2以上であり、伸び率が0.2%未満なら厚さは27mm以上、0.20~0.25%未満なら29mm以上、0.25~0.30%未満なら32mm以上、0.30~0.40%未満なら35mm以上、0.40~0.60%未満なら42mm以上、0.60~1.0%未満なら44mm以上、1.0~1.6%未満なら45mm以上、1.6~2.5%未満なら46mm以上、となっています。ただし厳密には各鋼種ごとに規定があるため板厚はもう少し抑えられます。

SPCCの板厚と流通

製造コストを抑えたり、欠品リスクを避けるためには、流通性の高い板厚を選定することが重要です。規格通りの板厚を選んだとしても、必ずしもすぐに手に入るわけではない点に注意が必要です。

流通性の高いSPCCの板厚
0.5mm
0.8mm
1.0mm
1.2mm
1.6mm
2.0mm
2.3mm
2.6mm※
2.9mm※
3.2mm

SPCCの板厚で流通性の高いものは、「0.5mm」「0.8mm」「1.0mm」「1.2mm」「1.6mm」「2.0mm」「2.3mm」「3.2mm」です。規格としては「2.6mm」「2.9mm」もありますが、流通性が低いので調達できる可能性が非常に低いので設計する際は注意が必要です。

板の定尺は914x2438mm、1219x2438mmがメインで流通しています。

SPCCのメリット・デメリット

SPCCのメリット

・高い加工性と成形性

・加工しやすい

・表面仕上げの美しさ

・板厚精度が高い

SPCCの優れている点は、熱間圧延鋼板よりも高い伸びを持つことによる、高い加工性と成形性です。また加工のしやすさに加えて、板厚精度の高さや、表面仕上げの美しさも熱間圧延鋼板に比べて優れています。

それでいてステンレス系材料に比べると安価であるため、コストを抑えつつ高品質高精度に仕上げたい場合に適しています。

SPCCのデメリット

・酸化しやすい

・加工後の表面処理が必須

SPCCは酸化被膜を落とした鋼材のため、非常に酸化しやすいのがデメリットです。保管状態によって錆が発生することがあるどころか、手で触れただけで酸化が始まってしまいます。SPCCを使用する場合は、基本的に加工後に塗装およびメッキが必須です。

きちんと塗装・メッキを施せば、建材などとしても十分に使える材料であるともいえます。

SPCCと他の鉄規格との違い

規格 強度 価格(¥/kg) 焼き入れ効果 溶接性 耐食性
SPCC 130 × ×
SS400 115 × ×
S45C 300 × ×
SPHC 100 ×
SECC 150 × ×
SGCC 150 × ×
ZAM 160 × ×

SPCCと「SPCD」「SPCE」(他冷間圧延鋼板)との違い

SPCCと同じ冷間圧延鋼板には、他にもSPCD(SPC-Deep drawing)、SPCE(SPC-deep drawn Extra)などの種類があります。

SPCCが、曲げ加工・絞り加工に対して一般的である一方、SPCDは「絞り用」とされており、SPCCよりも伸び率が優れているものです。自動車や電機部品の、絞り加工を施す場面で使用される材です。また、SPCEは「深絞り用」と呼ばれ、深絞りが可能なよう薄板になっているものです。車の外板や、ボンネットなど、深絞り加工を要する場面では、SPCEが使用されます。

SPCCと「SPH」「SPHC」「SECC」(他鉄材)の違い

同じ鉄材でも、SPH、SPHC、SECCなど様々な種類がありますが、それらが区別される大きな違いとして、①製造方法と②板厚が挙げられます。

SPCCと他鉄材との違い
鉄材名 製造方法による違い 板厚による違い
SPCC(ミガキ) 冷間圧延鋼板 0.4~3.2mm
SPHC(黒皮) 熱間圧延鋼板 1.6~9mm
SPHC(酸洗) 熱間圧延鋼板 1.2~9mm
SECC(ボンデ) 電気亜鉛メッキ鋼板 0.4~3.2mm
SGCC 溶融亜鉛メッキ鋼板 0.25~3.2mm
SPTE(ブリキ) 電気メッキ鋼板 0.15~0.6mm

製造方法が異なることで、価格が異なります。例えば、SPCCとSPHCを比べると、熱間圧延鋼板を更に冷間圧延するというひと手間を加えているSPCCの方が、価格がやや高く設定されています。ただ、このひと手間によって、SPCCはSPHCよりも、表面が美しく、加工性に優れるという特徴をもちます。

基本的に板厚の分類は、薄板=3mm未満、中板=3mm以上6mm未満、厚板=6mm以上とされています。SPCCは0.4~3.2mmと板厚の幅が広く、用途に応じて、適切な板厚を選びやすい素材です。SECCやSGCCなどと比べると、耐食性が劣るなど、デメリットも持ち合わせるSPCCですが、以上のようなメリットから、板金加工の現場では使用されることの多い材料です。

SPCCとSPHCの違い・使い分け

SPCC SPHC
Steel Plate Cold Commercial Steel Plate Hot Commercial
常温で圧延する 高温で圧延する
JIS G3141で規定 JIS G3131で規定
精度が高い 酸化被膜(黒皮)があり錆の進行を抑えられるし、安価

SPCCは冷間圧延鋼板(Steel Plate Cold Commercial)であり常温で圧延した鋼板なのに対して、高温で圧延した鋼板のことをSPHC(Steel Plate Hot Commercial)といいます。この2つは規定するJISも異なり、SPCCがJIS G3141で規定されているのに対し、SPHCはJIS G3131で規定されています。

SPHCは高温で加工をしているため表面に黒皮と呼ばれる酸化被膜があり、錆の進行を抑える点が、大きくSPCCよりも優れています。その他、SPHCのほうが冷間圧延工程を通らない分、SPCCよりも安価な反面、SPCCに比べると精度はよくないといった特徴があります。

精度が求められる外観面にはSPCCを使用し、見えない部品にはSPHCを使うといった使い分けをすることが多いです。

SPCCとSS400の違い・使い分け

SPCC SS400
冷間圧延鋼板 熱間圧延鋼板
引張強さ 270N/mm2以上 引張強さ 400~500N/mm2
板厚精度や表面粗さに優れる 強度に優れる

SPCCとSS400の違いは、強度です。SS400の引張強さが400~500N/mm2と規定されているのに対し、SPCCは270N/mm2以上と強度の面で大きな差があります。

一方で、熱間圧延鋼板であるSS400に比べると、冷間圧延鋼板であるSPCCは板厚精度や表面粗さの面で優れています。そのため、構造物など強度が求められる場面ではSS400を、精密板金や筐体など寸法精度が求められる場合にはSPCCと使い分けることが多いです。

SPCCを使ってどんな加工を依頼できるのか

(1)切断

切断は、金属を切り出す、製品製作の最初の工程です。設計図をもとに寸法をチェックし、図面通りに切断して一つ一つの部品に仕上げていきます。SPCCはやわらかい成形性を持っており、加工性がよいため、様々な形状に仕上げられる素材です。切断方法にも種類があり、フライスやレーザー、プレスなど、求める切断加工に応じて、適切な方法を採用します。

(2)曲げ

曲げ加工は、素材を切断して切り出した後に、必要な箇所を折り曲げて加工します。ブレーキを使って曲げるのが主流です。曲げる形状は、V字やU字、L字やZ字など求める形状によって様々です。一言に「曲げる」と言っても、曲げ部分の角度や圧縮、引っ張りのひずみなど、コントロールが難しいため、加工の精密さが必要になります。

(3)溶接

溶接は、金属を溶かして他の金属と接合する加工です。金属に高熱を与えて融解させる方法ひとつでも、火で加熱するほか、電気を流したり、レーザー光で溶かしたりと、様々な溶接方法があります。SPCCは溶接性がよい金属で加工しやすいと言われています。

(4)後処理

金属は、加工後にバリやカエリを除去する作業が必須です。バリやカエリをそのままにしておくと、手に引っかけるなどのケガの危険があります。見た目も美観を損ねるため、削って綺麗に整えます。加工した製品に、塗装や錆防止のコーティングを施すこともあります。

SPCCは特に錆びやすい性質を持つので、錆防止加工は必須の工程です。完全に錆びなくなるわけではありませんが、錆びにくくすることで、金属の寿命を延ばして製品として長持ちさせます。SPCCにおける後処理の重要性をしっかり理解している工場に依頼することが大切です。

SPCCのQ&Aまとめ

Q1.SPCCはどんな素材でしょうか?

「Steel Plate Cold Commercial」 の略で、冷間圧延鋼板。曲げ加工・プレス加工、簡単な絞り加工に適した素材です。安価で加工性・成形性に優れるが、錆対策が必須です。「ミガキ材」「圧延材」「コールド」とも呼ばれます。

Q2.流通性の高いSPCCの板厚を教えてください。

「0.5mm」「0.8mm」「1.0mm」「1.2mm」「1.6mm」「2.0mm」「2.3mm」「3.2mm」です 。

Q3.SPCCとSPHCの使い分けを教えてください。

SPCCとSPHCが被る板厚は「1.6mm」「2.3mm」「3.2mm」です。このような板厚を使う場合は、精度が必要な外観にはSPCC、見えない場所にはSPHCと使い分けることが多いです。

溶接がある場合は、他の板厚と照らし合わせて、SPCCかSOHCに揃えるのがオススメです。

Q4.SPCCとSS400の使い分けを教えてください。

強度が求められる場面ではSS400、寸法精度が求められる場合にはSPCCという使い分けが多いです。

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