2025-01-15
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サイドカッターは、フライス盤やマシニングセンタに取り付けて用いる切削工具です。溝や段差を形成したり、材料の側面を削ったりする際に使用されます。
溝や段差の切削など、同じような加工に用いられるエンドミルに比べて、複雑形状の加工能力には劣りますが、切削効率には優れます。一方、側面削りは、正面フライスでも行うことができますが、広く薄く削るのが得意な正面フライスに対して、サイドカッターは広い領域の側面削りは得意としないものの、側面を分厚く削り取る加工でも迅速に行うことが可能です。
このように、サイドカッターは、エンドミルや正面フライスなどの主要な切削工具と機能が被るものの、得意とする加工が異なり、切削効率に優劣があります。
この記事では、このサイドカッターとはどういうものかについて説明するとともに、その種類や規格、切削条件などについて解説していきます。
参考:フェイスミル(正面フライス)について解説!加工機の選び方についても解説
サイドカッターとは、側フライスとも呼ばれる、外周面と両側面に切れ刃を持つ円盤形状の切削工具のことです(上図参照)。フライス盤やマシニングセンタなどの切削加工機に取り付け、高速回転させて使用します。
主に主軸(工具を取り付ける軸)が水平の横型フライス盤で用いられますが、シャンク(切削工具の柄部)を装着すれば、主軸が垂直の縦型フライス盤などでも用いることが可能です。
参考:【切削加工とは?】特徴・種類・注意点を動画と一緒にご紹介します!
サイドカッターは、主に溝加工や段差加工、側面加工に用いられるフライス工具です。
●溝加工
溝加工は、材料を直線的又は曲線的に削って、任意の幅の溝を形成する加工です(上図参照)。
サイドカッターは、溝の加工に向いており、特に深溝を削る場合には、横型フライス盤に取り付けたサイドカッターによる加工が適しています。
サイドカッターは、両側面に切れ刃があり、その切れ刃の部分が最も分厚くなっています。そのため、溝が深い場合でも、サイドカッターの側面と溝の側面とが擦れてしまうことはなく、溝の側面を奇麗に仕上げることができます。
ただし、溝加工は、切り屑の排出性が悪く、サイドカッターが損傷する危険性があるので注意が必要です。サイドカッターで溝加工を行う場合、切り屑は、刃が材料に食い込んでから抜けるまで、逃げ場がなく、刃と刃の隙間(チップポケット)に溜まったままとなります。そのため、切り込み深さや送り速度が大き過ぎると、切り屑がチップポケットに収まらなくなり、工具が損傷することがあるのです。
●段差加工
段差加工は、材料の端を直線的又は曲線的に削って、段差を形成する加工です(上図参照)。
段差は、正面フライスによっても形成することができますが、段差が大きい場合や段が狭い場合には、サイドカッターの方が向いています。また、サイドカッターによる段差加工は、後述する側面加工の前後に行うことで、材料の配置変更や工具交換などのロスがなくなり効率化が図れます。
●側面加工
側面加工は、材料の側面に対して平削りを行い、寸法を整えたり、表面を仕上げたりする加工です。
サイドカッターは、横型フライス盤を用いる場合の側面加工によく使われます。また、側面加工と段差加工とを続けて行う場合にも、よく使われます。
サイドカッターの刃形状には、普通刃と荒刃、千鳥刃があります。ここでは、これらの刃形状の種類について説明するとともに、サイドカッターを保持する役割を担うアーバーについて解説します。
単にサイドカッターと呼ばれるもののことです。現在市販されている普通刃サイドカッターの多くは、荒加工から中仕上げ加工まで対応しています。
名称の通り、荒加工用のサイドカッターです。普通刃よりも刃が大きくて刃数が少なく、チップポケットが大きくなっています。そのため、切り込み深さを大きくできますが、バリやカエリは生じるので、仕上げ加工が必要です。
千鳥刃と呼ばれる、ねじれ方向が互い違いになっている切れ刃を持つサイドカッターです。切れ味が良好な上、切れ刃が材料に食い込んだときの衝撃が小さいため、重切削加工に適しています。
アーバーは、フライス盤やマシニングセンタの主軸に接続し、正面フライスやサイドカッターなどを保持する装置です。横型フライス盤では、サイドカッターを嵌める、両端が支持された棒がアーバーです。一方、縦型フライス盤やマシニングセンタでは、サイドカッターは、下図のようにアーバーに取り付けられて使用されます。多様な長さのアーバーがありますが、両端が支持されているわけではないので、十分な剛性が必要です。
サイドカッターのJIS規格については、側フライスの規格として「JIS B 4206(1988)」が存在しましたが、1994年に廃止されています。それから現在まで、サイドカッターの規格はありません。
サイドカッターの寸法は、メーカーによって様々で、例えば、以下のようなサイズバリエーションがあります。ただし、アーバーと接続する穴径だけは共通化が図られており、市販品は、穴径が25.4mmと31.75mmのものが大部分を占めます。
(単位:mm)
参照元:切削工具総合カタログ「超硬工具 ロウ付サイドカッター」岡崎精工株式会社
また、サイドカッターの切削条件について、ハイス製の普通刃サイドカッターでは、刃の外径値毎に以下のような推奨値が挙げられています。
参照元:普通刃サイドカッター(ハイス)「推奨切削条件表(湿式)」フクダ精工株式会社
超硬合金製の普通刃サイドカッターの切削条件として、以下のような推奨値を挙げているメーカーもあります。なお、G2は、鋳鉄や非鉄金属の切削加工に用いられるK種(WC-Co系合金)のことで、靭性に優れ、機械的損傷に強い超硬合金です。一方、AP25は、鋼や合金鋼の切削加工に用いられるP種(WC-TiC-TaC-Co系合金)のことで、耐熱性や耐溶着性に優れ、高速加工に向いています。
サイドカッターとメタルソーとの違いは、サイドカッターにある側面の切れ刃がメタルソーにはないことです。
そもそもメタルソーとは、外周に切れ刃がある円盤形状の切削工具のことです。刃の形状には、普通刃と荒刃があります。切断加工に特化した工具であり、溝加工や段差加工などに用いるサイドカッターとは用途が異なります。
また、メタルソーは、サイドカッターとは違って両側面の刃を持たないことから、メタルソーの側面と切断面が擦れます。そのため、切断面には、通常、さらなる切削加工や仕上げ加工を施します。
ただし、市販のメタルソーの中には、刃先から中心に向かって薄くなっていく「バックテーパ」と呼ばれる傾斜が付いているものがあります(下図参照)。そのタイプのメタルソーで切断加工を行う場合は、サイドカッターと同様、切断面が滑らかになります。
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