志民 直人
技術営業、カスタマーサクセス
切削加工歴29年の1級機械加工技能士(精密器具製作/フライス盤/数値制御フライス盤)。金型・部品加工経験を持ち、CAD・CAMや各種工作機械に精通。設計からカスタマーサービスまで幅広く対応。製造現場改善や治具設計も得意。趣味は日曜大工、ゲーム。
S35Cは、JIS規格で規定されている機械構造用炭素鋼のうち、炭素含有比率の代表値が35の炭素鋼を指します。焼入れ・焼き戻し・高周波焼入れ処理などの熱処理によって、強靭化させることが可能です。ボルト、ナット、工具、エンジン部品などの用途に利用されている鋼材です。S35Cの比重は7.84~7.86です。
S35Cは、JIS G4051(機械構造用炭素鋼鋼材)において規定された鋼材です。機械構造用炭素鋼は、S-C材と呼ばれます。JIS規格において、S35Cの炭素含有量は、0.32〜0.38%と定められており、中炭素鋼に分類されます。
S35Cは、焼入れが可能な炭素鋼の中では、炭素量が低く、焼入性は良くないため、ボルト、ナットなどの小物部品に多く用いられます。その他にも、工具、エンジン部品などの用途にも利用されています。
<S35Cの成分、組成(単位:%)>
S35Cの化学成分を上表に示しました。比較のため、S-C材の中でも代表的な炭素鋼であるS45Cの化学成分も記載しています。これらの値は、JIS規格 G 4051: 機械構造用炭素鋼鋼材において定められています。
S35Cという名前について、「S」は鉄鋼(Steel)を表しており、2桁の数字は、炭素鋼の「炭素」の含有量の代表値を示しています。つまり、機械構造用炭素鋼のうち、S35Cでは、炭素含有比率の代表値が35の鋼材を、S45Cでは代表値が45の鋼材を指しています。
S35CとS45Cの違いは「炭素含有量」の違いだけです。その他の成分について、マンガン(Mn)の含有量は焼入れ性に影響します。S25Cの低炭素鋼では、Mnの含有量が0.30〜0.60%であるのに対し、S35C、S45Cでは、Mnの含有量を0.60〜0.90%と増加させ、焼入れ性を高めています。また、硫黄(S)は熱間加工性を、リン(P)は冷間加工性を悪くするという性質があることから、S-C材では含有量が少なくなっています。
上述した通り、S35CとS45Cの成分上の違いは炭素含有量だけで、その他の成分組成及び含有量は同等です。S-C材の中では、S45Cが汎用性が高い鋼材となっており、S35Cは入手が難しい場合もあるので注意が必要です。
S35Cは、S45Cに比べて炭素含有量が低く、焼入れ性は劣ります。そのため、加工品のサイズが小さい場合や、焼入れ性が製品に大きく影響しない場合などには、S35Cが用いられます。また焼入れ性が悪いため、S35Cでは材料の中心部まで硬くすることが難しくなります。そのため、焼入れ深さが必要ない場合、または意図的に浅くして表面だけを硬くしたい場合などにも、S35Cが利用されるケースもあります。
参考:SS400とS45Cの違いを徹底解説【専門家が語る】製品による使い分け
<S35Cの機械的性質>
S35Cの機械的性質を上表に示しました。熱処理を施すことによって、引張強さ、降伏点といった強度や硬度などの値が上がり、材料がより強靭化していることがわかります。
<S35Cの熱処理温度(焼ならし、焼なまし、焼入れ、焼戻し)>
S35CのJISに規定された基本的な熱処理条件を上表に示しました。実際には、材料に必要な強度や硬度に応じて、上表に示した熱処理条件とは異なる条件で行われる場合もあります。
<S35Cの物性値>
S35Cの物理的性質を上表に示しました。
炭素鋼では、焼入れや焼きならしなどの熱処理を施し、鋼材の強度・硬度を調整した上で使用されます。上述した通り、S35Cにおいても熱処理の状態によって、加工性が大きく変化します。また、S35Cでは溶接加工を行うことは可能です。しかし、中炭素鋼であるため低炭素鋼と比較すると炭素含有量が高く、溶接の熱影響部(HAZ)が硬くなり、割れが発生しやすくなります。また、水素脆性による遅れ破壊の可能性もあるため、注意が必要です。
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