スカイブ加工とは?メリットや主な用途について徹底解説!
2023-11-07
スカイブ加工は、「薄く剥ぐ(はぐ)」を意味する「skive」に由来する言葉で、パソコンのヒートシンクを構成する無数の薄板などを成形するために用いられる加工方法です。
ヒートシンクは、これまで自動車のラジエーターや冷蔵庫の冷却装置などにも使用されてきました。さらに近年では、家電製品や自動車のデジタル化などから電子機器の冷却器としての用途が増加しており、それに併せてスカイブ加工の重要性も高まっています。
そこで、今回の記事では、スカイブ加工はどのような加工方法なのかを解説すると共に、そのメリットや用途についても解説していきます。
スカイブ加工とは
スカイブ加工とは、材料の表面を薄く剥ぐように切削する加工方法です。材料をスライス状に切り取ったり、スライス状の部位を成形したりすることができます。
スライス状の成形品は、ロール加工機やプレス機で圧延したり鍛造したりすることで造ることができますが、材料を加工硬化させてはならない場合などにスカイブ加工が採用されます。
引用元:アスタミューゼ
主にヒートシンクのフィン形状(上図の2)を成形する際に用いられる方法です。
下図に示すように、切削工具により、材料の表面を切り離さないように微小なピッチで薄く切削。この工程を繰り返すことでフィンを成形します。
引用元:アスタミューゼ
日本においてはこのフィン形状の加工法がスカイブ加工ですが、英語圏では薄く剥ぐ加工法全般を「skiving」と呼びます。そのため、日本におけるギヤの歯車の歯溝などを薄く削ぎ落とすスカイビング加工(下の写真参照)も英語圏では「skiving」に含まれます。海外との取引などがある場合には誤認しないよう注意しましょう。
引用元:DMG森精機株式会社
スカイブ加工のメリット
ヒートシンクは、スカイブ加工のほか、以下のような加工方法を用いて製作されます。
<ヒートシンクの製作法>
- 押出成形…加熱した材料を金型からところてんの様に押出し、冷却した後に裁断して成形。
- 冷間鍛造…常温下において材料に金型で高い圧力を加え、変形させて成形。
- 切削加工…切削工具によって金属塊から削り出して成形。
- カシメ加工…切り込みを入れたベース(ヒートシンクの土台となる部分)にフィンを差し込み圧力を加えて固定。スタックヒートシンクの多くもこの方法で製作される。(下の写真はカシメ加工により製作)
- ダイキャスト…溶かした材料を金型に流し込んで成形。固まった後に金型から抜き出すことが可能な形状であれば製作可能。
引用元:株式会社アライ
これらの方法と比較すると、スカイブ加工には以下ようなメリットがあります。
<スカイブ加工のメリット>
- カシメ加工と比べると、ベースとフィンが一体型であるため、熱を効率的に伝導可能。
- 押出成形や冷間鍛造、切削加工と比べると、ピッチが狭くかつ背が高いファンを持った表面積の大きなヒートシンクを成形できる。
- 押出成形や冷間鍛造と比べると、薄いファンを成形可能。
- 押出成形や冷間鍛造に必要な金型が不要なので、少量多品種のヒートシンクの生産に適している。
参考記事ヒートシンクの製作方法については、以下の記事に解説していますのでご参照ください。⇒ヒートシンク製作方法について解説!おすすめ工場もご紹介!
スカイブ加工の主な用途
スカイブ加工の主な用途は、ヒートシンクの製作です。特に、スカイブ加工を用いることで、表面積が大きく放熱性能の優れたヒートシンクを製作することができます。
そして、ヒートシンクは、冷蔵庫やエアコンなどの熱の放出が必要な電気機器、パソコンやパワー半導体、半導体センサーなどの冷却を必要とする電子機器など、幅広い用途があります。
また、自動車のラジエーターやヒーターなどにも用いられています。近年では、ハイブリッド車や電気自動車(EV)に多くのパワー半導体が搭載されるようになったことから、自動車部品としての引き合いも多くなっています。
スカイブ加工は今後注目の金属加工法
様々な機器がデジタル化する現在、今まで情報処理機能を持たなかった機器にもCPUなどの演算処理装置が搭載されるようになりました。このような装置は熱を発生させるため、ヒートシンクの需要が増加すると共に、スカイブ加工の引き合いも増えています。
金属加工に関わるお仕事をされている方には、今後もぜひ注目していただきたい加工方法です。