転造加工とは?種類とデメリット、加工可能な金属を解説!

2023-11-10

本記事では転造加工について、基本的な知識に加え転造加工の種類、加工可能な金属、転造加工のメリット・デメリットなど幅広く解説しています。

転造加工とは?

転造とは強い力を加えることで、素材を変形させる塑性加工の一つです。材料の可塑性(材料を変形させても元に戻らない性質)を利用して、転造ダイス(断面がねじ山の形をした工具)を回転している加工対象物に押し当て、盛り上げることで成形(塑性変形)させます。

転造という言葉は「転がして(形を)造る」と書きますが、加工物を回転させながら加工を行うことに由来しており、英語ではローリング(Rolling)と呼ばれています。転造加工で施すことができる形状のバリエーションは、以下のようにさまざまな種類があります。

図1:転造加工で作れる形状バリエーション  

転造加工で施す形状の一つには、ローレットと呼ばれる金属表面に細かい凹凸状の形状が施されているものもあります。

参考:ローレット加工とは?適した素材や転造と切削の特徴に関しても解説!


転造加工の種類

平面ダイス転造加工 丸ダイス転造加工 プラネタリ転造加工
汎用ねじの大量生産 ねじ以外の部品加工 汎用ねじの大量生産

転造では、転造盤と呼ばれる加工装置を使います。転造盤は、使用する転造ダイス(工具)の種類やその加工法の違いによって、数種類に分類されます。代表的なものとして「平面ダイス転造方式」「丸ダイス転造方式」「プラネタリ転造方式」が挙げられます。

(1)平面ダイス転造加工


平面ダイス転造方式
図2:平面ダイス転造方式


平面ダイス転造方式は、板状の平ダイスを用いる加工方法です。2枚の平面ダイスで加工物をはさみ、一方のダイスは固定させたまま、もう一方のダイスを平行方向に動かして加工を行います。生産性の高い加工方法であるため、汎用ねじの大量生産に用いられます。

2枚の平ダイスで加工物をはさみ、両者のダイスを同じ速度で反対方向に運動させる加工方法もあります。

(2)丸ダイス転造加工

丸ダイス転造加工
図3:丸ダイス転造加工

丸ダイス転造加工は、円筒状の丸ダイス(ローラーダイス)を用いる加工方法です。2~3つの丸ダイスで加工物をはさみ、ダイスを同一方向へ、同じ速度で回転させながら加工を行います。ダイス間の距離を自由に変更できるため、加工の応用性に優れており、ねじ転造以外の部品加工にも幅広く用いられています。

他の2種類の加工方法とは異なり、加工時の材料の供給と排出が同じ場所で行われることから、生産性は平面ダイス転造加工やプラネタリ転造加工よりも劣ります。

(3)プラネタリ転造加工

プラネタリ転造加工
図4:プラネタリ転造加工

プラネタリ転造加工は、アーチ形状のセグメントダイスと丸ダイスを用いる加工方法です。固定されたセグメントダイスの内側で丸ダイスを回転させ、この間に加工物を送り込んで加工を行います。

加工中にダイス間の距離の変更ができず、加工の応用性は少ないですが生産性は高く、平ダイス転造加工と同様に汎用ねじの大量生産の現場でよく用いられている加工方法です。

転造加工で加工可能な金属

転造加工で加工可能な金属には、鉄、アルミニウム、真鍮、ステンレスなどがあります。転造加工に用いる材料は、材質の弾性と塑性の性質が重要です。材料の特性には、伸び率(弾性)や張力(塑性のしやすさ)の項目があります。

転造加工には、伸び率が5%以上で、張力が最高1700N/mm2までの材料が適しています。さらに、押込み硬さを表す尺度であるHRC硬度(ロックウェル硬さ)が20以下の材質はより向いている材質です。

転造加工のメリット!切削加工と比較して学ぶ

転造加工は、よく切削加工と比較されます。切削加工とは、加工物を切って削る加工方法です。転造加工のメリットは以下の5点です。

転造加工のメリット

(1)工具を長く使用できる
(2)切削加工よりも精密な仕上げ
(3)生産性が高い
(4)強度が高い
(5)環境にやさしい

転造加工のメリット(1)工具を長く使用できる

転造加工に用いられる工具(転造ダイス)は、切削加工に使用される工具と比較して、工具寿命が長いです。そのためコスト低減につながるほか、工具の交換頻度が少なくなって生産性の向上も期待できます。

転造加工のメリット(2)切削加工よりも精密な仕上げ

転造加工が施された被加工面は、研削されたダイスによって押し当てられて成形されるため、切削加工品と比較して非常に面粗度が良好です。光沢を帯びた仕上がりが得られます。

転造加工のメリット(3)生産性が高い

転造加工は切削加工と比べて加工時間が短く、工具の交換頻度も少ないため、生産性が非常に高く大量生産に最適な加工方法です。

転造加工のメリット(4)加工硬化による高強度

転造加工のファイバーフロー 切削加工のファイバーフロー

転造加工では、切削加工とは異なりファイバーフロー(繊維状金属組織)が切断されません。連続したファイバーフローを持ち、かつ強い力で押し込まれた金属繊維は、圧縮されることでさらに密度が高くなり加工硬化を起こします。塑性変形の加工硬化によって、転造加工品は切削加工品と比較して高い強度を持ちます。

転造加工のメリット(5)環境にやさしい

転造加工は切削加工のように切り屑を排出せず、比較的少ない動力でかつ短時間で加工できることから消費電力も少ないです。そのため環境にやさしい加工方法と言われています。

参考記事:【切削加工とは?】特徴・種類・注意点を動画と一緒にご紹介します!

転造加工のデメリット!

転造加工のデメリットは以下の2点です。

転造加工のデメリット

(1)設備投資の費用が高額
(2)少量加工や試作に不向き

転造加工のデメリット(1)設備投資の費用が高額

転造加工では、転造ダイスなどの初期投資が必要です。さらに一般的なねじ用のダイスなどは流通していますが、特殊なサイズや形状などになると、販売しているメーカーなども少なく、初期投資が高額になる可能性があります。

転造加工のデメリット(2)少量加工や試作に不向き

加工物のサイズや形状に合わせて転造ダイスをその都度購入する必要があるため、転造加工は少量生産には向いていません。試作などの極小ロットの場合には、切削加工のほうが加工時間が短くて済む場合もあります。

転造加工まとめ

転造加工をメーカーに依頼する際には、各メーカーによって対応できる材質や加工方法などが異なるため、事前に確認してから依頼することが重要です。転造加工は雄ねじの加工用に開発された加工方法で、今ではネジ生産に欠かせない技術です。ネジ転造は100年以上の歴史を持ち、日本でも50年間使用されてきた加工方法です。転造加工は雄ねじの加工の他にも、ギア(歯車)などの部品加工にも広く用いられています。

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