2025-01-15
更新
志民 直人
技術営業、カスタマーサクセス
切削加工歴29年の1級機械加工技能士(精密器具製作/フライス盤/数値制御フライス盤)。金型・部品加工経験を持ち、CAD・CAMや各種工作機械に精通。設計からカスタマーサービスまで幅広く対応。製造現場改善や治具設計も得意。趣味は日曜大工、ゲーム。
アルミ板は、自動車や電気製品などのさまざまな分野で使用されている材料です。他の金属に比べると比較的柔らかいため、カットしやすい素材です。よほど高精度のものでない限りは、個人でも簡単にカットが可能で、錆びにも強いことから、DIYでも活用されています。
しかし、カットしようにも「どの道具を使えばいいか分からない・・・」「カットの方法が分からない・・・」という方もいるのではないでしょうか。
そこで今回は、アルミ板をカットできる道具や、カットの方法を解説します。また、アルミ板の種類や、工場でアルミ板を加工している方法についても、併せて紹介します。
アルミ板のカットについて知りたい方は、ぜひチェックしてみてください。
アルミ板の代表的な素材は以下の通りです。
アルミ板は、軽量でありながら熱伝導性・導電性に優れ、柔らかいという共通した特徴があります。そのため、強度を持たせたるために、さまざまな元素を添加しているものも存在します。
上記素材のAの後ろにつく数字は「番手」といい、何の元素を含有しているかを知ることができます。2000系は銅、5000系はマグネシウム、6000系はシリコンとマグネシウムを添加。1000系は純アルミを意味しています。
A1050はアルミの純度が99.5%以上で、強度を高めるための元素を添加していないことから、強度に変化はありません。しかし、そのぶん加工性は良好です。
A2017はジュラルミンとも呼ばれ、強度の向上を実現。しかし、A1050と比較すると加工性には劣ります。
A5052は強度を高めながらも、成形性や溶接性にも優れた材質。
A6061は、熱処理を施すことでSS400と同等の強度を有します。
このように、アルミ板にはさまざまな種類があり、用途に合わせて使い分けられています。
参考記事アルミ板の種類は、以下の記事にて詳しく解説しているので、ぜひチェックしてみてください。⇒アルミ板の種類と板厚が丸わかり! 買うべき板が見つかります
ジグソーとは、電動ノコギリの一種。細身のノコギリ刃を自動で上下に高速運動させることで、被加工材を切断します。上の写真では合板を切断していますが、金属専用の刃とすることでアルミ板のカットも可能です。
ジグソーの特徴は、直線や曲線といった切断にも対応出来る点です。機種によっては、ノコギリ刃のスピード調節も可能。被加工材によってスピードを変えることで、切断しやすくなります。切断できる材料の厚さは機種によって異なるので、購入前は必ずスペックを確認しておきましょう。また、加工速度を重視する方は「オービタル機構」付きの機種がおすすめ。ノコギリ刃が上下運動に加えて前後にも動くことで、ブレードが楕円型の軌道を描き、よりスピーディーに切断できるようになります。
プラスチックカッターは、主にアクリルや塩ビ板といった硬質プラスチックを切るための道具。別名「アクリルカッター」とも呼ばれています。薄いアルミ板であれば、プラスチックカッターでもカットが可能。通常のカッターでも問題ありませんが、プラスチックカッターのほうが丈夫かつ、楽に作業できます。プラスチックカッターでのカットは、綺麗に切断しやすいというメリットがある反面、曲線のカットには不向きです。
被加工材に厚みがあるものを切りたい場合は、大型のプラスチックカッターがおすすめ。握りやすい分、力を込めてカットしやすくなります。
引用元:Amazon
ハンドニブラーとは、上写真のようにハンドルを強く握ることで板材を切断できる工具のこと。別名「二ブリングツール」とも呼ばれています。ハンドニブラーは、ジグソーやプラスチックカッターではカットが難しい、鉄板やステンレス板にも対応可能。また、直線や曲線といった、自由度の高いカットにも対応しています。
ハンドニブラーは電動工具とは違い、値段の安さや手軽に加工できるのがメリットです。しかし、少しずつしかカットできず、時間がかかる点はデメリット。高価ではありますが、加工時間を少なくしたい方は、電動ニブラーを検討するのもいいでしょう。
ハンドニブラーで楽にカットしたい方は、全長が長いものを選ぶのがおすすめ。全長が長いモデルはカットしやすく、手にかかる負担を軽減できます。また、替刃と交換できるモデルなら、刃が摩耗しても部品を取替えるだけで済むため安心です。
ジグソーの場合、まずカットの目印である墨線を引いておきましょう。墨線を描き終えたら、アルミ板を作業台に置き、クランプで押さえて固定。ここから刃を入れていくことでカットします。上写真は木材をカットする様子ですが、アルミ板と方法は変わりません。
ジグソーは、加工をする際、以下の点に注意してください。
まず、ブレードがアルミ板に触れた状態で動かし始めるのは厳禁です。アルミ板に当てた状態でブレードを動かすと、刃が弾かれてしまい、危険かつ正確な加工ができません。
また、ブレードは事前に金属用のものに交換しておきましょう。ブレードは素材や用途によって適切なものを使用しなければなりません。
使用するジグソーが、アルミ板の板厚に対応しているかも把握しておく必要があります。
オービタル機構を使う場合は、数値を上げすぎるとバリが出やすくなる点も覚えておきましょう。
定規をガイドにし、プラスチックカッターで複数回切り込むことで溝を付けます。板厚の半分程度まで溝ができたら、作業台の端と切り込み線を合わせ、上下に動かすことでカットできます。
切り込みを入れる際は、プラスチックカッターをゆっくり動かすのがポイントです。素早く切り込みを入れると、ガイドからズレやすくなるので注意してください。
また、使用する定規は裏にゴムが付いているものがおすすめです。ゴムにより定規の滑りを防止し、加工がしやすくなります。
ハンドニブラーの刃の溝にアルミ板を挟み、ハンドルを握ったり離したりを繰り返すことでカットできます。あらかじめ墨線などの目印を入れておくと、目的の形状にカットしやすくなります。
ハンドニブラー使用時は、板材の破片が飛ぶことがあります。作業の際は、目に入らないように保護メガネを着用しましょう。
ハンドニブラーの使用方法は、以下の動画も参考にしてみてください。
引用元:MonotaROsamurai
アルミ板は工具によってカットできる板厚が異なります。工具別の対応可能な板厚は、概ね以下の通りです。
厚みがあるものはジグソーを使用。薄いものはプラスチックカッター、もしくはハンドニブラーが適しています。ただし、製品によって適切な板厚は異なるので、必ず公式サイトや販売ページのスペックを確認した上で使用してください。
プラスチックカッターを使う場合は、折るようにして切断します。作業台の端とアルミ板の切れ込み位置を合わせて、外側の部分を上下に動かしましょう。上下に繰り返し動かしていると、金属疲労によりパキッと折れます。以下の動画では、折るように切断している様子が分かります。
引用元:株式会社inbro
工場でのアルミ板のカット方法として、レーザー加工があります。一般的に使用されている機器は、炭酸ガスレーザー加工機とファイバーレーザー加工機の2種類です。
炭酸ガスレーザーは、二酸化炭素を利用したガスレーザータイプの加工機。利用している加工メーカーは多いですが、アルミはレーザーの反射率が高いことから、機械が破損してしまう恐れがあります。そのため、一部の加工メーカーでは、アルミ板のレーザー加工に対応できない場合もあるでしょう。しかし、近年に作られた炭酸ガスレーザーであれば、レーザーの反射を遮断する機構を備えていることも。このような機械であれば対応が可能ですので、まずは加工メーカーに問い合わせてみることをおすすめします。
ファイバーレーザー加工機は、ここ数年の間に開発された新しいタイプの機器。レーザー照射面積が小さく、反射光を気にせずに切断が可能です。また、加工速度が早く、ランニングコストも削減できます。メリットが豊富にあるため、加工メーカーでは徐々に普及している加工機です。
工場では、切削加工にてアルミ板をカットすることもあります。直線にカットするのであれば、ランニングソーやテーブルソーが用いられます。ランニングソーは大物板材、テーブルソーは小物板材をカットするのに適した機械。どちらも丸鋸を利用し、高精度かつスピーディーなカットが可能です。以下はランニングソーの参考動画を添付しています。
引用元:株式会社イワシタ
曲線や溝などの加工をする場合は、フライス加工や穴あけ加工にて切削します。
今回はアルミ板のカットについて解説しましたがいかがでしたでしょうか。個人でアルミ板をカットするなら、ジグソー・プラスチックカッター・ハンドニブラーがあります。厚みのあるものをカットするならジグソーを。薄いものをカットするのであればプラスチックカッターかハンドニブラーがおすすめです。また、アルミ板の加工メーカーに依頼した場合は、レーザー加工か切削加工にて対応してもらえます。複雑な形状にも対応できるので、自作が厳しい場合は加工メーカーへの依頼を検討してみましょう。
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