2024-09-18
更新
志民 直人
技術営業、カスタマーサクセス
切削加工歴29年の1級機械加工技能士(精密器具製作/フライス盤/数値制御フライス盤)。金型・部品加工経験を持ち、CAD・CAMや各種工作機械に精通。設計からカスタマーサービスまで幅広く対応。製造現場改善や治具設計も得意。趣味は日曜大工、ゲーム。
ポリカーボネートは「ポリカ」や「PC」とも呼ばれている、熱可塑性樹脂の一種です。優れた特性を多くもつことから、屋根材やパーテーションなどのさまざまな製品に採用されています。
ポリカーボネートはDIYで人気のあるアクリルと同じ種類の材料ですが、特性に違いがあることをご存知でしょうか?
この記事では、ポリカーボネートの特徴や用途、加工方法について解説します。
ポリカーボネートとは、熱可塑性樹脂である汎用エンプラの一種。「5大汎用エンプラ」と呼ばれるほど代表的な材料で、さまざまな用途で採用されています。
ポリカーボネートの特徴は、高い透明性・耐衝撃性・耐久性・耐候性・自己消火性をもつ点にあります。また、プラスチックの基本的な成形方法である、射出成形・押出成形・真空成形・ブロー成形などに対応しているのもポイントです。
一方で、有機溶剤や界面活性剤に弱いほか、キズが付きやすいといったデメリットがあります。また、アクリルと比べて、接着や熱曲げ加工には不向きです。
これらの特徴から、ポリカーボネートは細かい加工を行うよりも、板状のまま使用することが多い材料です。DIYでも加工を行えるものの、アクリルに比べて加工性に劣る点に注意してください。
ポリカーボネートには、【平板・中空板・波板】の3種類があります。
平板は、アクリル板のような1枚板のタイプで、無色透明から色付きのモノ、すりガラスのような加工を施したモノと種類が豊富です。平板は汎用性が高く、パーテーションや看板、カーポートの屋根材など、幅広い用途で使われています。
中空板は、段ボールのように板と板の間に空洞を設けているのが特徴です。空洞であることで高い断熱性と保温性を有しており、屋根材や保温室、ドアの採光などの用途に適しています。
波板は、断面が波をうったような形に成形されているのが特徴です。波状の形により、平板よりも高い強度をもちます。雨水が集まり流れ落ちやすくなるので、屋根材に使われることが多くあります。
ポリカーボネートは、透明性・耐衝撃性・耐久性・耐候性・自己消火性に優れていることから、幅広い用途で使われています。
例えば、高い透明性と耐久性があることにより、DVD基盤やメガネのレンズによく採用されています。
また、スマートフォンに内蔵されているカメラのレンズや、スマートフォン用のケースにもぴったりの材料です。ポリカーボネートは高い精度で作れるだけでなく、ひずみも少ないため、カメラよりも雑に扱われることの多いスマートフォンへの使用に適しています。
ポリカーボネートは割れにくい特性もあるので、安全性が求められるパーテーションや、階段の腰板にもおすすめの材料です。
ここではポリカーボネートの長所と短所について詳しく見てみましょう。
可視光線透過率80~90%というガラスやアクリルに近い透明性をもちます。
ポリカーボネートは、ABS樹脂の5倍、ポリ塩化ビニル(PVC)の10倍、ポリエチレン(PE)やアクリル(PMMA)の50倍程度の耐衝撃性を有しています。これはプラスチックのなかでも非常に強く、ハンマーで叩いても壊れないほどです。
例えば、耐候性の低いポリエチレンなどの樹脂素材は、太陽光・紫外線・雨などの自然環境による影響で、屋外で使用しているとヒビが入ったり変形したりします。
一方、ポリカーボネートは耐候性に優れているので、屋外で使用してもさまざまな自然環境に耐えられる性質をもちます。そのため屋根材や看板といった屋外で使用するモノにも適した材料です。
ポリカーボネートは、自己消火性(火がついても燃え広がらずに自然に消火される特性)をもちます。
プラスチックの自己消化性を判断する材料として代表的なものに、“UL94規格”と“JIS K 7201”の酸素指数(OI)があります。
UL94規格では難燃性の違いによってUL94の後ろにさまざまな記号が付きますが、ポリカーボネートは“UL94 V-2”程度の値を示します。これは、2回(各10秒間)炎に接触させても、燃焼時間が30秒以下であることを示します。
酸素指数は、数値が高いモノほど難燃性であることを示しますが、ポリカーボネートの酸素指数は24~25程度です。この数値は、材料が燃えるものの、自己消火性があることを示しています。
ポリカーボネートは、有機溶剤・界面活性剤に弱い特徴があります。これらが付着した状態で放置していると、ヒビ割れや変形などを起こす場合があります。
ポリカーボネートは耐久性に優れているものの、キズがつきやすい点はデメリットです。
鉛筆の硬度だとHB程度のため、ブラシで擦るだけでもキズがついてしまいます。キズがつくと透明感が失われるほか、外観も悪くなってしまうので、美観性を求められる箇所にはポリカーボネートの使用は避けたほうがよいでしょう。
アクリルは、カッター切断や曲げ加工、溶剤接着が手軽に行えるため、DIYでも人気の材料です。一方でポリカーボネートは、これらの加工を行うのがアクリルに比べて難しい傾向にあるので、板状のまま使うことが多くなります。
ここではポリカーボネートの加工方法・工作例をご紹介します。ただし、ポリカーボネートはアクリルに比べて加工が難しい傾向にあるので取り扱いには注意が必要です。
ポリカーボネートは、アクリルカッターを用いて切断することができます。切断の際は板を固定した状態で行い、定規などをガイドにして加工してください。アクリルカッターで設けた溝が不十分だと、折るときに割れてしまう可能性があるので注意が必要です。
ポリカーボネートの端部は、何も処理を施していないと鋭利な状態になっているので、取り扱いに注意してください。端部に触れるような用途での使用の際は、糸面取りを行うようにしましょう。糸面取りは、プラスチック用カッターの刃の裏やスクレーパーの刃の側面を、擦るように端から端まで走らせることで角が取れます。
ポリカーボネートは棒ヒーターやヒートガンを用いて曲げられますが、細かい温度調節が求められるため難しい傾向にあります。
材料を溶かして接着する溶剤接着は、仕上がりが悪く、強度も損なうので避けてください。
ボルト固定の場合は下記の穴ピッチを参考にしてください。
・板厚が3.0mm以下:10~20mm
・板厚が3.0mm以上:20~30mm
・押さえ板による固定:30~50mm
ボルト穴の寸法は、温度の変化により伸縮することを想定して、ボルト軸の径に対して2~4mm大きい径で開けましょう。縁にボルト穴を設ける場合は、板の縁から穴径の2.5倍以上内側に位置するようにしてください。
ポリカーボネートのシーリングは、シリコン系アルコールタイプを使用します。アルコールタイプ以外のシーリング材を使用するとクラックが発生する場合があるので注意してください。
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