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オイルスキマーとは?構造、原理、効果、種類

工具 | 2021年10月08日

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オイルスキマーとは、英語では「Oil Skimmer」と綴られる「オイルをすくい取る装置」を意味する言葉です。その名の通り、液体の表面に浮いている油分をすくい取る機能を持つ装置のことです。

オイルスキマーは、発電所や製鉄所、金属加工・精密部品の生産工場などで使用されている装置です。主に、工作機械の稼働に伴って用いられる加工液、加工品の洗浄に用いられる洗浄液などに混入した油分を除去する目的で使用されます。そのほか、工場排水を浄化する目的でも使用されることがあります。

幅広く用いられている装置ですが、耳馴染みがない方も多くいるのではないでしょうか。

この記事では、オイルスキマーの詳細、用途、構造、油分回収の原理、効果、種類について詳しく解説していきます。

オイルスキマーとは

オイルスキマーとは、液体の表面に浮いている油分をベルトなどに付着させて回収する装置のことです。液体内に混ざり合った水分と油分とを別々に分ける油水分離装置の一種で、浮上油回収装置とも呼ばれます。回収方法は様々で、ベルト式や円盤式、スクリュー式、フロート式などの種類があります。

主な役割は、液体浄化と排水処理です。工場内のタンクや浄化槽などに使用されますが、コンパクトなオイルスキマーも多く、設置場所が狭い場合でも適切な製品を選定すれば使用することができるでしょう。

オイルスキマーの用途

オイルスキマーの用途としては、以下が挙げられます。

●切削液の浄化

オイルスキマーは、切削加工において、加工時にマシニングセンタなどの工作機械で使用される水溶性切削油の浄化に用いられます。

切削加工は、マシニングセンタなどの切削加工機で金属材料などを削り出して成形する加工法ですが、その加工時には、潤滑や冷却、切り屑の排出のために工具と加工物との間に流し込む切削液(クーラント)が必要不可欠です。そして、切削液は、循環させて再利用することが一般的で、利用するたびに汚染されていくので、オイルスキマーなどによる浄化が必要となります。

なお、切削液には、水溶性切削油を水に溶かし込んだものと、不水溶性切削油を原液のままで用いるものがあります。近年では、安全性が高く、環境負荷が小さい水溶性切削油を溶解させた切削液が主に用いられており、オイルスキマーはこちらの切削液のみに適用可能です。

オイルスキマーは、水溶性切削油が溶解した切削液に、以下のような侵入経路を通して混入した油分を回収して切削液を浄化します。

・前工程で油性の加工液などを使用していた場合、油分が加工物に残留して切削液に混入する

・外部から受け入れた部品は油性の防サビ剤が使用されていることがあり、それが油分として切削液に混入する

・工作機械を構成する軸受・歯車・油圧装置などの摺動部位に用いられている潤滑油やグリースなどが油分として切削液に混入する

参考:【切削加工とは?】特徴・種類・注意点を動画と一緒にご紹介します!

●洗浄液の浄化

オイルスキマーは、洗浄機で使用される洗浄液の浄化に用いられます。洗浄機は、成形加工や表面処理、焼き入れなどを施した後の加工品の洗浄に使用されます。洗浄液は、洗浄を繰り返すうちに、加工品に付着した汚れやゴミ、油分などによって次第に汚染されていくため、その浄化の一工程の中でオイルスキマーが用いられるのです。

●脱脂液の浄化

オイルスキマーは、加工品に付着した油分を除去する脱脂工程で使う脱脂液の浄化に用いられます。脱脂は、塗装やメッキ、ボンデ処理などの表面処理の前に行われる工程です。そこで用いられる脱脂液には、大量の油分が含まれることになります。そのため、脱脂液の油分除去が必要となり、その一工程として浮上油の除去が可能なオイルスキマーが使用されます。

参考:塗装前処理とは?目的や工程の流れについて専門家が解説!

参考:メッキ加工方法について!【専門家が語る】メッキされるまでの工程が丸わかり!

●排水処理(廃水の浄化)

オイルスキマーは、機械工場や発電所、製鉄所といった大量のオイルを使用する施設の排水処理に用いられます。これらの施設の排水処理では、浮上ゴミや汚泥、様々な有害物質などを除去するため、複数の工程を組み合わせて処理します。その中の一工程で、浮上油の除去が可能なオイルスキマーを使用することがあります。

オイルスキマーの原理と構造

オイルスキマーには、いくつかの回収方法があります。その中でも、最も代表的な方法はベルト式で、上図のような構造を持ち、それぞれの部位は以下のような役割を果たします。

●ベルト…金属製または樹脂製の継ぎ目のないシームレスな帯形状の部品で、回転させることで次々と浮上油を絡め取ります。金属製では、油分が付着しやすいステンレスやスチールなどが、樹脂製では、油分の吸着性能を持つポリウレタンや油分を捕獲する表面構造を持つナイロンなどが使われています。

●プーリー…ベルトを巻き付ける円盤状の部品です。オイルスキマーでは、モーターからの動力をベルトに伝達する上のプーリーと浄化対象の液体に沈める下のプーリーの2つを使用し、ベルトを連続的に回転させます。ベルトが金属製の場合は、上のプーリーに磁石を内蔵させてベルトを貼り付け、ベルトが滑ったり、外れたりしないようにします。ベルトが樹脂製の場合は、ベルトが撓まないように上のプーリーと下のプーリーとの間にフレームを渡してベルトのテンションを維持する必要があります。

●スクレーパー…ベルトに付着した油分をこそげ取るヘラ状の部品です。

●分離槽…スクレーパーでベルトから除去した油分を一時的に貯める水槽のことです。油分や水分のほか、油分が切削粉などを抱き込んだスラッジ(汚泥)なども一緒に回収することが多く、ここでさらに分離を進めます。

以上の構造の説明から理解されるように、オイルスキマーは、ベルトを浄化対象の液体に浸して、エンドレスに回転させることで連続的に浮上油を絡め取ります。そして、上部に配置したスクレーパーでベルトに付着した油をこそげ取ることで液体の浮上油を回収します。

ただし、オイルスキマーでは、水中に漂っている油や底に沈んだ油は回収できません。そのため、必要な場合は、さらに油水分離装置などで液体の浄化を行います。

オイルスキマーの効果

オイルスキマーは、浮上油の回収によって、以下のような効果を発揮します。

切削液・洗浄液の腐敗の防止

オイルスキマーの利用は、切削液や洗浄液が腐敗するのを防ぐ効果があります。

切削液や洗浄液に浮上油が増加すると、液の表面を覆って空気が遮断されるため、嫌気性細菌が増殖して液が腐敗することがあります。腐敗した液は、悪臭を放つとともに、一部がオイルミストなどとなって空気中に浮遊し、皮膚かぶれや目の疾患、循環器系の炎症など、作業員の健康被害に繋がることがあるので注意が必要です。

切削液の機能低下の防止

オイルスキマーを利用することで、切削液の潤滑性能や冷却性能、切り屑の排出性能の低下を防ぐことができます。

切削液中に水溶性切削油以外の油分が混入すると、切削液の機能が低下して、切削性能が悪化したり、工具寿命を縮めたりすることがあります。オイルスキマーの使用によって、切削液の寿命を伸ばすとともに、工具寿命の延長や切削性能の維持が期待できます。

加工後・洗浄後・脱脂後の油分による加工品の汚染防止

オイルスキマーは、製品生産の様々な工程で利用される液体の浄化に用いられ、その液体に接触する加工品の汚染を防止することができます。特に、ゴミや汚れなどを除去する洗浄液や油分を除去する脱脂液に油分が含まれると、洗浄または脱脂が意味のない工程となってしまいます。

機械の汚染防止

オイルスキマーを使用することで、切削加工機や洗浄機などの汚染を防止することができます。

オイルスキマーの切削液への適用は、切削加工機のほか、切削液の噴射や循環の役割を担うクーラント装置の油分による汚染を防ぎます。特に、クーラント装置に備わるノズルやフィルタの目詰まりを抑制することが可能で、それらの交換に伴うコストの削減に繋がります。

洗浄機の多くにも固形異物を除去するためのフィルタがあり、オイルスキマーはフィルタの目詰まりを防止する効果があります。

オイルスキマーの種類

オイルスキマーによる浮上油の回収方式には、代表的なものとしてベルト式や円盤式、スクリュー式、フロート式が挙げられます。ここでは、これらの回収方式について説明します。

ベルト式

ベルト式は、最も幅広く用いられているオイルスキマーです。

上述したように、回転するベルトに油分を付着させ、ベルトから油分をこそげ取ることで油分を回収する方式です。ベルトは、一部を浄化対象の液体に浸し、ベルトの上部で油分を回収します。

ベルトは、油が付着しやすいステンレスやスチール、油が付着しやすいように表面加工された樹脂、油分の吸着性能を持つ複合樹脂などが材質です。浄化対象の液体や回収対象の油分の性質によって使い分けます。

円盤式

円盤式は、浄化対象の液体に浸した回転する円盤に油分を付着させ、液体外に配置されたワイパーブレードで円盤上の油分を拭い取って油分を回収する方式です。

ベルト式と比べると、浮上油の回収量が多く、耐久性にも優れますが、設置には比較的広いスペースが必要となります。また、構造が簡素であることから、メンテナンスが簡単です。

スクリュー式

スクリュー式は、浄化対象の液体に螺旋構造のスクリューの先端を浸し、スクリューを回転させて、少しずつ油を持ち上げていくことで油分を回収する方式です。

スクリューで油を巻き取って回収するため、油が付着しないと回収できないベルト式よりも回収能力は高くなっています。しかし、切削粉やスラッジなども巻き取ってしまうと、装置を破損させることがあります。そのため、固形異物が多い液体にスクリュー式を使用する場合は注意が必要です。

また、スクリュー式では、油分を持ち上げる過程で低粘度の油が垂れてしまうことから、高粘度の油のみしか回収できません。ただし、油以外の切削液なども落下するため、分離槽がほぼ不要であるというメリットがあります。狭いスペースに設置できるのも利点です。

フロート式

フロート式は、回収装置を浄化対象の液体に浮かせ、回収装置に付属したノズルで浮上油を吸引することで油分を回収する方式です。

ノズルで能動的に吸引するため、回収能力と回収速度が共に高くなっています。しかし、液体に速い流れがあると、回収装置が不安定になってしまい回収効率が低下します。また、切削液や洗浄液など、油分以外の液体も吸引してしまうため、分離槽の容量を大きくする必要があります。

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この記事を書いた人
株式会社Catallaxy

株式会社Catallaxyは "未来の製造業をつくる" をミッションに掲げ、製造業における従来のサプライチェーン/バリューチェーンの刷新を目指しています。記事内容に関するお問い合わせはこちらへ。

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