染谷 ひとみ
Mitsuri Media管理人
精密板金加工工場のインサイドセールスとして加工と寸法の提案をしてきた経験を経て、製造業の知見と楽しさを提供している。 幼少期からモノの構造を理解するのが好き。JAPAN MENSA会員。
今回は黒皮の特徴や除去方法などについて解説します。
黒皮とは、別名「ミルスケール」とも呼ばれるもので、熱間圧延加工で作られた鉄鋼材料の酸化皮膜を指します。黒皮が付いた鉄鋼材料は黒皮材と呼ばれています。
黒皮材は表面が粗く、塗装の密着性が乏しいことから、一般的に黒皮を除去する必要があります。
引用元:横山テクノ 鉄 黒皮 丸棒材 丸鋼材(SS400・S45C) 寸法 切り売り 小口販売加工
黒皮(ミルスケール)とは、熱間圧延加工で作られた鉄鋼材料の酸化皮膜のことを指します。上図を見ても分かるように、鉄鋼材料が黒色の皮で覆われたような外観が特徴です。また、切削加工のされていない鉄鋼材料の表面を総じて黒皮と呼ぶこともあります。黒皮で表面が覆われた鋼材のことを「黒皮材」と呼びます。
熱間圧延とは、金属が加工による硬化を生じない再結晶温度以上の温度で圧延が行われることです。熱間圧延は、圧延中に高温の素材表面が大気中の酸素と結合し、黒皮を形成します。
参考:【圧延】とは?工法、種類、製品例、圧延の発展の歴史についてご紹介!
黒皮材は、表面にピンホールや凹凸があるほか、表面の精度が低く、寸法精度を要する用途や外観性を重要視する用途に不向きです。一方で、黒皮材は熱間圧延したままの鉄鋼材料のため、価格が安く手に入る特徴があります。
S45CやSS400のようなポピュラーな材料は、黒皮材とミガキ材が流通していますが、I形鋼やH形鋼などの建材用途のものは、黒皮材しか流通していません。
酸化皮膜は、金属表面と空気の接触を防ぐ保護膜として機能するものですが、黒皮材の場合は鋼材と黒皮の密着強度に乏しく、表面にはピンホールや凹凸があることから、防錆目的で黒皮材が選ばれることはほとんどありません。また、塗装を施す場合も、黒皮がある状態では密着性に乏しいことから下地には不向きです。
そのため、黒皮材を用いる際は、黒皮を除去してから塗装して使われるのが一般的です。
黒皮は、酸洗いにて化学的に除去するか、ショットブラストのように物理的に除去するかの方法があります。
酸洗いとは、塩酸などの酸溶液を使って金属表面のスケールや酸化被膜を除去する手法で、主に表面処理の下処理として多く採用されています。
引用元:株式会社ニホンケミカル ショットブラストの教科書 ミルスケール(黒皮)とは?特徴や除去方法について解説
ショットブラストとは、ワークの表面に細かい砂や玉を衝突させて、表面を粗くしたり表面をバリや錆びを除去する手法のことです。ショットブラストは酸化皮膜を除去したのちに、ワークの表面に凹凸を設けるため、塗装の密着性がよくなります。
ミガキ材とは、冷間圧延加工にて作られた鉄鋼材料のことを指します。冷間圧延は熱間圧延と違い、常温で材料を圧延する方式です。ミガキ材は黒皮材と特徴が異なり、鉄鋼材料の表面は凹凸が少なく、表面がキレイな特徴があります。ただし、冷間圧延加工時に発生する残留応力の影響を考慮しなければならない点には注意が必要です。
S45CやSS400などのポピュラーな鉄鋼材料は、熱間圧延された材料である黒皮材、もしくは冷間圧延された材料であるミガキ材から選びます。
ミガキ材はコストが黒皮材に比べて高いものの、黒皮材を使えるようになるまでの加工のコストを考慮すると、ミガキ材のほうが必ずしも割高になるというわけではありません。そのため、ミガキ材と黒皮材のどちらを選択するかは、加工コストや加工時間、用途などを含めて検討する必要があります。
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