「鉄の曲げ加工を依頼したいが、取引先がなくて困っている・・・」
「鉄の曲げ加工の種類について知りたい。」
今回は上記なような疑問をお持ちの方に、曲げ加工についてご紹介します。鉄の曲げ加工に興味がある方や曲げ加工の依頼を考えている方は、参考となる記事なので、是非ご一読ください。
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鉄は純度100%で使用することはほとんどありません。純鉄は酸化しやすく、すぐに錆びついてしまうため、炭素量を増やすことで強度を高め、使用しやすい材にします。炭素を2パーセント以上含んだ鉄を鋼と言い、私達が普段「鉄」と呼んでいるものは、この鋼のことを指します。
鉄は曲げやすく加工しやすい為、様々な部品に加工されています。鉄が曲げ加工されている理由は、鉄の硬度や弾性が曲げ加工に最適な値であるだけでなく、その単価の安さから大量発注にも向いているからです。また、加工処理後のメッキ処理も多種多様にできることから、幅広い分野で活かすことかできます。
アルミやステンレスなどと比較すると、耐食性や装飾性は劣ってしまうものの、加工のしやすさや、価格の安さでは、鉄のほうが上です。そのため、鉄の曲げ加工を依頼する方の多くはコストダウンを目的としています。また、鉄鋼板は種類が豊富なため、様々な用途に応じて使い分けることも可能です。もちろんアルミやステンレスは、鉄とは違う特徴がありますので、依頼する際は、製品の用途や加工方法に応じて素材を決めて頂ければと思います。
鉄鋼には主にSS材と炭素鋼鋼材S-C系の2種類があります。この2つは、同じ鉄でも、反応が異なる為、その違いに注意しなくてはいけません。
SS材は、正式には一般構造用圧延鋼材と呼ばれるもので、SSのあとに続く数字は、引張強さを表しています。非常に利便性の高いSS材ですが、金属の中では硬度はあまり高くないため、高い硬度の部品や耐摩耗性が必要な部品としては不向きです。
炭素鋼鋼材S-C系は、SC材と呼ばれることもあります。SC材は、SS材とは表記が違い「S○○C」のようにSとCの真ん中の数字で炭素量を表します。このSC材は炭素量の増減や熱処理を施すことによって様々な性質を持つようになります。そのため、多くの種類があり、機械の部品や部材を中心として様々な用途で使用されます。最も代表的なものにS45Cがあります。
基本的に曲げ加工ではどちらの鉄鋼も使用されますが、SS材のほうが一般的です。SS材とSC材の一番の違いは強度にあります。SC材のほうが炭素をより含んでいることが多い為、強度や硬度が高いといえます。そのため、基本的にはSS材を使用し、強度が必要な曲げ加工の部品が必要な場合はSC材を使用します。
鉄の融点は1536℃で、沸点は2863℃です。鉄は1200℃~1500℃くらい熱すると、どろどろに溶けてきます。しかし、曲げるだけでしたら、そんな高温は必要ありません。
鋼をアセチレンバーナーなどで加熱していくと、だいたい800℃ほどで色が赤く変わり始め、1000℃を超える頃にはぐにゃりと変形しやすくなり、容易に曲げることができるようになります。
しかし、鉄鋼は200~300℃ほどで強度が上がって延性・靭性が下がる青熱脆性域や、950℃付近の赤熱脆性域で脆くなります。青熱脆性は炭化物が凝縮する析出硬化の1種で、赤熱脆性は鋼に含まれる銅(Cu)・硫黄(S)・すず(Su)等により発生するといわれています。
鉄を曲げる加工法には、冷間曲げと熱間曲げ、炎加熱による曲げがあります。
冷間曲げは、常温~720℃以下で機械的な圧力をかけて曲げる加工方法です。一般的な冷間曲げには、ベンダー曲げやロール曲げがあります。
熱間曲げは、ワークを温めると変形しやすくなる金属の性質を利用して、曲げる加工方法です。冷間曲げよりも小さな圧力で、大きな曲げやひずみを金属に与えることができます。板厚や板幅の大きいものに、半径の小さな曲げや鋭角の曲げをするのにも向いています。
上述したように、鋼は強度が上がったり、脆くなったりする温度範囲があるため、これを避けて通常800℃~900℃の温度範囲で熱間曲げ加工をします。
鋼は加熱すると他の金属と同様に膨張し、膨張したところを冷却すると収縮します。この膨張や収縮する力を利用して曲げる加工方法が、炎加熱による曲げ加工です。炎加熱による曲げ加工は、局部的にプロパンやアセチレンなどのバーナーで鋼を加熱し、水で冷却して収縮させる曲げ加工なので、大きな鉄鋼板でも精度良く曲げることができます。炎加熱による曲げ加工には、線状加熱があります。
それでは鉄の曲げ加工方法の中から、主な3つをご紹介します。
ベンダー曲げとは、ベンダーブレーキというプレス機を使用して金属素材を曲げる加工方法です。プレス曲げとも言われています。
ベンダー曲げはプレス機械を利用しているため、生産速度が優れています。そのため、部品や製品を大量生産したい際に、おすすめの曲げ加工です。機械による精密な金属加工が可能なため、多少複雑な曲げ加工も行うことができます。幅広い加工が可能なため、曲げ加工では最もメジャーな加工とされています。
しかし、ベンダー曲げは、曲面を作る際に何度もベンダーを打たなくてはならないため、ロール曲げのような加工はほとんどできません。また、素材に掛ける圧力や金型の設計まで細かく計算する必要があります。
ベンダー曲げには、L字曲げやZ字曲げなど様々な曲げ方がありますが、一番メジャーとされる曲げ方にV字曲げがあります。
このV字曲げには、主に3つの加工技術があるため、用途に応じて利用することで、精度の高い製品に仕上げることができます。
パーシャルベンディングとは90°に満たない角度の曲げ加工に使用される技術です。加工方法は、素材を押さえつけずに金型にのみ圧力を加えるため三か所のみに力が集中します。金型と金属素材に隙間ができるため、エアーべンディングとも言われています。
ボトミングは、素材を下側の金型に合わせて底押しする方法です。金属素材が沿うくらいの圧力をかけます。90°の金型を使用する場合には85°から89°のように、下側の金型の角度に合わせた加工ができます。パーシャルベンディングよりも技術力に影響されないため、V字曲げでは最も利用される方法です。
コイニングは、ボトミング以上に金属素材に圧力を加える方法です。ボトミングと比べ5倍以上の圧力が必要なことに加え、精密な加工技術が必要になります。コイニングは強い圧力が必要なため、対応可能な金属が他の曲げ加工よりも薄くなってしまいます。その為、現在ではあまり使われない方法です。
ロール曲げとは、複数のローラーを使用し金属を曲げる加工方法です。鉄以外にもステンレス等の加工にも使用されています。ロール曲げのメリットは、ローラーの距離を調整することによって、様々な形状に曲げることが可能な点です。高い汎用性を持っており、丸みのある曲面が求められる場合だけでなく、ローラーで加工素材を一周させることによって筒状の部品に仕上げることができます。また、ローラーを通せば、両端まで金属素材を曲げることが可能なため、部品ロスが少なく無駄なく利用できます。しかし、ローラーによって曲げるため、加工する厚みには限界があり、依頼する際は金属加工メーカーに相談することをおすすめします。
線状加熱加工とは、熱を利用することで鉄を曲げる加工方法になります。
鉄鋼をプロパンやアセチレンなどのバーナーで加熱して柔らかくした鋼に圧力をかけて押し曲げる「熱間曲げ」ではありません。
鋼を火にあぶって膨張させ、水で冷却して収縮させることで曲げる加工法です。
これなら大きな鉄鋼板でも、精度良く曲げたり歪みをとったりすることができますから、造船業での船体外板や橋桁、鉄骨で良く使われています。
今まで線状加熱加工は、熟練した職人の経験や勘による技が必要でしたが、近年は自動加工もできるようになり、加工能力の向上やコストダウンもできるようになりました。
線状加工の方法は、片手にアセチレンバーナーを持ち、もう片方の手にホースを持ち、水をかけながら鉄板を熱していきます。鉄板は初め、火であぶっている側と反対の外側に曲がっていきますが、バーナーであぶるのを止めて水をかけ続けると、温度が下がってきてあぶった側である内側に曲がってきます。
この原理を利用して、線状加熱加工は加熱方法により、大きな鋼板にも複雑な曲げや絞りを実現することができます。これらの技術は、主に造船業で使われることが多いです。いくつかご紹介します。
緩い角度の曲げには平行線状に焼いていきます。
強めの曲げが必要な時はクロス線状に焼をいれます。
もっと強めに曲げる場合は、三角焼(耳絞りともいう)の方法が向いています。
部分的に調節するような微妙な曲げには、お灸を据えるように1点を焼く点加熱をします。
参考記事
鉄の曲げ加工以外の切断・溶接・切削などの加工については、こちらの「【鉄加工】工程を全てご紹介!鉄加工ならMitsuriにお任せ!」の記事もご参照ください。
鉄の曲げ加工をすることができる板厚の厚さやサイズの加工限界は、炭素の含有量や加工機械、加工方法によっても変わってきます。曲げ加工は、一般的に板厚が厚くなるほど、また炭素の含有量が多くなるほど難しくなるからです。
鋼の炭素の含有量が多くなると、強度は上がりますが靭性や延性などが低くなり、クラック(亀裂)が入りやすくなります。そのため、加工限界の板厚も異なります。
加工機による場合は、例えばロール曲げ加工は、板厚1.5mm~16mmほどが一般的に想定される加工の板厚です。大体厚くても25mmくらいまでが想定内になっています。しかし、ベンディングロールなどで加工する場合は、板厚30mm~70mmの極厚を最小半径150mmにまでロール曲げ加工することが可能です。
このように加工機によっても加工限界の板厚は変わってきます。
一般的な目安がお知りになりたい場合は、下記を参照してみてください。一般軟鋼板にベンダー曲げ加工をする場合の一例です。
<表の見方>
①その材料1mを曲げるのに必要な圧力( F )
②曲げを使用する金型(ダイ)のV 幅(v)
③曲げ得る最小フランジ長さ( b )
引用元:金型ワールド
引用元:株式会社かねよし
引用元:株式会社カネキ
引用元:株式会社カネキ
引用元:株式会社カネキ
今回は鉄の曲げ加工についてご紹介しました。
鉄には様々な特徴があります。その特徴や性質を理解することで、曲げ加工を依頼する際に製品に応じた加工をすることができます。その結果、品質の高い製品に仕上げることが可能です。
金属加工メーカーの中には、鉄の曲げ加工を依頼できない会社もある為、依頼する際には十分に調べたうえで、依頼することをおすすめします。
また、鉄の曲げ加工についてお悩みの時は、ぜひMitsuriにご登録下さい。
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