志民 直人
技術営業、カスタマーサクセス
切削加工歴29年の1級機械加工技能士(精密器具製作/フライス盤/数値制御フライス盤)。金型・部品加工経験を持ち、CAD・CAMや各種工作機械に精通。設計からカスタマーサービスまで幅広く対応。製造現場改善や治具設計も得意。趣味は日曜大工、ゲーム。
今回は横形マシニングセンタの構造や種類について解説します。
マシニングセンタは、ATC(工具を自動で交換できる機能)を有し、CNC(コンピュータ数値制御)によって、中ぐり・フライス削り・穴あけ・ねじ立てなどの加工を連続で行える機械です。マシニングセンタにはいくつかの種類がありますが、そのなかでも横形マシニングセンタは、主軸が水平方向に向いたタイプで、ワークを側面から加工します。
横型マシニングセンタの加工軸は、コラム・サドル・テーブルが可動することで、XYZの3軸に対応します。一部のモデルはテーブルの回転が可能で、計4軸での加工が行えるものもあります。
引用元:モノタロウ マシニングセンタの基礎講座 マシニングセンタの基本的な構造
横形マシニングセンタの構造は上図の通りです。
以下に横形マシニングセンタの主要構造の役割について解説します。
●テーブル:ワークを取り付けるための台。サドル上を図中前後方向に移動します。モデルによってはテーブルが回転するものがあり、ワークをセットし直さなくても多方面の加工が可能です。
●ベッド:本体を支えるための土台。テーブルのガイドとなる案内面が加工されていて、サドルが図中左右方向に移動できる仕組みです。
●コラム:横形マシニングセンタの支柱となる部品。ボールねじの運動により主軸頭の縦方向の移動に対応します。
●サドル:ベッドの上に配置されている部品。ベッドの案内面により左右方向へ移動できます。
●主軸頭:主軸や駆動装置などを搭載している部品。
●主軸:刃物工具を取り付け、回転運動を与える軸。
上記の構造は横形マシニングセンタの基本的な部品になりますが、製造メーカーやモデルによって内容が異なることもあります。
引用元:モノタロウ マシニングセンタの基礎講座 自動化の仕組み:APC(オートマチック パレットチェンジャ、自動パレット交換装置)
マシニングセンタは、金型や自動車部品の製造など、さまざまな産業にて活用されています。そのなかでも横形マシニングセンタは、自動化に適した構造のため、無人運転や大量生産の用途で用いられることがあります。
横形マシニングセンタは、重力により切り屑が落下するので、切削点に切り屑が溜まりにくい特徴があります。この構造は切り屑による切削不良が発生しにくいだけでなく、仕上げ面が傷つくのも防げます。
以上の特徴から、立形マシニングセンタよりも横形マシニングセンタのほうがAPC(自動パレット交換装置)を搭載するのに適しており、マシニングセンタの可動率を向上させることができます。
●高さのあるワークの加工に適している。
横形マシニングセンタは、主軸が地面に対して横向きに取り付けられているため、高さのあるワークにも対応しやすい特徴があります。
●切り屑が溜まりにくい。
横形マシニングセンタは、ワークを横から加工する構造上、切り屑が重力により落下します。これにより切削点に切り屑が溜まりにくく、切り屑によって仕上げ面が傷付くことが少なくなります。
●テーブルが水平方向に回転する機種の場合、高い加工精度が得られる。
引用元:モノタロウ マシニングセンタの基礎講座 回転軸とは?(右手の法則その2)
横形マシニングセンタは、XYZ軸に加えてテーブルの回転軸が加わることで、手作業によるワークの加工面を変更する必要がなくなります。手作業でワークをセットし直す必要がなくなるので、高い加工精度を出すことができます。
●APCを搭載することで加工の自動化に対応できる。
横形マシニングセンタは、切り屑の排出性に優れているため、APC(自動パレット交換装置)を利用するのに適しています。APCを搭載しているマシニングセンタは、外段取りにてワークの着脱が可能で、パレットを複数台装備すれば長時間の無人運転も可能になります。
●平面に広いワークの加工には不向き。
横型マシニングセンタは、主軸が水平方向であることから、平面に広いワークだと加工しにくいデメリットがあります。
●立形マシニングセンタに比べてコストが高い。
横形マシニングセンタと立形マシニングセンタを比較すると、横形マシニングセンタのほうが構造が複雑なため、コストが高い傾向にあります。
横形マシニングセンタは、主軸のサイズにより、大きく分けて3つのタイプに分類されます。
30番の主軸を搭載した横形マシニングセンタは、小型なモデルのため、省スペースでの配置が可能です。そのほかにも、高速回転や高速送りが可能で、加工時間の短縮にも寄与します。30番は大量生産に適したライン対応型のマシニングセンタとして利用されていることもあります。
40番の主軸を搭載した横形マシニングセンタは、中型のモデルで金型の加工に多く採用されています。中ぐり加工に対応できるほか、大径カッターなどによる深穴加工も可能です。
50番の主軸を搭載した横形マシニングセンタは、大型のモデルで鋳鉄などの大型ワークの重切削にて多く採用されています。また、切り屑の排出性に優れているので、大型金型の長時間加工も得意とします。
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