2025-01-13
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今回は、六角ナットの規格や種類、特徴などを解説します。六角ナットは、おねじを持つものと組み合わせて使うことで、部材を固定できる部品です。
六角ナットは大きいサイズから小さいサイズまで幅広くあり、あらゆる製品で活用されています。ただし使用する際には、いくつか注意点もあります。
ナット類は、基本的にボルト類などのおねじを持つものと組み合わせて、部材を固定します。ナット類のなかでも六角ナットは標準的なタイプで、幅広いシーンで採用されています。六角ナットは、精密機器や橋梁、船舶などのほか、一般生活のなかでも多く使わています。
六角ナットのねじ穴は貫通穴である特性上、ボルト類を通すとねじ部分が飛び出てしまいます。そのため、人が接触するような場所だとケガをする可能性があるため、使う場所には注意が必要です。
また、ナット類は部材の振動などによりゆるんでしまいます。ゆるみを避けるためには、上図のように六角ナットを2個使用する「ダブルナット」を採用する、ばね座金と組み合わせて使うなどの方法があります。
六角ナットは、部材との気密性を高めるためや、部材をキズ付けないために、座金(ワッシャー)と組み合わせて使用します。
座金には、標準的なタイプである「平座金」や、ゆるみ止め効果が期待できる「ばね座金」などがあります。
六角ナットの締め付けにはスパナ、またはメガネレンチなどを使用します。工具の六角形状の部分を六角ナットにはめ込み、回転させることで締め付けが可能です。ただし、締め付けの際は、六角ナットのサイズによって、使う工具もサイズを合わせなければなりません。また、スパナで締め付けを繰り返すと、ナットを痛める場合があるので注意してください。
ナットの痛みを避けたい場合は、メガネレンチを使用するのがおすすめです。あらゆるサイズの六角ナットに対応したい場合は、サイズ調整が可能なモンキースパナが便利です。
六角ナットの主な規格は以下の通りです。
・六角ナット:JIS B 1181
・六角袋ナット:JIS B 1183
・フランジ付き六角ナット:JIS B 1190
これらはミリねじのナット規格ですが、市場ではインチねじ(ユニファイねじ)用のナットも流通しています。
JIS規格品のナットとボルトには強度区分が規定されています。強度区分とは、ナットやボルトにどれくらいまでの力がかかっても壊れないかを示す数値のことです。
●ボルトの強度区分
鋼製のボルトには、3.6、4.6、4.8、5.6、5.8、6.8、8.8、9.8、10.9、12.9の強度区分があります。ボルトの強度区分の数値は、12.9を例に挙げると、12は1200N/mm2の最小引張強さ、9は1200の0.9倍の値(1080N/mm2)まで塑性変形しないこと(降伏点または耐力の数値)を意味しています。
ステンレス鋼のボルトは、A2-70のように鋼種区分であるA2などの記号と、強度区分である70などの数値を組み合わせて表示されています。鋼種区分の分類については上図の通りです。強度区分については、70と表示されているものの場合、最小引張強さが700N/mm2であることを意味します。
●ナットの強度区分
ナットは【JIS B 1052-2:炭素鋼及び合金鋼製締結用部品の機械的性質-第2部:強度区分を規定したナット-並目ねじ及び細目ねじ】規格によると、高さによって【並高さナット(スタイル1)・高ナット(スタイル2)・低ナット(スタイル0)】の3種類に分類されています。
・並高さナット(スタイル1):ナットの高さの最小値が0.8D以上
・高ナット(スタイル2):ナットの高さが約0.9D以上
・低ナット(スタイル0):ナットの高さの最小値が0.45D以上0.8D未満
ここでのDは、ねじの呼び径を意味しており、呼び径に対してナットの高さがどれくらい違うかによって分類がされています。
ナットのスタイル、強度区分、ねじの呼び径の範囲の関係は以下の表の通りです。
・並高さナット(スタイル1) ※ナットの高さの最小値が0.8D以上
・高ナット(スタイル2) ※ナットの高さが約0.9D以上
・低ナット(スタイル0) ※ナットの高さの最小値が0.45D以上0.8D未満
引用元:JIS B 1052-2:2014 炭素鋼及び合金鋼製締結用部品の機械的性質-第2部:強度区分を規定したナット-並目ねじ及び細目ねじ
ボルトの強度を十分に発揮させるためには、強度区分の合う適切なナットを使う必要があります。並高さナット(スタイル1) 及び高ナット(スタイル2)の強度区分に対して、組み合わせられるおねじ部品の最大強度区分の組み合わせは下表の通りです。
・並高さナット(スタイル1)及び高ナット(スタイル2)とおねじ部品の強度区分との組合わせ
引用元:JIS B 1052-2:2014 炭素鋼及び合金鋼製締結用部品の機械的性質-第2部:強度区分を規定したナット-並目ねじ及び細目ねじ
ナットは、JIS規格にて強度区分と製造業者識別記号を表示する規定がされています。表示はナットの側面または座面に、くぼみ加工または刻印で施すか、外周の面取り部に浮き出しで施す決まりがあります。フランジ付きナットで、製造工程中にナットの頂面に表示できない場合は、フランジ上面に表示します。
数字による表示記号の例は以下の通りです。
・数字による表示記号の例
・表示記号(代替記号)の例
一般的な六角ナットは、主に1種・2種・3種の3つのタイプがあります。
1種:片面のみが面取りされている六角ナット
2種:両面が面取りされている六角ナット
3種:1種と2種に比べて厚みが小さい六角ナット
このなかでも、最も使用されているのが1種のナットです。1~3種以外に底部に座が付いた4種の六角ナットもありますが、他のタイプに比べて使われることが少ないです。
高ナットは、六角ナットよりも全長が長いナットのことです。「長ナット」や「ロング六角ナット」とも呼ばれています。
高ナットは、上図左のように両側へおねじを取り付けて、長さを調節するために用います。また、プリント基板などを部材から浮かせるための、スペーサーの役割として用いる場合もあります。
六角袋ナットは、六角ナットの片面が閉じている六角ナットのことです。「袋ナット」「キャップナット」「化粧ナット」とも呼ばれています。
六角袋ナットは、六角ナットと違って、ボルトに締結した際にねじ部が露出するのを防げます。そのため、外観性や安全性を必要とする場合に採用されています。しかし、ナットの片側が塞がれていることから、ボルトの長さを調節する必要があります。
六角袋ナットは【JIS B 1183:六角袋ナット】の規格にて、以下のように区別されています。
1形:六角部とキャップ部とが一体形でねじの逃げ溝のないもの
2形:六角部とキャップ部とが一体形でねじの逃げ溝のあるもの
3形:六角部とキャップ部とを溶接したもの
六角袋ナットの多くは、2種の六角ナットの上から球状のキャップ部を溶接して作られており、主に3形2種の製品が流通しています。
また、六角袋ナットはJIS規格にて「六角袋ナット」と「小形六角袋ナット」の2種類に分けられています。六角袋ナットの二面幅÷ねじの呼び径=1.45以上のものを「六角袋ナット」、1.45未満のものを「小形六角袋ナット」と分類しています。(ただし、呼び径8mmの小形六角袋ナットは例外で1.45以上)
細かく分類したときの六角袋ナットは、小形六角袋ナットと区別して呼ぶ場合、「並形六角袋ナット」と呼ばれます。
フランジ付き六角ナットは、六角ナットの底面にフランジが付いたもののことを指します。
六角ナット等は部材との気密性を高めるために座金と併せて使用することが多くありますが、フランジ付き六角ナットは、フランジが座金の役目を果たします。
また、フランジ付き六角ナットには、裏側に「セレート」と呼ばれるゆるみ止め防止機能が備わっているタイプもあります。セレートを搭載したフランジ付き六角ナットは、ゆるみ止め効果が期待できる分、部材をキズ付けてしまう可能性があるため注意が必要です。
フランジ付き六角ナットは、主に作業効率や外観性の向上を目的として採用されます。
通常、六角ナットを取り付ける際は、座金をセットしてからナットを締め付けます。一方でフランジ付き六角ナットは、座金をセットする手間が省けるため、作業効率の向上が期待できます。
また、座金をセットした六角ナットよりも、フランジ付き六角ナットを使用したときの見た目を好む設計者が多く、外観性の向上を目的として使用されることもあります。
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