2024-09-18
更新
染谷 ひとみ
Mitsuri Media管理人
精密板金加工工場のインサイドセールスとして加工と寸法の提案をしてきた経験を経て、製造業の知見と楽しさを提供している。 幼少期からモノの構造を理解するのが好き。JAPAN MENSA会員。
メッキは、材料に防食性や装飾性、導電性や摩耗耐性などの機能性を付与するために行われます。なかでも電解メッキは、最も広範囲に用いられているメッキ技術であり、身の回りの金属製品の多くがこの技術によりメッキされています。
しかし、電解メッキはどのような方法で、どんな種類があるのか詳しくは分からない方も多いことでしょう。金属製品を扱っている方には、電解メッキのメリットやデメリットを知っておきたいと考えている方もいるかも知れません。
そこで本記事では、電解メッキの詳細や種類、メリットやデメリットを解説していきます。無電解メッキとの違いについてもご紹介しますので、メッキ方法を選択するときの参考にしてください。
電解メッキとは、電解液にメッキされる金属を浸し、電気を通してメッキしたい金属を析出させるメッキ法で、電気メッキともいわれます。
具体的には、電解液に陽極であるメッキ金属と陰極である被メッキ金属を浸し、直流の電気を通します。すると、陽極では酸化反応によってメッキ金属が液中に溶け出し、陰極では還元反応によってメッキ金属が析出してメッキ皮膜に成長します。
しかし、この方法は、メッキ金属が可溶性金属、つまり電解液に溶ける金属でない場合は用いることができません。
電解液に溶けにくい金や白金などの不溶性金属をメッキしたい場合には、シアン化金カリウムや塩化白金酸に代表される金属塩など電解液に溶ける状態にしたものを補給して電解メッキを行います。
電解液への添加剤もメッキの品質や機能に重要な役割を持ちます。その役割の1つがメッキ皮膜の形状制御です。添加剤はこの場合、被メッキ金属やメッキ皮膜に吸着して反応を促進、または抑制し、メッキ皮膜の平滑化や光沢化、穴埋めなどを可能にします。添加剤によっては、メッキ皮膜の硬さ・伸び・脆さ・応力などの物性にも影響するものがあります。
しかし、これらの添加剤は、ニーズに応じて試行錯誤で開発されてきたため、メーカーによって多種多様な種類があります。Mitsuriでしたら、電解メッキの多様な技術やノウハウを持つメーカーをご紹介可能です。電解メッキのご依頼がありましたら、ぜひMitsuriにご連絡ください。
電解メッキと無電解メッキ、この2種のメッキ法の違いは、電解メッキが電気を流したときの電気分解による化学反応を利用しているのに対し、無電解メッキは薬品による化学反応だけを利用していることです。そのため、無電解メッキは化学メッキとも呼ばれます。
電解メッキ・無電解メッキの違い電解メッキ…電気を流したときの電気分解による化学反応を利用無電解メッキ…薬品による化学反応だけを利用
無電解メッキは、メッキしたい物質を含む水溶液に被メッキ物を浸し、表面で還元反応を生じさせてメッキ皮膜を成長させる方法です。
無電解メッキでは、電気を使わないため、被メッキ物に導電性がなくてもメッキできます。さらに、電気の流れに左右されないため、表面に均一にメッキすることができます。そのため、無電解メッキは、複雑な形状のメッキにより適しています。
それに対し、電解メッキで同様な品質のメッキ皮膜を得るには、メッキ治具による被メッキ物の配置や、メッキ皮膜が厚く、もしくは薄くなってしまう部位近くへの補助極の配置など、多くの工夫やノウハウを必要とします。
無電解メッキは、化学反応だけで皮膜を形成するので、膜厚に限度がある、析出する速度が遅いなどの欠点があります。また、化学反応に高温の維持を必要とする場合もあることから、メッキ槽の管理が難しくなります。さらに、メッキ槽が化学的に不安定になりやすく、その調整のために投入する薬液にコストがかかります。このようなメッキ槽の維持管理の困難さから、無電解メッキの多くは電解メッキよりも高コストです。
無電解メッキでは、ph調整剤や添加剤などのメッキ槽へ投入する薬品と、温度維持などのメッキ槽の調整だけで、メッキしたい物質と被メッキ物が化学反応しなくてはなりません。そのため、無電解メッキの種類は電解メッキに比べて限られています。
電解メッキは、以下のようなメリット・デメリットがあります。
電解メッキのメリット・低コスト・メッキする速度が速い・厚くメッキすることが可能・様々な金属・合金にメッキ可能・被メッキ金属への熱的影響が小さい
電解メッキのデメリット・均一にメッキすることが難しい・複雑形状の金属にメッキすることが難しい・不導体にはメッキできない
引用元:通販モノタロウ
電解メッキの工程は、上図に見られるように、大きく前処理、本処理、後処理に分けることができます。ここでは、これらの処理工程の詳細について解説していきます。
前処理は、メッキがしっかりと密着するように、汚れや酸化皮膜などを除去し、被メッキ物の素地面を露出させるために行われます。
前処理の工程は、脱脂、酸洗い、酸活性など多様で、メッキの種類や被メッキ物の材質、加工履歴などの違いにより、適切な工程が選定され、実施されます。
水洗・湯洗は、水やお湯で素材を洗浄する工程で、各工程で用いられた溶剤などの成分を次工程に持ち込ませないために行われます。そのため、各工程の完了後には水洗・湯洗が実施され、状態の確認も併せて行われます。
脱脂は、素材表面に付着したゴミや、加工の際に用いたオイルなどの有機性の汚れを除去する工程です。その中でも、溶剤洗浄は有機溶剤を用いることで、アルカリ洗浄はアルカリ性の苛性ソーダなどに漬け込むことで油脂を取り除きます。
酸洗いは、サビやスケール(熱処理で生じる焼けや変色)を除去するため、硫酸や塩酸など、比較的強力な酸に漬け込む工程です。
電解洗浄は、素材に電流を流すことで素材表面に酸素や水素などを発生させ、そのガスの力によって微細な凹凸面に付着したゴミやスケールなどを除去する工程です。取り切れなかった汚れや酸化皮膜を取り除く仕上げの洗浄工程と言えるでしょう。
酸活性は、素材を酸に漬けることでメッキしやすい素材の素地面を露出させる工程です。
酸やアルカリを次工程に持ち込ませないように酸性溶液やアルカリ性溶液に漬け込んで中和することがあります。
引用元:株式会社会津技研
ストライクメッキは、下地メッキを施す工程で、素材表面が活性化しにくい場合などに行われます。上図は、下地メッキとして銅を用いた例で、平滑化や密着性向上を目的に実施されます。
実際にメッキを施す工程です。
黄銅、亜鉛、アルミニウムなどのメッキでは、耐食性向上や変色防止を目的に、さらにクロメート処理を行うことがあります。クロメート処理は、金属表面にクロムの酸化皮膜を形成させる表面処理です。
メッキを施した後は、水洗した後、水を吹き飛ばす、熱するなどすることで乾燥させれば完成です。
ただし、水素脆性に陥りやすい素材では、190〜220℃程度に加熱することで水素を追い出すベーキング処理が必要になることがあります。
それでは、電解メッキにはどのような種類があるのでしょうか。代表的な「銅メッキ」「亜鉛メッキ」「クロムメッキ」「ニッケルメッキ」「金メッキ」について解説します。
銅は、熱伝導性・導電性が高く、展延性に優れる金属で、赤い色調の光沢を持ちます。
メッキとしては、高い導電性や優れた展延性を活かして、プリント配線板などの電子部品に多く用いられています。
装飾を目的とする場合は、銅は変色するため、クリアー塗装などの表面処理が必要です。しかし銅メッキは、優れた平滑性を示し、また加工しやすいことから、他のメッキの下地に多く利用されています。
また銅メッキは、炭素添加によって耐摩耗性を向上させる浸炭処理時に、炭素の侵入を防止する特性があります。そのため、浸炭の効果が表れてほしくない部位に銅をメッキすることがあります。
亜鉛は、大気中で優れた耐食性を示し、水分下でも亜鉛自らが溶解して鉄の腐食を防ぐ働きをします。
そのため、亜鉛メッキは、鉄鋼の防サビ用メッキとして広く用いられています。
しかしほとんどの場合、亜鉛メッキだけでは耐食性能に限りがあるため、メッキ後にクロム酸塩を含む溶液に浸して酸化皮膜を生じさせるクロメート処理を行います。クロメート処理では、その溶液を調整することで、亜鉛メッキに以下の外観や耐食性を持たせることができます。
クロメート処理の種類光沢クロメート:ユニクロとも呼ばれ、青銀白色で美しいが耐食性は低い有色クロメート:黄金色や虹色で、耐食性は良好緑色クロメート:緑色や茶色で、高腐食環境で使用される黒色クロメート:黒色で、耐食性は良好
亜鉛メッキの用途としては、自動車部品、電気機器部品、機械部品、建築部品などが挙げられます。最近では、クロメート処理による装飾性の向上により、事務機や文具などの外観が問題となる製品にも多く利用されています。
参考記事鉄鋼に対するメッキについては以下に詳しくご紹介していますのでご覧ください。⇒鉄メッキならMitsuri!1コ〜お受けいたします!
クロムは、光沢のある銀白色の硬い金属で、耐食性のある酸化皮膜を形成することからメッキとして広く用いられています。
クロムメッキは、光沢と美しい外観を活かす場合には装飾用として、硬さや耐摩耗性を活かす場合には工業用として利用されています。
装飾用クロムメッキでは、主に銅やニッケルを下地として0.1~0.5μm程度の薄いメッキを施します。装飾用クロムメッキは、この薄さでも耐食性、耐変色性、耐候性などに優れた性能を示します。
そのため、自動車や機械の外装部品、台所用品やインテリア関係など、美観を求められる製品で幅広い用途があります。また、装飾用としては、漆黒調の皮膜が得られる黒クロムメッキもあり、自動車やオートバイ、カメラ、時計、事務機などに利用されています。
工業用クロムメッキは、硬質クロムメッキとも呼ばれ、5μmから100μm超まで、用途に従って厚くメッキします。そのメッキ皮膜は、硬く耐磨耗性に優れ、低摩擦係数や非粘着性などの特性も有します。そのため、ベアリングやロール、シリンダー、金型などの産業用機械部品や自動車部品などに広く用いられています。
ニッケルは、光沢があり耐食性や導電性に優れています。硬さ、柔軟性なども良好なため、メッキとしてもよく利用されています。ただし、空気中で時間経過と共に変色するので、その上にクロムメッキを施すことが多いメッキ金属です。
ニッケルメッキは、様々な金属への密着性が高いことから、中間層や下地としてよく用いられています。また、銅素材に金をメッキする際には、金が銅に拡散するのを防ぐため、金の下地としてニッケルがメッキされます。
ニッケルメッキは、電解メッキするときの添加剤によって無光沢から光沢まで調整することができます。そのため、自動車部品や産業機械部品などのほか、装飾用にも多く用いられています。特殊な用途として、はんだ付け性が高いことから電子部品などにもよく利用されています。
またニッケルメッキは、無電解メッキでも行えるため、複雑な形状や精密な部品のメッキには無電解メッキが用いられます。
金は、高い熱伝導性・導電性を持ち、化学的に非常に安定で耐食性に優れた金属です。
金メッキとしては、はんだ付け性が良く、時間経過による接触抵抗の変化が小さいため、電子部品などに多く利用されています。外観も美しいので、装飾器具や時計、自動車のエンブレムや内装部品などに用いられています。
上述したように、金は銅や銅合金と接すると拡散していくため、銅素材にメッキする場合にはニッケルメッキの下地が必要です。
金は無電解メッキも可能なため、導電しない素材や複雑なパターンのメッキには、無電解メッキが用いられています。
以上、電解メッキの詳細や種類、また無電解メッキと比較した場合のメリット・デメリットについて解説しました。
電解メッキは、無電解メッキと比較して、低コストで様々な金属にメッキできるため、最も広範に用いられているメッキ法です。
電解メッキの種類も様々ですが、品質やコストを勘案すると、無電解メッキが適切な場合もあります。
Mitsuriは協力工場が全国に140社以上あるため、電解メッキと無電解メッキ含めて最適なメッキ法をご提案できます。
電解メッキでお困りの際は、ぜひMitsuriにお申し付け下さい。
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