ザグリ穴とは?図面指示・寸法の書き方と皿ザグリとの違い

ザグリ穴とは、ボルトの頭部・ナット・座金が安定して座るように、穴の入口を円筒状または円錐状に広げた穴です。円筒状で底面を平らに加工するものを一般に「ザグリ」、皿ねじに合わせて円錐状に加工するものを「皿ザグリ」と呼びます。
ザグリ穴は、鋳肌などの凹凸を除いて締結面を確保するほか、ボルト頭部を部品表面より低く収める目的でも使われます。ただし、「M6用」のような指示だけでは、使用するねじの頭部形状や必要なすきまを一意に決められません。図面には、キリ穴径に加えてザグリ径・深さ、または皿ザグリ径・角度を明記することが重要です。
ザグリ穴・深ザグリ・皿ザグリ・キリ穴の違い
4種類の違いは、穴の形状と目的で整理すると分かりやすくなります。「深ザグリ」は通常のザグリと別の形状ではなく、ボルト頭部を沈められる深さまで円筒状に加工したものです。深ザグリと呼ぶ数値上の境界は一律ではないため、名称だけでなく実寸を指示します。
| 種類 | 形状 | 主な目的 | 図面で示す主な寸法 |
|---|---|---|---|
| キリ穴 | 円筒状の穴 | ボルト軸を通す、下穴を設ける | 穴径、貫通または深さ |
| ザグリ | 入口が円筒状で底が平ら | 座面を平らにし、頭部・座金・ナットを安定させる | キリ穴径、ザグリ径、ザグリ深さ |
| 深ザグリ | 深い円筒状で底が平ら | 六角穴付きボルトなどの頭部を部品内へ沈める | キリ穴径、ザグリ径、ザグリ深さ |
| 皿ザグリ | 入口が円錐状 | 皿ねじの頭部を表面と同じ高さに収める | キリ穴径、皿ザグリの大径、角度 |
現場でいう「キリ」はドリル加工を指すことがありますが、直径記号「⌀」は完成形状の直径を示すもので、加工方法そのものを限定する記号ではありません。加工方法を指定する必要がなければ、完成後に必要な穴径と深さを示すのが基本です。
ザグリ穴の図面指示と寸法の書き方
機械製図の基本事項はJIS B 0001:2019「機械製図」で確認できます。ザグリ穴は、平面図の引出線による注記だけでなく、断面図を併記すると加工形状をより確実に伝えられます。
円筒状のザグリ穴の指示例
図1は「直径6.6mmの貫通穴に、直径11mm、深さ6.5mmのザグリを設ける」という意味です。ザグリ記号「⌴」がCADや使用フォントで正しく表示されない場合は、「⌀11 ザグリ 深さ6.5」のように文字を併記すれば意図を明確にできます。
JIS B 0001:2019の11.7では、ピッチ線またはピッチ円上に同一寸法の穴が4か所ある場合、「4×⌀6.6 貫通」「4×⌴ ⌀11 深さ6.5」のように、総数と穴寸法の間へ「×」を入れます。ただし、穴位置・ピッチ・位置公差は別途必要です。左右対称に見えるという理由だけで位置寸法を省略しないようにしましょう。
皿ザグリの指示例
皿ザグリは深さだけで管理すると、工具先端や下穴径の違いによって入口径が変わることがあります。皿ねじとの当たり方が重要なため、基本的には大径と角度を指示します。90°はメートル系皿ねじでよく使われますが、すべての皿ねじが90°とは限りません。ねじの規格・実部品を確認してください。
止まり穴を指示するときの注意
止まりのキリ穴には、穴径と深さを記載します。ドリルで加工すると底に円錐状の先端部が残るため、通常は「有効な円筒部の深さ」と「ドリル先端を含む全深さ」を混同しないことが大切です。ねじ逃げや部品との干渉に関係する場合は、断面図で必要な底形状まで示します。
ザグリ径と深さの決め方
ボルト穴径とザグリ径の標準値は、JIS B 1001:1985「ボルト穴径及びざぐり径」が基準になります。同規格は2024年10月に確認され、現在も有効です。ただし、規格表から呼び径だけを拾うのではなく、実際に採用する締結部品と組立条件を確認して決めます。
1. 使用するボルト・座金を先に確定する
まず、ボルトの種類、呼び径、頭部径、頭部高さ、座金の有無を確定します。六角穴付きボルトの製品規格はJIS B 1176:2014「六角穴付きボルト」で確認できます。同じM6でも、標準頭・低頭・小頭では頭部寸法が異なります。
例えば、一般的なM6六角穴付きボルトの頭部は直径10mm、高さ6mm程度ですが、低頭タイプはこれより低く、小頭タイプは頭部径も小さくなります。実際の選定では、使用する製品の図面・カタログ寸法を優先してください。参考として、鍋屋バイテック会社のM6六角穴付きボルト製品データでは、頭部径10mm、頭部高さ6mmが示されています。
2. キリ穴径は組立に必要なすきまから決める
キリ穴径は、ボルト外径に加工・組立用のすきまを加えた値です。位置精度を優先するのか、組み付けやすさを優先するのかによって選ぶ穴径が変わります。JIS B 1001のボルト穴径を出発点にし、部品の位置公差、表面処理後の寸法、組立方向を確認します。
3. ザグリ径は最大頭部径と工具の余裕から決める
ザグリ径は、ボルト頭部または座金の最大外径より大きくします。必要な片側すきまに加え、頭部径の公差、穴とザグリの同軸度、表面処理、締付工具が入る空間も考慮します。座金を入れる場合は、ボルト頭部ではなく座金外径を基準にする点に注意してください。
4. ザグリ深さは頭部高さと沈み量から決める
ボルト頭部を完全に沈める場合の考え方は、次の式で整理できます。
ザグリ深さ ≧ 頭部の最大高さ + 必要な沈み量 + 組立・加工上の余裕
図1の深さ6.5mmは、頭部高さ6mm程度のM6六角穴付きボルトを0.5mm沈める設計例です。これはすべてのM6に適用できる規格値ではありません。頭部高さの公差、ザグリ深さの公差、底面の隅Rや工具形状を含めて、最悪条件でも突出しないかを確認します。
一方、座面を平らにするだけなら、必要以上に深くする必要はありません。深くしすぎると残肉が薄くなり、部品強度の低下、裏面への抜け、工具干渉につながります。特に薄板や鋳物では、ザグリ底から反対面までの残り厚さを必ず確認しましょう。
図面で認識違いを防ぐチェックポイント
- キリ穴の径と、貫通・止まりの区別があるか
- ザグリの径と深さ、または皿ザグリの大径と角度があるか
- 同一穴の数量と、穴の中心位置・ピッチが分かるか
- 頭部を表面以下にするなど、機能上の要求が明確か
- 座金を使う場合、その外径と厚さを寸法決定に反映したか
- 低頭・小頭など、標準形状と異なるボルトを識別できるか
- 公差、表面処理、残り厚さ、締付工具の空間を確認したか
「M6用ザグリ」「適宜ザグリ」のような指示では、設計者が意図したすきまや沈み量を加工側で判断できません。組立機能に影響する箇所は、規格名や使用部品だけに頼らず、完成形状の寸法を図面に記載します。
ザグリ加工の主な方法
円筒状のザグリは、ドリルでキリ穴を加工したあと、ザグリカッターやエンドミルで底面を平らに仕上げます。ボール盤、フライス盤、マシニングセンタなどが使われます。皿ザグリには、採用する皿ねじの角度に合った面取りカッターや皿ザグリカッターを使用します。
工具径、刃先の隅R、切削条件によって、底面形状やバリの出方が変わります。ボルト頭部の座面全面を確実に当てたい場合は、底面の平面度や隅Rも含めて加工会社と確認してください。関連する加工方法は「穴あけ加工とは?種類と方法」と「フライス加工とは?種類・特徴・加工方法」でも解説しています。
ザグリ穴についてよくある質問
ザグリと深ザグリは何mmから区別されますか?
一律の深さで区切るものではありません。一般には座面を整える浅いザグリに対し、ボルト頭部を沈めるものを深ザグリと呼びます。呼称だけでは曖昧なため、図面には必要な径と深さを記載してください。
ザグリ深さはボルト頭部と同じでよいですか?
頭部高さと同じ設計値では、公差によって頭部が突出する可能性があります。完全に沈める必要がある場合は、頭部の最大高さ、加工公差、必要な沈み量を加味して決めます。
ザグリ径はJISの値をそのまま使えますか?
JIS B 1001は有力な基準ですが、実際のボルト頭部、座金、締付工具、位置ずれの条件によって必要径が変わります。規格値を確認したうえで、採用部品と組立条件への適合を検証してください。
まとめ
ザグリ穴は、ボルト頭部・ナット・座金の座面を確保する円筒状の加工です。頭部を沈める場合も形状は同じで、必要な深さを明記します。皿ザグリは円錐状であり、皿ねじに合わせた大径と角度の指定が必要です。
寸法は、JIS B 1001などを基準にしつつ、実際のボルト・座金の最大寸法、組立用すきま、公差、残り厚さから決定します。図面には「キリ穴径」「ザグリ径と深さ」または「皿ザグリ径と角度」を具体的に示し、名称だけに判断を委ねないことが認識違いを防ぐポイントです。
参考規格・資料
- 日本規格協会 JIS B 0001:2019「機械製図」(2024年6月20日確認)
- 日本規格協会 JIS B 1001:1985「ボルト穴径及びざぐり径」(2024年10月21日確認)
- 日本規格協会 JIS B 1176:2014「六角穴付きボルト」(2025年6月20日確認)
- 鍋屋バイテック会社 M6六角穴付きボルト製品データ(図面例の頭部寸法確認)
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